元キャバクラ経営者が見た夜の世界の裏側1

売り上げをごまかす社長、キャストに手を出す黒服……元キャバクラ経営者が見た夜の世界の裏側

2016/11/02 15:00
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Photo by shibainu from Flickr

 カリスマキャバ嬢のメディアへの進出、また、ホストクラブがドキュメント番組に取り上げられる機会も増え、最近では夜の世界もクリアになってきたように思える。

 しかし、その一方で経営に失敗して借金を抱える経営者、その世界特有の人間関係で心身を壊すスタッフもいる。また、表の社会も同じだが、金が集まるところには、金目当ての悪い連中も集まってくる。

■店を任せた社長に金をごまかされていた

「夜の業界には、相手を騙してでも金をせしめようとする連中はいますよ。それは昔も今も変わりません」

 そう話すのは、夜のお店でドレスやスーツを販売する外商のM氏。かつてM氏は本業のかたわら、2店のキャバクラを経営したことがある。

「1人で立ち上げたわけではなく、こういう仕事柄、夜の業界の人間とも関係があるから、そのつてで店を開くことになったんです。1軒目は渋谷、2軒目は新橋でした。女の子も2つの店を合わせて60人くらいは雇っていました。いいときは、売り上げもまあまあいきましたよ」

 本業で懇意にしていた夜の業界の人々のバックアップもあり、オープンしてしばらくは店の状態は順調だった。しかし、数カ月もたつとほころびが出始めたという。

「それなりに利益は上がっていましたが、私も本業があったから、店は一緒に立ち上げた奴に任せていたんです。私がオーナー、そいつが社長という形でね。夜の店を開く場合、どんな形にせよ裏社会の連中と付き合う必要があります。漫画やドラマの中の話みたいでしょう(笑)。でもね、その土地を仕切っているヤクザから、みかじめを請求されるんですよ。裏についてやる代わりにってね。私は極力そういう連中との付き合いを避けるよう社長にも言っていたんですが、裏で金を渡していましてね。気がついたときには、ずぶずぶの関係になっていました」

 今でも夜の業界と裏社会は切っても切れない関係で、M氏も店を守るためならと、それを容認したという。しかし、最高責任者に話を通さず、現場の判断で重要事項を決めた、そのこと自体が問題だったと振り返る。

「自分以外の人間に店を任せるなら、信頼できる人間にする。そんな人間がいないなら、自分で店を管理する。この業界はそれが鉄則です。私は店の経営をその社長に任せていたから、大まかな金の動きは知っていても、その日何人客が来て、何を飲んでいくらずつ支払ったとか、卸業者にそれぞれいくら支払ったかとか、現場レベルの細かい金の動きは知りませんでした。そんな状態なら、その社長や経理担当がグルになって売り上げをごまかしていても気づきませんよね。後になって、百万単位で金をちょろまかされていたのを知りました」

■店のスタッフがキャストの女の子に二股をかけ刃傷沙汰に

 社長も含め、ルールを破ったスタッフは厳しく罰したM氏だが、スタッフの勝手な振る舞いはM氏のいないところで続き、やがて男女間のトラブルも頻発するようになったという。

「こういう店に来る客は、女の子と楽しくおしゃべりして酒が飲みたいという人がほとんどです。しかし、中には仕事で嫌なことがあって、その愚痴をこぼしに来る客もいます。キャバクラとか、風俗なんかもそうですが、心が病んでしまう女の子がけっこう多いんですよ。客の中にあるドロドロしたものを受け止めるわけですからね。そんなことを毎日していたら、心が疲れてしまうのは仕方がないことだと思います。そういうとき、黒服がフォローしてあげるべきなんですが、弱ったところにつけ込むような奴もいるんです」

 夜の業界に共通するルールとして、金を稼いでくれるキャストの女の子に男性スタッフが手を出すのは最大級のタブーだ。M氏によれば「さすがに東京湾に沈めることはしません」とのことだが、このルールを破ったスタッフは店を追い出されるのはもちろん、悪質なら夜の業界から追放されることもあるという。

「うちの場合、1人とできちゃうならまだしも、店の中で二股をかけていた奴がいましてね。表沙汰にはしませんでしたが、刃傷沙汰になったこともありました。そんなことが起きると私もスタッフを信じられなくなるし、店の雰囲気も悪くなる。店の雰囲気が悪くなると客も寄り付かなくなる……。どんどん悪い方向に向かっていったんです。女の子やスタッフの給料などの店の維持費、みかじめ料で毎月数百万はかかりますから、傷が深くなる前に、1周年を待たずに店をたたみました。オープン資金として投資した600万円ほどの金は取り戻せませんでしたが、その程度で済んだので良かったと思います」

■不義理をした相手に「出資して」と笑う元社長

 店をたたむ際に、社長が売り上げを持ち逃げしようとしたが、それは未然に防ぐことができたという。その社長はM氏の前から姿を消したが、つい最近、歌舞伎町でばったり出会ったという。

「私ならそんな不義理をした相手と出くわしたら、合わせる顔なんてないですけどね。そいつ、何て言ったと思います? へらへら笑った後、『今度店を出すから出資してよ』ですよ。宇宙人と会話をしている気分になりました。思い返してみれば、スタッフの中には真面目な奴もいましたが、トラブルを起こす奴はその社長みたいに、金とか欲望に目がくらんだ、歪んだ顔をしている奴らばかりでした。懇意にしている店のオーナーが、『店を持たせてやる』と言ってくれることもあるんですが、金目当てにすり寄って来る、ああいう連中と付き合うのはもうこりごりです。金は堅実に稼ぐのが一番ですよ」

 最近のキャバクラは企業化が進み、ルール違反は厳しく罰している。しかし、M氏が経験したようなトラブルは、そこかしこから聞こえてくるという。「何よりも怖いのは人」よく使われる言葉だが、欲望というドロドロしたものが浮き彫りになる夜の業界で生きる人々は、誰よりもその言葉を実感しているようだ。

最終更新:2019/05/21 16:46
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