映画レビュー[親子でもなく姉妹でもなく]

女が本当に好きなのは男ではない? 女同士の淡い同性愛感情を描く『小さいおうち』の幸福

2016/11/30 17:00

――母と娘、姉と妹の関係は、物語で繰返し描かれてきました。それと同じように、他人同士の年上女と年下女の間にも、さまざまな出来事、ドラマがあります。教師・生徒、先輩・後輩、上司・部下という関係が前提としてあったとしても、そこには同性同士ゆえの共感もあれば、反発も生まれてくる。むしろそれは、血縁家族の間に生じる葛藤より、多様で複雑なものかもしれません。そんな「親子でもなく姉妹でもない」やや年齢の離れた女性同士の関係性に生まれる愛や嫉妬や尊敬や友情を、12本の映画を通して見つめていきます。(文・絵/大野左紀子)

■『小さいおうち』(山田洋次監督、2014) 時子×タキ

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 同性愛者であるかないかを問わず、女が本当に好きなのは、男ではなく、女ではないだろうか。

 思えば小学校の頃から、男子に比べて女子同士の方がよくハグをするし、親友と腕を組んで歩いたりして、身体的な密着具合が高い。歳を取り中年になって、旅行は夫とより同性の友人と行く方が楽しいという人は結構いる。「老後、一緒に暮らさない?」などという話が出るのも、大抵女性の間だ。気の置けない女同士の関係ほど、心地良く安心できるものはない。

 それからすると、男はやはりどこか「別の生きもの」だ。愛したり尊敬したりすることはあっても、心から共感したり理解し合えたと思えることは、同性ほどはないのではないか。歳を重ねるにつれ、そう実感することが多くなった。

 孤独を真に癒やしてくれるのは、同性。安心してその懐に飛び込めるのも、同性。そう感じている女性は少なくないと思う。むしろ、全ての女の中に根強くあるのは、異性愛より同性愛的な要素ではないだろうか。

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