冷えとり健康法の震源地! トンデモ・ホリスティック情報誌「マーマーマガジン」を一挙プレイバック

2017/01/31 20:00

靴下を5枚10枚と重ねるほどに「足裏から毒が出る!」と謳う冷えとり健康法(過去記事もご参照くださいませ)を、世に広めたホリスティック情報誌『マーマーマガジン』。

 現在は2回のリニューアルを経て、詩とインタビューの雑誌へと変化を遂げたご様子です。そこで今回はリニューアル記念として、勝手にバックナンバーをプレイバックしていきましょう(つっこみポイントの少ない号はスキップさせていただいています)。さて、どんなトンデモが誌面を飾っていたでしょうか?

◎オシャレでメジャー感漂う創刊準備号/2008年2月発売

 服部みれい氏(後の冷えとりの女王)が編集長として制作のかじ取りをし、アパレル会社のフレームワークより販売がスタート(以下、第14号まではフレームワークス発行)。

誌面では「murmurとは英語で風のざわめきやささやき声という意味。あたらしい時代に向けて、自然やからだの声ならぬ声にもっと耳をかたむけよう、そんな気持ちをこめて名付けました」と説明されていますが、この後始まる冷えとり布教展開には「まあまあ!」と驚くばかりです。

 この号では「愛する服」を有名人が語るグラビアへカヒミ・カリィや市川美和子といった文化系女子好みの有名人を起用したり、オーガニックコスメを紹介したりと、メジャー感漂う仕上がり。

◎さっそく飛ばし始める! ニューエイジエッセンスがほとばしる第2/2008年7月発売

 ナチュラルライフを提唱するアーティスト、アリシア・ベイ=ローレル氏インタビューにコミューンの話が出てきたり、フードコーディネーターによる料理企画のタイトルが「脱石油社会的食生活のすすめ」であったりと、消費社会に批判するニューエイジの雰囲気がさっそく現れはじめる第2号。

 ところで「自分で育てたものをつくる」=脱石油社会的食生活という設定のようですが、レシピに登場するガスコンロも市販の太白ごま油も、石油で動かす工場で作られているんですけどねえ。

◎カヒミのナチュラル語りが読める第3号/2008年11月発売

 注目は、創刊準備号にも登場したカヒミ・カリィのナチュラル語り。「喫煙者だったけど野草研究家の取材中にどんぐりの樹に抱き着いたら、吸いたくなくなった」という、妖怪に気を吸い取られたかのごとくエピソードは、ナチュラルに転ぼうと全盛期に発揮していた浮世離れした感性が顕在なのが伝わってきます。

その他、マクロビ、『沈黙の春』※、ジャック・マイヨールなど、自然派が愛する定番キーワードが盛りだくさんです。小沢健二といいカヒミといい、渋谷系で活躍したミュージシャンといえば〈消費文化の申し子〉という印象であったのですが、その反動で自然派に転ぶんでしょうかね?

 コアなネタが登場する「マーマーガールズ座談会(以下、座談会)」のお題は、〈自然派の洗濯洗剤〉。合成洗剤を「微量とはいえ、皮膚に入る」と語る服部みれい氏、経費毒思想の持ち主であることをアピール開始です。一方、「刺繍講座」企画に登場した「会議中に軍パンに刺繍する」という練習法は脱力度が高く、このバカバカしさは嫌いじゃありません。

※1962年に出版された、米国の海洋生物学者・レイチェルカーソンの著書。農薬による環境汚染の問題を指摘し、世界に環境問題を問いかけたエポックメイキング的な作品として広く知られている。

◎トンデモ度急上昇、控えめに冷えとり健康法が登場する第4号/2009年3月発売

 第1特集は、『沈黙の春』の著者、レイチェル・カーソンの研究者である上遠恵子氏インタビュー。服部みれい氏と一緒になって〈企業は悪!〉というイメージを植え付けるような陰謀論で盛り上がっております。

 激しいタイトルの料理企画「脱石油社会的食生活のすすめ」は、はやくも「有機的な料理の話」に変更。さすがに企業である出資元からつっこまれたのでしょうか?

ファッショングラビアは素足にバレエシューズやサンダルを履いているので、まだまだノーマル路線かと思いきや、「東洋医学の健康法」というコーナーに冷えとり健康法が登場し、基本理論を解説。

「からだ全体で美しくなる話」なるコラムでは、ヘアメイクアーティストが「化学物質は子宮にたまりやすい」と語り、「美容師時代に化学物質配合の毛染めをしていた女性が脳の手術をしたとき、コールタール状のものがべったりとついていたと聞いたことがあります」と、まともな美容師さんが迷惑しそうなトンデモトークを披露。

 座談会のお題は布ナプキン。「PMSが楽になった」「紙ナプキンを使っていると生理に対してネガティブになる」「燃やすとダイオキシンが出る」など、現在も布ナプユーザーの間で定番化している使い捨てナプキン(紙ナプキン)をディスるネタが登場。布ナプキンを使うようになってから〈経血コントロール〉できるようになったと報告する女子に対し、別の女子が「昔の人みたい」と合いの手を打つのも、テンプレ通りです(何の話がわからない!という方は、こちらをご参照ください)

◎「冷えとりファッション」提案で、本気を見せてくる第5号/2009年7月

 オシャレにスタイリングをした、靴下重ね履きファッショングラビアに力を入れてくる号。冷えとり布教開始号ともいえるでしょう。

 座談会は布ナプキン後篇。メンバーの妊娠報告に「よい生理は体をつくる」と盛り上がり、使い捨ての紙ナプキンを作っている企業に対しては「体のことを考えていない!」と叩きまくる、お約束展開です。

◎オーガニックと自己啓発の抱き合わせで、意識高い系雑誌になっていく第6号/2009年9月

 第1特集はオーガニックデニムで、第2特集はアフォメーション※という構成は、社会意識高い系を目指しているのでしょうか? 「今、編集部のまわりでアフォメーションが大人気!」とカジュアルに紹介していますが、消費社会に疑問を投げかけ、自己啓発をしていく流れって、どんだけニューエイジにあこがれてるんだ。

 座談会のお題は〈下着〉。〈修行ブラ〉で有名になった龍多美子氏が話題にのぼり、ブレが全くないのはお見事。みれい氏発にて、〈塩ブラジャー〉も登場。

※肯定的な自己宣言。引き寄せや自己啓発界隈で使われるメソッドのひとつ

◎自然療法好きな女子もおいていかれそうな、第8号/2010年3月発行

 ホメオパシー布教者として有名な由井寅子(ゆい・とらこ)氏インタビュー掲載号。オシャレブランドから出ているちょっとナチュラルなミニコミ誌と思って手に取った読者は、「波動って何!?」「カラダ、ココロ、魂の三位一体に作用する……ですか」と、さぞかし驚かれたことでしょう。

由井氏は自身の子ども時代について「だれひとりとしてわたしをかわいがらなかった」と語っていて、癒しを求めてホメオパシーに走ったような経緯をちらつかせております。そのこと自体はお気の毒ですし、ホメオパシーが精神的な救いになる場合もあることがよくわかりますが、「潰瘍性大腸炎が治った!」と明らかに因果関係がよくわからないことを掲載しちゃうこの雑誌はやっぱり怖い。

 10円玉1枚分ほどのごくごくわずかな圧で脳脊髄液の水圧システムのリズムに働きかけ、自然治癒力が発動されるきっかけをつくると謳われる療法をセルフケアでやってみようという企画「おうちでできるクラニオ講座」も、どうかしてるわ。

◎自然派こそが正しいよね! という選民意識バリバリの第9号/2010年6月発行

 後半にて、冷えとり健康法拡大企画。靴下だけでなく食にも言及し、からだを冷やすものは「薬」「白砂糖」、と紹介。一時期流行した〈しょうが紅茶〉は、冷えとりからみたら「ばかばかしいかぎりです」とバッサリ切り捨てていらっしゃいますが、こちらからみたら、靴下重ね履きこそが「ばかばかしいかぎり」です。

 座談会のお題は〈シャンプー〉で、塩シャンプーやアレッポ(石鹸)など自然派の洗髪が披露されている中で、突然〈マシェリ〉派が登場すると、参加者が爆笑。選民意識バリバリの、嫌なコミュニティだなー。いろいろ議論を展開し、結局は「あれこれさまようけれど、自然派系使うともとには戻れないよね~」という結論。界面活性剤が入っているような一般的なシャンプーを「チャラ男」と表現しているのも、感じ悪いことこのうえなし。

◎冷えとりライフと真逆に走る、黒柳徹子がまぶしすぎる第10号/2010年10月特大号

 黒柳徹子氏の三万字インタビューという特大号。冷えとり啓蒙誌で、寝る前に氷あずきを食べるとみれい氏に語る、最高にシュールな展開が楽しめます。

 最近太ったという話題が出ると、すかさず徹子へ冷えとりを勧めるみれい氏。しかし、「ええ~っ!? やせる~!? この靴下で~!?」と徹子に驚愕されて終了。冷えとり健康法に欠かせない半身浴についても、そもそも徹子氏は「風呂に入る時間は1分」であるとバッサリ。マイペースで有名な徹子節、マーマーマガジンでも光り輝いています。

「冷えとりはきもちいい」という冷えとりページでは、湿疹はかきむしれという恐ろしい指導を掲載。湿疹でかゆくなったらかきむしって毒の出口を広げてあげるというのが冷えとり健康法のお説ですが、昨今はそうやって悪化した肌荒れからアレルゲンが体内に侵入して食物アレルギーになることが解明されているのですから、毒の入り口を広げる、恐ろしい指導と言えるでしょう。

◎健康情報とは線引きしていただきたい、ホリスティック総集編な第11号/2010年12月発行

 アーユルヴェーダ、キネシオロジー、ホ・オポノポノ、冷えとり、クラニアルセイクラルなどをコンパクトに紹介。

みれい氏発の「ホリスティックな世界と出会うときのチェックリスト」では、「自分の直感を信じて!」というアドバイス。当連載でも繰り返しお伝えしていますが、健康にかかわることを〈感性〉で判断するのは本当に危険です。

 座談会は〈睡眠〉について。どんなスタイルで寝ているか?という話題では、「キッドブルーのネグリジェに、レギンス3~4枚プラス、靴下10~12枚」という冷えとりガールの恐ろしい日常が披露されておりました。「半身浴しながら寝る」という情報に対して「試してみるよ!」なんて発言も飛び出し、いつかこの座談会参加者から死者が出ないかと、読んでいて肝が冷えまくりです。

◎トンデモ系男子大集合~! な第12号/2011年3月発行

 校了の4日後に、東北地方太平洋沖地震が起こったタイミングの12号は、「エコ男子特集」。

 インディアンと出会った体験を語る編集者や、臨死体験で地球のはじまりを見たと語る彗星探検家。電子レンジをひたすらディスるパティシェ弓田亮氏、キャンドルナイトの呼びかけ人であり文化人類学者の辻信一氏、そして冷えとり健康法を発案した進藤医師が登場。エコ男子というより、トンデモ男子図鑑ですね。

 この号では座談会もメンバーはみれい氏以外は男性が参加。〈肛門の括約筋が感情とリンクしていると聞き、棒を挿入してみた〉という報告など、いつもとは違う方向に飛ばしております。ちなみにゆるいと性格も感情も陰になるそうです。出身校が同じで同じ療法をやっているという共通点が見つかったメンバー同士「ツインソウル!?」と盛り上がる男子たち、すみません、気持ち悪いです。

◎フレームワークと決別がはじまるか? な第13号/2011年7月発行

「大災害以降、何を企画してもどこかしらじらしい」と語り、自分が見聞きした半径3m以内で1冊を作ってみることにした、と冒頭で服部みれい氏が宣言。いよいよ企業とお別れのときがやってきたような気配がプンプン漂います。

 冷えとりファッションのモデルも自分でこなし、大特集のラストは「みれいの本棚」なるオススメ本の紹介、「都会でも田舎の暮らしはできるっ!」と自分の1週間を写真入りでレポするなど、「みれいマガジン」へまっしぐらっ★

◎リニューアル準備号も、みれいマガジン状態な第14号/2011年12月発行

さらにみれいマガジン化が進み、第1特集は、バンド仲間であるミュージシャンとの雑談「ミネコとミレコのおしゃべり天国」(センスが「オリーブ」時代のそれだわ)。さらにおふたりが街中をぶらぶらしているイメージ写真も12ページにわたりカラー掲載され、これを500円で売るのか! と唖然。

 ニュースページに自社の靴下が登場し、重ね履き用の靴下で荒稼ぎがはじまるのもこのあたりですかね?

◎日本は特別! という選民思想漂う第15号/2012年3月16日

ついにやりたいほうだいの自社発行(エムエムブックス)スタート号です。「昔の暮らしは素敵」系から発生する「日本は特別」思想、が堂々と第1特集。江戸しぐさと同じく根拠のない「日本人はモラルが高い」「サムシンググレートを感じている」という話や、江戸時代までの日本人がごく自然に行っていた呼吸法「密息」なども登場し、完全に〈あっち側〉へ渡り切った感の漂う号でありました。

◎伝説の冷えとり人生相談が掲載された第16号/2012年6月発行

「冷えとりをしたら夫が不要なものだと分かって離婚」という伝説の読者人生相談が掲載されている号。伝説、といっても完全にわたしの周りの話なんですけどね。

さらに、「ホリスティックな世界にのめりこんだら、夫が愛想をつかして出て行った」なる別の読者からの報告も続き、誌面的には「こんなに衝撃的に環境が変わるのね! すごい効果!」という反応でありますが、共同生活できないレベルにあなたたちが極端なんですってば。

 座談会では自然農法について盛り上がり、〈大規模農場で作った野菜は、野菜でなくて「石油製品」だって表現する人もいるくらいです〉と、煽るみれい氏。一方の価値を貶めることで自分が推すものの評価を高める、ゲスいやり口です。

◎第17号は、実用度の果てしなく低いセックス特集号/2012年12月発行

 子宮系女子が多用する言葉「まぐあい(セックス)」がマーマーマガジンにも登場。

さらに、「ホリスティックな世界にのめりこんだら、夫が愛想をつかして出て行った」なる別の読者からの報告も続き、誌面的には「こんなに衝撃的に環境が変わるのね! すごい効果!」という反応でありますが、共同生活できないレベルにあなたたちが極端なんですってば。

 座談会では自然農法について盛り上がり、〈大規模農場で作った野菜は、野菜でなくて「石油製品」だって表現する人もいるくらいです〉と、煽るみれい氏。一方の価値を貶めることで自分が推すものの評価を高める、ゲスいやり口です。

◎第17号は、実用度の果てしなく低いセックス特集号/2012年12月発行

 子宮系女子が多用する言葉「まぐあい(セックス)」がマーマーマガジンにも登場。

 実は私も弓田ごはんは食べたことがあります。味はとてもいいのですが、ただの食事ですから疾患が改善する効果はあるはずもありません。情報誌の作り手として、よくこんなことが書けるもんだとひたすら呆れるばかりです。

 読者のひろばは冷えとりママの実践報告。子どもの体中に湿疹が出ているが、毒出しなので靴下と手にシルクの靴下をつけさせているというもの(※子ども用のシルク手袋が見つからなかったので、靴下を手にはめさせてたようです)。さらに予防接種も薬も与えず、4カ月検診で医師にいやみを言われたが、強い信念をもてば大丈夫!だと思っています、とのこと。はい、完全に医療ネグレスト案件です。どうかそのお子さんが、無事育ちますように……。

◎今までのオーガニック推しはどうしちゃったの? な第19号(2013年7月発行)

特集は「土とともに生きる」。慣行栽培(一般的な農法)で使われるF1種について、「子孫のつくれない作物ばかり食べて、動物に異常は現れないのか」と読者を脅しにかかります。

さらに「有機肥料も問題がある場合があるようですね」と、けしかけるみれい氏、今までさんざんオーガニックを推しておいて、まさかの梯子外し!? 「ひふみ農園」という、国産スピ農法も登場。ひふみ祝詞(スピ界で有名な祝詞)を聞かせて育てた野菜は、育ちが違うそうです。

◎慣行栽培は体を冷やす! と農の世界でも冷えとりを語らせる第20号/2013年12月発行

 農特集続き。慣行農業をやっていると化学物質で土が冷えるから腰が悪くなる、でも自然栽培はあたたかい。いわば〈土の冷えとり健康法〉だよという、農と冷えとりのコラボトークという、ある意味、貴重な記事を掲載。

みれい氏の会社が運営するウエブショップ誕生や、「満を持して」と子ども用の冷えとり靴下販売開始のアナウンスも登場。紙面で紹介されている子ども用は16cmと18cmなので、不快なら自己申告できる年齢であると思いたい……けど、まだまだ親にコントロールされる頃だよなあ。ああ、冷えとりさせられる子どもが不憫。

 座談会はヘアケア談義再び。「ヘナは解毒作用がある」「セックスにもいい」「子宮と髪の毛は関係があるから生理中はシャンプー使うなと、産婆の祖母が言っていた」など、相変わらず根拠不明のトンデモガールズトークでみっしりです。

◎取りつくろった感の否めない、服特集の21号/2014年4月発行

「住まい特集を予定していたが、時間がかかってしまい、書籍用に予定していた服についてを取り上げました」とのこと、どこかとっちらかった印象があるのはそのせいでしょうか。この号では、「塩浴」も緊急特集。これも冷えとり健康法と同様に「PMSが軽くなった」「白髪が目立たなくなった」「やせた」など、因果関係不明の体験談がぎっしり。

*   *   *

 ホリスティック情報誌としてのマーマーマガジンは、これで終了です。これ以降は冒頭でご紹介したとおり、詩とインタビューの雑誌へとリニューアルとのこと。もしかしたらやっているご本人も、少々〈トンデモ疲れ〉したのではないでしょうか? それにしても謎物件を山のようにご紹介してくれたマーマーマガジン、関係者の皆さま大変お疲れさまでございました。

(謎物件ウォッチャー・山田ノジル)

最終更新:2017/01/31 20:00
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