弁護士に聞いてみました

キュレーションサイトによる著作権侵害 個人ブログやSNS投稿は問題ないのか?

2016/12/19 15:00
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Photo by Kārlis Dambrāns from Flickr

 DeNAの運営する医療情報メディア「ウェルク」に端を発したキュレーションサイト問題は、他社の記事を無断転用して記事を作成し、著作権侵害の可能性があるとして、リクルートホールディングスやサイバーエージェント、ヤフーなど大手各社にも記事削除の動きが広がっている。今回問題になっている著作権侵害について、また、個人がブログやSNSなどに文章や画像を載せる際の注意点について、ベリーベスト法律事務所の甘利禎康弁護士に聞いた。

■キュレーションサイトやライターは、元記事の作者の複製権や公衆送信権を侵害

 今回の事件では、各サイトがライターに大量の記事を書かせていた。ライターは、一から取材して記事を書いていたのでは間に合わないので、他のウェブサイトなどから文章や画像を無断でコピーしながら記事を仕上げ、各サイトはその記事をアップしていたとみられる。甘利弁護士によると、それは著作権の侵害行為になるという。

「文章には、書いた作者の個性が何かしら表れるものです。その文章に作者の個性が表れている限りにおいて、それは『著作物』となります。著作物である文章は著作権法によって保護されます。著作権法では、他人が著作物を複製することを禁じる『複製権』という権利や、他人が著作物をインターネット上にアップすることを禁じる『公衆送信権』という権利を、著作者が有するということが規定されています。ほかにも、他人が著作物を改変することを禁じる『翻案権』など、これらの権利を総称して、『著作権』と呼んでいます。ですから、他人の書いた記事を無断で転載し、自身のウェブサイトに載せたサイトやライターは、元記事の作者の複製権や公衆送信権を侵害していたということになります」

■個人の場合、10年以下の懲役か1,000万円以下の罰金

 著作権を侵害する行為には刑事上の罰則があり、個人であれば、10年以下の懲役か1,000万円以下の罰金、またはその両方を科せられ、法人の従業員が業務上、著作権侵害をした場合であれば、法人に対して3億円以下の罰金が科されるという。

「ただし、著作権侵害罪は親告罪といって、被害者の告訴がないと処罰することができません。また、著作権を侵害した場合、民事上の責任も問われます。著作権を侵害され、財産的損害が生じた場合、侵害された者は、侵害した者に対して、損害の賠償を求めることができるのです」

 今回問題になっているのは、企業が運営するサイトであるが、個人のブログやSNSなどに他サイトの画像や文章を引用・転載しても著作権侵害になるのだろうか?

「個人のブログ・SNSであっても、先に述べたことと同じで、『複製権』や『公衆送信権』の侵害になります。文章だけでなく、写真・イラスト等の画像も著作物ですから、画像を転載しても著作権侵害です。なお、著作権法は、私的複製を許容しているのですが、ブログやSNSなど、他人に見てもらうことを前提とした利用の場合には、『私的』複製の範囲を超えていると考えられているのです。営利の目的があるかないかはここでは関係ありません。

 ただし、著作権法は、『引用』による著作物の利用を許容しています。『引用』に当たるためには、自身の著作物と引用された他人の著作物を明瞭に区別した上で、あくまで自身の著作物を『主』、引用される著作物を『従』という主従関係の下での利用でないとなりません。また、それが批評・報道などの引用の目的上正当な範囲内であることや、引用元などの出所を明示することが求められます。ルールを知って適切な方法で引用していれば、著作権侵害にはなりません」

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