東京都議会議員・塩村あやかさんインタビュー(前編)

セクハラ野次の塩村あやか議員が語る、オジサン議員の裏側「都議会は“学級崩壊”状態だった」

2016/12/27 15:00

■怒られるから、野次は言っちゃいけない!?

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女性政治家のリアル』(イースト新書)

――「セクハラ野次」についてお伺いします。議会の一般質問で、不妊治療に関する質問をしている時に、「早く結婚したほうがいいんじゃないか?」「まずは自分が産んでから!」といった、とんでもない野次が飛び交っていました。どんな思いで質問を続けていたのか教えてください。

塩村 当時は、議員になってまだ1年たっていない時だったので、純粋な気持ちでやっていたんですけれど、こりゃひどいと思いました。今はもう、こんな人たちが議員であることがわかっているので、当時のように思わないでしょうが、あの時は聞いているうちに落胆するし、悲しくなるし、何より相談してくれた人たちの顔が浮かぶわけです。

 「不妊治療の末に子どもを授かった」とか、「今、不妊治療しています」とか、そういう方々の代表で立っているのに、目の前には「早く結婚したほうがいいんじゃないか?」「まずは自分が産んでから!」と言って、ギャーギャー笑っている人たちがいる。もう学級崩壊となんら変わらない状態ですよ。このおじさんたちに何を言っても無駄だ、という絶望感、怒りと悲しみで、声が上ずりました。

――女性という理由で、あれほど野次が飛んだのでしょうか?

塩村 それもありますし、議会には「小さい会派には何を言ってもいい」「強い者が弱い者をいじめてよし」みたいな風土があるんですよね。私はこれを“逆カースト制度”と呼んでいます。数が少ないほうが虐げられるんです。あの野次には権力闘争みたいな面もあって、「自分は他の会派を牽制しているんだ」と、先輩へのアピールになる。だから、自分をアピールする手段にしていたんだと思います。

――ひどい話ですね。その後、ちゃんと謝りに来てもらえたのですか?

塩村 議会が終わった直後、幹部クラスではないにしろ、同期くらいの議員から「ウチの会派が悪かったね」と、ひと言ぐらい謝りに来ると思っていたら、来なかった。来たのは、「謝りに来ました?」と確認しにきた記者だけでした。その後、しばらしくて、明らかに野次の声の主だとされ、逃げ切れなくなったひとりだけが謝りました。けれど、そのほかの多くの議員は、逃げたまま、今も謝罪はありません。

 騒動以降、一応、あのような野次はダメなんだというふうに、少しずつ変わってきているとは思います。でも、まだ強制的に直されている、という状況ですよね。怒られるから言っちゃいけないーーみたいなレベルです。

■当選させてくれた人たちを、裏切っちゃいけない

――あの野次を本気でまずいことだと思っている議員の割合は、どれくらいいると感じていますか?

塩村 都議会全体として、3分の1ぐらいは、まともな議員という印象です。共産党と東京・生活者ネットワークは、あのような野次は公私ともにあってはならないとの認識がある方々です。公明党も、基本的にはまずいとわかっていると感じています。ただ、やっぱり友党として自民党に引っ張られちゃう部分はあったせいか、制止するまでには至らない。

 自民党の中にも、わずかですが、本気でまずいと思っている方もいらっしゃいます。直接、言葉にして伝えてくれた先生もいますから。でも、私と話しているのを見つかるとまずいので、あの騒動がだいぶ落ち着いてからでしたけど。

――しかし、本当に精神的にタフですね。

塩村 タフになったのは、幼い頃から徐々にだと思いますね。本にも書いてあるのですが、私が子どもの頃に、父親が事件を起こし、逮捕されているんですよ。そのあたりから慣れてはいます。そのことで、近所のお母さんから「あの子と遊んじゃいけないよ」と、ひどい扱いを受ける一方で、良い人もたくさんいて、助けられて生きています。

 その人たちを裏切っちゃいけないという思いもあるんです。議員になって、少数派ですけれど当選させてくれた、応援してくれた人たちが約2万3,000人います。その人たちの代表で来ているので、個人的なことで辞めちゃいけない、と思います。もちろん腹が立つことも多いけれど、それが仕事ですから。めげますけどね、よく(笑)。
(上浦未来)

(後編につづく)

最終更新:2016/12/28 16:17
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