【messyより】

由美子さん、54歳。バブル前に結婚を決めた性に奥手な彼女が、結婚前に母から渡されたのは一冊の医学書だった/更年期女性インタビュー

2017/01/14 20:00

このままじゃ、子供ができない。あせった由美子さんは夫に――

――でも、時代は変わりましたし長時間労働も是正の動きが出ています。それに旦那さまはあと数年で定年ですよね。ここ数年で時間の余裕というか、変化はありませんでしたか?

「この数年でだいぶ、帰宅時間は早くなりましたね。午前様ということはなくなって、スローダウンしているんじゃないでしょうか」

――ちなみにいまはセックスはされてるんでしょうか。

「まさか! そんなのあるわけないでしょう! もう家族ですから。いま夫に触れるときは、もはや介護の域ですよ。段があったなら『そこ危ないよ』と手を出すとか。傷があれば『ちょっと見せて』と触れるとか。それだけで、性的な匂いのするものは一切ないです。もはや家族、兄弟みたいな感覚なので、いまさらセックスだなんて……もうそんな雰囲気にはならないだろうと思います」

――最後に旦那さまとそういうことをされたのって……

「う~ん……ホントによく覚えてないけど……もう十年以上は経ってると思います。これまで、30年夫婦としてやってきたけれど、性行為の回数はほんとうに少なかったですから。さっきもお話ししましたが、30歳手前の頃は、これじゃあ子供もできないっていう焦りで、もっとしてもらわなければいけないと思ったこともありましたが……」

――そこでなにかアクションを起こされたんでしょうか。話し合うとか、誘ってみるとか……

「そこはね……もう私たちは性については奥手で慎ましい世代だから。単刀直入には言えないので『子供が欲しいんですけど、このままじゃできないですよね』って。それでなんとか、子供は授かることができましたけど。あ、そうそう。私ね、40歳を過ぎた頃にようやく気付いたことがあるんです、夫について」

――どんなことですか。

「この人は、性的にかなり淡泊な人なんだなぁって。だっていくら仕事、仕事だったとはいえ、結婚した当初はほら、彼だってまだ30前でしたし」

――30歳手前の男性って普通なら性欲旺盛なお年頃ですもんね……って、由美子さんは結婚してからその結論に至るまで、二十年近くかかったと。

「ええ。さっきもチラっと言いましたけど、私は結婚するまでほんとに性的なことの知識がなくって。当時はインターネットもありませんし、今みたいに情報があふれている時代でもなかった。なんせお見合いして結婚が決まったときに、医学書を母からもらった世代ですから」

――医学書を? お母様から?

「そうですよ。開いてみるとね、セックスについても書かれているわけですよ。可愛い感じのイラストつきで『結婚したらこういうことをします』って。それまでも、さすがにセックスとはなにかということぐらいは知っていましたけれど(笑)医学書を見て、より具体的な知識になったというか……」

――お母様もご自分の口からは言えなかったんですね。

「自分の口から直接は言えないけれど先に伝えてはおかないと、と思ったんでしょうね。それで医学書(笑)」

――そのお話、今の若い人にはきっとある意味カルチャーショックだと思います(笑)。ちなみにいまもその本はお持ちなんですか?

「十年前ぐらいに女子高生の子供を持つママに差し上げました。男性の思いとか、女性の生理とかが丁寧に書かれていて、今の子供たちにこそ必要な良い本だと思っていたので。娘の性教育に使うと喜んでいらっしゃいましたよ」

閉経さえもマウンティングの対象となってしまう?

――由美子さんは54歳ですが、閉経はされていますか?

「まだたま~に、生理があるんですよ。2~3カ月に一度急に少し出血したり。そんな状態がかれこれ2~3年続いてるかな。10年続く人もいるらしいですよ。もっと若い頃から、たとえば40代前半からこんなふうになっちゃうと、更年期じゃなくなんか悪い病気になったんじゃないかと思って不安になって病院に行く人もいるみたい」

――不正出血かと思いますよね。更年期の症状で気になることはありますか?

「ホットフラッシュかな。しょっちゅう顔がカーっと熱くなります。そのほかは特になくって……きっと私、症状としては軽いほうなんでしょうね」

――もうすぐ生理がなくなることに対しては、どんな感情をお持ちですか。

「やったー!! って感じです(笑)。もうナプキンを持ち歩かなくっていいんだって。だってあれってかさばるじゃないですか。邪魔でしかないですもの。それに、白いパンツを心配せずに履けるのも嬉しい!」

――そこに寂しさ、のような感情はないのでしょうか。

「私は寂しさなんてまったくありません。ただ、やったー!です(笑)。でも……みんながみんなそうではないのかなとは思います。同世代の女性たちで集まっているときに、閉経や生理の乱れについて話が及んでも、絶対その手の会話に加わらない人もいますから。もしかして、閉経しているから話題に入りたくはないのかなと感じたことはあります」

――「閉経してます」って、言いづらい?

「私は言えると思うんだけど……言わない人がいるのは、きっと自分だけが先に年老いている、おばあちゃんって思われたくないってそんな心理があるんだと思う。特に同級生だとね。みんながまだ生理があるって話してるのに、自分だけが先に終わったってなると……たぶん老化が早いと思われたくないんじゃないかな。もういっそ、確実に閉経してる年齢、70歳とかになればね、どうでもいいんでしょうけど。全員間違いなく閉経していると思われる年齢になるまで口を割らない人もいる気がする。でももともと私たちの世代って、生理についてはおおっぴらには語らないというところはあります。よっぽど親しい女性の友人に限るという感じでしたね」

――由美子さんはもともと、生理の症状の軽い~重い、どちらかといえばどっちでした?

「生理痛はとにかくひどかったですよ、特に若い頃は。かなり辛かったです。いまはもう痛みはほとんどないですけどね。あとね、よく生理前はイライラするって言うでしょ?そういうの、経験なくって。私の場合、感情にはまったく影響がないみたいです」

――結婚前にお仕事をされていましたよね。その頃に生理休暇を申請されたりは?

「とんでもない! 『生理なので辛いから休みます』なんて絶対に言えませんでした。無理をしてもとにかく出社して、どうしても辛くて仕事がはかどらないときは『お腹が痛いので』って、なんとかニュアンスでわかってもらおうとしていました。まだまだなにかにつけて『だから女は駄目なんだ』と言われてきた時代ですから。生理なんて女性特有の症状を口にしようものなら、どんな目で見られることか。『だから女は使えない。仕事はコピー、お茶くみだけしておけ』って平気で言う男の人だらけでしたよ。あ、男性だけじゃないかな。私たちの少し上の女性の先輩が、すごく頑張って<女性が働く>という道を切り開いてきてくれたので、その先輩の目もあって。生理を理由に仕事を休んだりできないっていうムードがありました。その時代の雰囲気をいまも引きずって、生理についてオープンに話せない人もいるかもしれませんね」

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