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『逃げるは恥だが役に立つ』の契約結婚は法的に問題ない? 入籍したら契約は無効?

2016/11/29 20:45
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『逃げる恥だが役に立つ』(TBS系)公式サイトより

「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。

〈今回のドラマ〉
『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系・火曜午後10時~)

■契約結婚は法的に問題ないのか?

 初回から二桁をマークした視聴率が、右肩上がりの好調をキープしている連続ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』。派遣切りに遭った彼氏なしの主人公・森山みくり(新垣結衣)が、恋愛経験ゼロの独身サラリーマン・津崎平匡(星野源)のもとに家政婦として派遣されたことをきっかけに、「夫=雇用主、妻=従業員」の雇用関係で“契約結婚”するというラブコメディだが、現実社会でも契約結婚は法的に問題ないのか? アディーレ法律事務所の鳴海裕子弁護士に聞いた。

 鳴海弁護士によると、このドラマでの設定は一般的な意味での契約結婚とは若干異なるという。

「一般的にいわれる『契約結婚』は、通常の結婚とは違って、『浮気OK』『お財布は別々』とかを取り決め、婚姻届を提出して戸籍上の夫婦になる(法律婚)ことを契約結婚ということが多いと思います。近年よく耳にする『婚前契約』の取り決めと同じと考えてよいでしょう。結婚の意思(夫婦となる意思)はあるので、違法ではありません。他方で、夫婦となる意思がないのに婚姻届を出すのは違法です(外国人の国籍取得のための偽装結婚等)。

 このドラマでは、住民票は同世帯に移していますが、婚姻届は提出していません。そのため前述のような契約結婚とも違うということになります。ドラマの中では『事実婚』という言い方もされていますが、『事実婚』は双方に夫婦になる意思があり、かつ周囲にも夫婦と認められていることをいいます(『法律婚』と『事実婚』との違いは、婚姻届を出しているかどうかの違いということになります)。このドラマでは、周囲には夫婦と認められていますが、当事者同士に夫婦の意思がありませんので、事実婚とも違うということになります」

■2人が婚姻届を提出しても、契約は無効にならない

 では、契約結婚に必要な契約書というものは、どういった内容になるのだろうか?

「このドラマでは、平匡とみくりは周囲には結婚したと偽って生活していますが、2人の間では『雇用契約』と言っています。当事者間では、一般的な家事使用人に近い契約をしているものと思われます。家事使用人については、労働基準法の適用がありません(労基法116条2項)。家事使用人とは、たとえば個人の家庭においてその家族の指揮命令の下で、家事全般に従事している者等をいいます。もっとも、ドラマの中では、業務の内容や業務時間、休憩休暇、お給料と業務に使用する経費(食費や日用品費や水道光熱費等)に関する事項等は、しっかり取り決めていると思われます」

 なお、契約自由の原則があるので、双方合意の下で、後から項目を増やすことは可能だという。

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