仕事で迷える人たちへ。漫画家、ハグ屋、農家…唯一無二のキャリアを築いた男・えろ漫画家ピクピクン☆氏の「天職論」

 はじめまして。川寄ふうと申します。「自分にとって働くとはなんぞや?」ということについて考えつづけている者です。詳細は省きますが端的に申しますと、職にあぶれた経験が何度もあるからでございます。

 考えつづけた結果、社会の受け皿(つまり会社など)に無理に己を合わせて働くのではなく、自分で自分の受け皿を作り『仕事を創造』しながら働くことが今後の私には必要なんだ! という考えに至りました。

 こうなれば、あと私に必要なのは具体的な方法論です。まあ、そこがかなり重要なワケですが。自分で自分の受け皿を作りつつ食べていくだけの収入を確保するって、いったいどうやったらできるんでしょうかね? 誰か教えて! どなたかお手本にさせていただけるような方はいらっしゃらないかしら……と思っていたら、いらっしゃいました。えろ漫画家ピクピクン☆さんです。

◎オンリーワンのキャリア

 えろ漫画家ピクピクン☆(以下ピクピクン☆)さんは、エロティシズムあふれるブログやツイート内容からネットではよく「変態」などと評されていますが、とんでもない、と私は思います。

 己の性的な欲望から目をそらすことなく正直に向き合うには勇気と知性が必要であり、さらにそれらをユーモアを交えて文章に昇華するには高い語彙力とスキルがなければなりません。ピクピクン☆さんの言葉からは、誰も傷つけることのないようなやさしさや配慮も常にうかがえます。

 ピクピクン☆さんのお仕事は、エロ漫画家・年間10トン生産の米農家・ボーカル・舞台役者・「ハグ屋」……と多岐にわたり、以前は地元の消防団員も勤められていました。「ハグ屋」にてこれまでハグした老若男女の数は約6,000人。今年7月末で所属していた大手所属事務所を退職後、現在は個人で設立した新・ファンクラブをひっさげ、「全国ハグ屋ツアー」の真っ最中です。

 どうでしょう、自らの手による、これ以上ないほどの受け皿の創造っぷり。これからの日本に必要なのは、ピクピクン☆さんのようなキャリア構築だと、私は本気で思います。

 私はぜひ、ピクピクン☆さんにお話をうかがいたい、それも「職」をテーマにしたまじめな内容で、と考えました。ピクピクン☆さんならきっと固い話題でもまっすぐな回答をくださるはず。

 実際取材させていただいたところ、予想どおり、いや、それをはるかに凌ぐインテリジェンス&ウィットに富んだお話をうかがうことができました。取材は9月、ご実家での稲刈り直後、そして阿佐ヶ谷ロフトでの定期トークライブと1泊2日のファンクラブ旅行を控えた前日という、超ご多忙中に行われたのですが、ご本人にお疲れの様子はありません。射るような力強いまなざしが印象的です。

 騙されたと思って読んでみてください。ピクピクン☆さんのお言葉、めちゃくちゃ面白いです。

◎「天職」は作れるのか?

ーー雇用が不安定で、そもそも仕事の数自体が足りず、無職率もあがっている……というのが現状の日本において、ピクピクン☆さんはご自分の手で「唯一無二のキャリア」を「カスタムで」作ってらっしゃいます。本日はその唯一無二のキャリア、いわば「天職」をみずから作り出す秘訣などについて教えてください。

ピクピクン☆さん(以下、ピ)「天職といっていただいて、うれしいです。自分がやっていることが天職であるとは、自覚しております。いまの活動全部をやるために自分は生まれてきたと思っています。僕、生まれ持って末端神経が器用なんです。指や舌がよく動きます。たとえばクンニするときに、クリトリスをむいて、指をまんこの中に入れてあげて、やさしく円を描くように動かします」

ピ「同時に舐めるんですが、僕は舌がイジリー岡田さんの2.5倍くらい速く動きます。クンニが上手いということは、絵も繊細に描けるということです。肉体的に漫画と女性に関することは元から天職なんだろうな、っていうのはありますね。

僕にとっては、ハグ屋も天職です。何事も、それをやるかどうかは『好きかどうか』という簡単な物差しで測って決めます。僕がやりたくてやってるだけだから、やることをやるだけでまさに天職になるわけです」

ーーおじいさまも絵を描くのがお好きだったんですよね?

ピ「隔世遺伝とはいいますけど、いまでも健在の僕の祖父は絵を描くのが好きで。農作業をサボるもんだから家族に怒られながらも、ずっと描いていた人なんです。僕がいま漫画を描いていることを、おじいちゃんはすごく喜んでくれます。

実家の田んぼは、おじいちゃんがおばあちゃんと一緒に木を削って井戸を掘って全部切り拓いたものなんです。今年も稲刈り兼ファンクラブ旅行があるんですが、その田んぼに、自分の夢である絵を描く仕事をもった孫がファンを連れて田植えや稲刈りに来てくれる光景が本当にうれしいみたいで。おじいちゃんがいちばん楽しみにしてますよ。『みんなかわいい! 早く会いたい!』って」

ーーおばあさまにも子どものころ絵を褒められたとうかがいました。

ピ「夜中、ずーっと女の人の裸を描いてたら、後ろにおばあちゃんがいて、僕の手元をのぞき込んでたんです。とっさに『僕、ものすごい悪いことをしてるんじゃないか?』と思っちゃったんですけど、その瞬間、おばあちゃんが僕を後ろからそっとハグしてくれて。

そのときおばあちゃんがキスしてくれたのが僕のファーストキスです。震えている僕を抱きしめて『いいのよ』っていいながらキスしてくれました。僕が小1くらいの頃です」

 ピクピクン☆さんの「やりたいことをやる、それがすなわち天職になる」という姿勢は、彼の同人漫画やハグ屋への取り組みにも表れています。

ピ「正直に描きたいものを描いたときに最も喜んでくれるのは、やっぱり僕のファンなんですよね。その作品自体が100%純粋のピクピクン☆なので。だから好きなことをやるのが誰にとっても正解とはいいませんが、それはひとつよいことだと思います」

 もともと商業漫画の世界にいらしたピクピクン☆さんは、昔は“同人誌反対派”だったそう。けれども、試しにコミケを訪れてみたところ「ものスゴい熱量とエネルギーと直接の現場の声と、編集部を介さない、売れるとか売れないとか関係なく自分の描きたいものを描くという、作家のギラギラしたものがスゴくて」衝撃を受けたそうです。

ピ「そこで僕も試しに好きなように描いてみたんです。そしたらそれがすごく楽しくて。『ああ、これはおじいちゃんが昔やろうとしてた自費出版だ』と気づいたんです。昔はすごく大変だった自費出版が、いまは簡単にできるようになった。この時代に感謝しようと思いました。出版社さんには申し訳ないんですけど、いまは自費出版万歳になってます。

いまは、わがままに描いたもののほうが受け入れられる世相なんだと思います。加えて、僕にとっては自分のやりたいことと同人出版の歯車がちょうど合っている状態。だから同人で売っているし、買ってくれる人もいる。たまたまいま、出版に恵まれてます」

◎ハグこそ、至高!

ピ「いま『全国ハグ屋ツアー』をやってますけど、桃源郷ですよ。酒池肉林ですもん。ハグというものが一時期過激になっていたこともあったんですが、いまはハグ屋では単純にお客さんを抱きしめるだけ。こうすれば最大限に心が伝わるしお客さんも喜ぶってことに、やっと気づいたので。ふつうのハグがいちばんエロくて、いちばん幸せで、いちばんいろんなものが伝わります」

ーーハグ屋は年齢や性別は関係なくみんなウェルカムなんですよね?

ピ「ハグに年齢は関係ないです。最近思うのは、自分のいってることは世間から見たら綺麗ごとなんだろうなって。でも、この世に正解はないといえども、綺麗ごとを探ることにこそ真実や正解があると思っています。

別に綺麗な人を抱きたいわけではありません。相手が喜んでくれたときのレスポンスのほうが重要なんです。お年を召した方ですと60才のご婦人もいらっしゃるんですが、抱いたときにすごく怯えながらも喜んでくださると、もう興奮します。『よかった、また抱きたい』と思うし。

それでいうと、男性も関係ないです。男性も喜んでくれればうれしいし、幸せをもらいます。『人の笑顔で自分が幸せになる』なんて、綺麗ごとに聞こえちゃいますけどね。必ずそこに正解があると思ってます、僕は。自分のためにも」

ーーハグ屋の過去最高人数が北海道の大通公園での450人、そのときは4時間ちょっとかかったそうですね。長丁場のハグで疲れたり、立ちっぱなしで腰が痛くなったりはしませんか?

ピ「僕が抱きたくて会いたくて行ってるので、何百人ハグしても、疲れたとか長いとか、そういう発想が僕のなかにまずないですし、わからないです。僕にとってはエステされてるのと一緒なんです。僕はエステする側じゃなくて、される側です。立ちっぱなしで腰が痛くなることもありません。

ーー意外と体力があるんですね。先日はあんなに腹筋ができなかったのに……(※2016年9月23日に阿佐ヶ谷で行われた『第71回トークライブ』にてステージ上でピクピクン☆さんは腹筋を披露したが、あまり回数をこなさなかった)。

ピ「(これまで途切れることなくしゃべっていたが、一瞬の沈黙のあと)あれは、そういう演技ですー! じゃあ見ててください」

 そう言うとピクピクン☆さんは床で腕立て伏せの体勢になり、スタンダードな腕立て伏せや指5本の腕立て伏せはおろか、指3本の腕立て伏せも次々と綺麗なフォームで披露。

ピ「僕、実際は腹筋も相当できます(ニヤリ)」

ーー失礼しました。トークライブの腹筋は演技だった、って書かないほうがいいですよね?

ピ「書いていいです! 目の前で指三本の腕立てしやがった、って書いてください(笑)」

◎僕が決めたから、それは運命

ーー休みの日やオフはありますか?

ピ「逆にその質問が面白いと思いました。僕、オフっていう日がない。そのいい方をするなら、僕は生まれたときからいままで毎日がオフです。

『空腹が最高のスパイス』っていうように、3000円のステーキ食べるんだったら、あと3時間お腹空かせて1000円のステーキ食べたほうがおいしい。何でも踏ん張れば楽しくなるし、毎日楽しいことしかしてないので、結局毎日がオフなんです」

ピ「では元のテーマに立ち返って、川寄さんは自分の天職はどのように見つけるとお考えですか?」

ーーそれがわからなくて人生迷走しております。

ピ「そうですよね。恋愛も同じで、100人つき合えばその中の1人の運命の人と出会えるかもしれない。職業もそうですよね。いろんな企業に勤めて、やっと『これだ』って思えたときにそれが生涯の職となるわけですよね。

でも僕はそうじゃないと思っています。運命の人に会えた、それは結果論でしかないと思っているんです。たとえば仮に誰かとつき合うとしたら、そのときに決めちゃうんです。『僕が決めたから、この人は運命の人だ』と。

君がほかのオトコを好きになるかもしれないけど、まずそうはさせない。ストーカーになろうと、たとえ相手を刺そうと、つまり君に嫌われようと、もう僕は君しか愛さない。絶対に離れないって決めて、最後一緒に死んで墓に入ればそこで初めて、結果的に運命の人になるわけですから。だから運命の人は、100人が100人見つかります。自分の天職も100人が100人出会えます。

天職も運命の人も、自分で決めることです! それが僕の天職論です」

 ……後篇は「自分で天職を決めてやりたいことをやればいいのはわかった……問題はそれをどうお金に替えるかだ!」と思っているアナタにお送りする「天職をマネタイズする方法」「コミュ障からの脱却法」などです。

(川寄ふう)

<後編は10/28更新予定です>

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