婦人科診察での最大の不安、「経膣エコーが痛すぎ」問題はどうすればいい?

 診察に向けた準備を万端に整えた夢子は、婦人科の予約をいよいよ明日に控えていたわ。

 なのに夢子ったら、夜更けまでずーっとパソコンにかじりついてるの。インターネットで必死に何か検索してるみたいだったけど、その様子が怖いのよ。PCに照らされてぼうっと浮かび上がる夢子の顔は鬼気迫ってるし、薄暗い部屋はシーンとしてマウスのカチカチ……という無機質な音しかしないの。ときおり夢子がつぶやく、

「ない、ない……」

 という独り言が不気味だったわ。もう準備はいいから、明日に備えて今夜は早く寝なさ~い! と思いながらわたしも画面を覗いてみたのね。夢子が見ていたのは検索サイトだった。「婦人科」「内診」「エコー」「痛い」「どうすればいい?」などの検索ワードが打ち込まれていたわ。夢子はもう何時間も、検索で上がってきたいくつものサイトをしらみつぶしに見ていたの。

 実はね、あとで詳しく説明するけど、夢子は過去に一度だけ婦人科で内診とエコー検査を受けたことがあるのよ。たしかに夢子、あのとき飛び上がって痛がっていたのよねぇ。飛び上がるって大げさな、とは思わないでね。本当にあの子ったら痛がって、金魚すくいの金魚みたいにビチビチ飛び上がってたの、物理的に。先生が内診しようとする度に「ギャッ!」「イダイ!」「ム、ムリっす!」とかいいながら。しかもそのせいでものすごく検査に時間をとられてしまったから、先生もたまったもんじゃなかったと思うわ。

◎こんなに痛いって、私がヘンなの?

 きっと、そのときのことを気にしてるんだわねぇ。今回も内診とエコーにものすごく時間がかかって検査してもらえずに「ヨソに行ってください」なんてお医者さんにいわれたら困るもの。永遠に病気を治療できないわ。なんとかするっと内診とエコーを済ませる方法はないものか、夢子は必死に探してたのね。

 ちなみにこれを読んでる姉妹のみなさんは心配しないでね。婦人科の検査って、普通はそんなに痛いもんじゃないから。現にネットにあがっている情報は、

「婦人科での内診やエコー検査は、違和感もあるし少し恥ずかしいかもしれないけれど、痛みはない」

 というものばかりだったの。みんな特に痛みも不具合もなくさっと検査を済ませているから、ネットにはなかなか夢子が希望する情報は載ってないのよ。それで夢子は孤独感を募らせながら、何時間も検索を続けるはめになったの。

「やっぱりあんなに痛がる私がおかしいんだ~あんなに検査で時間がかかるダメな患者はきっと世界中で私だけなのよ~婦人科での検査が痛くてこなせないだなんて恥ずかしい……」

 夢子はなんだか自分が女性としても人より劣っているような気がして、だんだん落ち込んでいったわ。

 ネットで「これだ!」という情報を見つけたのは、数時間の懸命な検索の末だったわ。それは、どうしてもエコー用の棒を膣から挿入するのが痛い場合は、肛門からエコー検査を行うことも可能、という情報だったのよ。夢子は救われた思いだったわ。

「そんな裏技があったなんて! 早く教えてくれればいいのに! もし明日エコーが上手くできなかったら、この奥の手を使おう!」

 それでようやく夢子はホッとして布団に入ったのよ。

 診察当日、問診が行われた部屋には医師の机と患者用のベッドが置かれていたわ。内科などと見た目は同じね。

 夢子は緊張しながら医師に自分の症状をまとめた用紙を渡して、間違っているかもしれないけれど、自分の症状は子宮内膜症という病気に一番似ている気がする、と告げたわ。緊張して口もうまく回らない状態だったから、症状をまとめた用紙は役にたったみたい。

 問診が行われる部屋は、パーティションで隣の診察室とは簡易的に区切られているだけで、ちょっとお隣の声なんかも嫌でも聞こえちゃうのね。看護師さんやいろんな人がばたばたと忙しそうに出たり入ったり、あわただしい雰囲気のところだな、と夢子は思ったわ。

 問診はものの数分で終わり、じゃあ診察しましょうね、と医師がいったとき、夢子はいよいよこのときが来た! と震えたわ。緊張と恐怖はMAXよ。

 患者は問診が終わると「内診台」が置かれた診察室に移動するの。そこにおかれた内診台を見たとき夢子は「げっ……」と息をのんだわ。婦人科は初めてじゃないけど、夢子に内診台での診察経験はなかったの。初めて見る内診台に夢子の緊張はMAXを通り越してバーストしちゃったの。

◎内診台で、心が削られる

 世の中にはやさし気なルックスで座り心地のよい内診台もあるのだけれど、そこにあったのは、いーわーゆーるー内診台だったわ。テレビなんかで見たことがあるような、拷問器具を連想させるような。アルファ・インにでも置いてありそうな。……わかるわよね(わからないなら、アルファ・インで検索して、一発で出てくるから!)?

 自分が行く婦人科では旧式のものではなく、恐怖感を和らげてくれるようなプロダクトデザインやエルゴノミック(人間工学)デザインに基づいた最新式内診台が使われていたらいいな、と思っていた夢子の希望ははかなくも打ち砕かれたの。地方の総合病院にそこまで期待しちゃダメよねえ。

 夢子は、こわごわそのアルファ・イン型旧式内診台の固い座席に座ったわ。患者は内診台に座るときに足をかぱっと広げた独特のポーズをとらなきゃいけないのよね。それだけでもだいぶ精神的に削られるんだけど、そのアルファ・イン型旧式内診台においては、かかとを上げて、なんだかヘンな金属のパーツにのせなきゃいけなかったの。ステンレスのようなピカピカ光った清潔感のある金属じゃなくて、鈍く光りをたたえたおどろおどろしい金属パーツよ。夢子は靴下ごしに感じる金属パーツのつめたさに首をすくめ、心の中でこう叫んだわ。

「この姿勢で股広げるなんて絶対無理無理無理無理屈辱的すぎぎゃーーーっ!」

 一応形式的にかかとを上げて座ったものの夢子は太腿をぴたっと閉じたまま体を固くしていたの。

「ハ~イもっと足広げて、お尻もっと前に突き出してくださいネェー」

 診察室には看護師の容赦ない指導が無情にもひびいたわ。

 そこに医師が登場してエコーの棒を挿入しようとしたけれど、やっぱり夢子にとっては痛すぎたの。「ぐわっ!」というレディーらしからぬ声を出して、痛みにのけぞりつつ足をぴーんと伸ばしたもんだから、その辺の機器類に当たってガシャン! と派手な音が響いたわ。まるで暴れるゴジラよ。診察室を壊すんじゃないかと、わたしはハラハラしちゃったわよ。

 ひょっとしたら今回のエコーは人並みにできるかもしれないという希望的観測を胸に挑んだのだけど、夢子は早々にギブアップして前日仕入れた知識をもとにこういったわ。

「先生、肛門から診ていただくのは可能でしょうか?」

 医師は淡々と答えてくれたわ。

「あっ、そのほうがラク? 肛門から入れるのは痛いって人も多いんだけど、個人差があるからね。あなたにとってラクなほうでやりましょうね。

 肛門からエコーの棒を入れられた夢子は、多少は痛そうに見えたけど、膣からのときほどは暴れることなかったわ。こうしてなんとか夢子はアルファ・イン型旧式内診台から解放されたの。先生にコイツは無理だと思われたのか、その日、内診はなかったわ。

 なんとか検査を終えたものの、夢子の胸には黒い不安がむくむくと湧き上がってきたわ。

「みんなが『痛くない』っていってる経膣のエコーがこんなに痛いなんて、やっぱり私はどこか悪いのかもしれない」

 夢子のその予感は的中だったの。

◎それって、ガンなの?

「うん、卵巣が腫れてますねー。たぶんチョコレート嚢胞です。」

 いったん問診が行われる部屋に戻ってから、医師は淡々とそう告げたわ。緊張と痛みと恐怖がまだ抜けずに放心状態だった夢子は、どう返事をすればいいのかよくわからずにいたわ。卵巣が腫れてる? それってどういうことなの? 頭はぼんやりするばかりで考えはまとまらなかった。

「チョコレート嚢胞ってなんですか?」
「卵巣に血が溜まってる症状です」
「……それって内膜症でしょうか?」

 かろうじて夢子が尋ねると医師はこう答えたわ。

「まだわからないから、MRIの予約を取りますね。このあと、血液検査して行ってください。今日のところは痛み止めを処方しますから、痛いときはそれを使ってください。」

「あのぅ、私、あまり痛み止めは使ったことないんですけど……」

 夢子がおずおずと切り出すと、医師はきっとした顔になってこういった。

「みんなそういうんですよ、痛み止めに頼りたくないとか。けどそれは間違いです! 痛み止めは使ってください!」

 その日は処方してもらった鎮痛剤を持って帰っただけだったのだけど、家にたどり着くころになってようやく頭が働くようになってきた夢子は、思っていたよりも事態が大きいことに恐れをなしたわ。

「卵巣が腫れてるってことはガン? いやいや、そんな簡単にガンになんかならないだろうし。けど、MRIを撮りましょうって先生がいったということは、いまはガンじゃなくても将来的にガンになるの?」

(大和彩)

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