[官能小説レビュー]

陵辱された女の復讐劇――『優雅なる監禁』のヒロインが失ったモノと得たモノ

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『優雅なる監禁』(KADOKAWA)

 一見、非力で弱い生き物に感じられる女でも、プライドを徹底的に傷つけられると鬼のように変貌することは珍しくない。

 例えば、大好きだった恋人にフラれた場合。二股をかけられ、しかも恋人の選んだ女性が、容姿であれ稼ぎであれ、どこか自分より劣っていたとき、悲しみより、「恋人を奪われた」「自分より劣る女に負けた」といったやり場のない悔しさや怒りに苛まれてしまうのではないだろうか。

 今回ご紹介する『優雅なる監禁』(KADOKAWA)は、作家・大石圭氏お得意のエロティックホラー作品で、ある女の復讐劇が描かれている。

 本作のヒロインである聖は、神奈川県平塚市の「ひらこ歯科医院」で働く、クリスチャンの歯科医。院長である、双子の慎一郎と健一郎は、大学時代からダイビング愛好会を通じて仲良くしている友人でもある。

 双子といっても、二卵性である2人は外見も性格も異なる。真面目で神経質な慎一郎はファッションモデルのようにすらりと細身な体躯をしている一方、弟の健一郎は、おおらかで明るい性格の持ち主で、185センチの筋肉質だ。

 共通しているのは、2人とも聖に想いを寄せていること。幼い頃からバレリーナにあこがれ、ひたすらバレエに打ち込んでいた聖は、スタイル抜群で、大学時代はミスキャンパスに選ばれたほどの美貌の持ち主である。毎朝、起きて一番に「新しい一日をどう気飾って過ごすか」と考えるほど、美意識も高い。27歳の頃に大学時代の先輩と結婚をしたが2年で破局し、新たな門出に際して、ヘソにピアスを開け、三連パールを輝かせていた。

 バレリーナの道を挫折し、結婚生活も破綻したことを、「試練」であると受け止めていた聖だが、ある日、人生でもっとも過酷な「試練」と対峙することになってしまう。

 聖はその日、慎一郎と健一郎に呼び出された。指定のレストランへ行くと、2人から「俺たちのどちらかと結婚してほしい」と申し出される。学生時代からの仲で、大好きな2人ではあったが、聖にとっては兄弟のようなものであり、恋愛感情などは決して持てない……そんな正直な気持ちを伝えて断ると、2人はあっさりと引き下がってくれた。

 しかし、慎一郎と健一郎の誕生日に事件が起きる。彼らの邸宅に招待された聖が、家政婦の用意したご馳走を前に乾杯し、談笑していたところ、ふと眠気に襲われる。目を覚ますと、そこは彼らの庭に建つ離れ。「音楽室」と呼ばれる防音室に、聖は監禁されたのだ。そして、2人から、終わりの見えない陵辱を受けることになってしまう――。

 本作は二部に分かれていて、前編で陵辱を受け続けた聖が、後編では、2人の男たちを陥れるための計画を練り、復讐に出るといった内容になっている。2人の歪んだ愛情を否定し、何度も抵抗を試みたが、やはり男の力には到底かなわない――そうして、ただなされるがままになっていた聖の「復讐」スイッチが入ったのは、“誰にも汚されることのなかった”部分を陵辱されたことがきっかけだった。

 美しくあるということにプライドを持っていた聖が、監禁によって次第に痩せていき、与えられたまずい食事を貪るようになり、汚され、獣のように醜く変貌してしまうわけだが、その描写が強烈な分、後編からの復讐劇は実に痛快だ。聖はまるで悪魔のように2人を追いつめるものの、その姿は、タイトルの「優雅」という言葉が似合う。

 美貌とプライドを奪われた女が、復讐を通して逞しさという美を得る。そう感じさせる1冊である。
(いしいのりえ)

リベンジに燃える女って、女の大好物

しぃちゃん

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