いまだに残るベトナム戦争の傷跡

国土の1/3が不発弾に汚染されたラオス 日本の元自衛官や建設機械が支える処理作業

2016/10/05 15:00

■日本の支援団体の不発弾処理も加速化

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現場で実際に処理を進めながら技術を移譲していく(JMAS会報「オヤジたちの国際貢献(3)」から抜粋)

 不発弾処理は、UXOラオを中心に、NGOや民間企業も作業を進めている。その中に、日本の認定特定非営利活動法人「日本地雷処理を支援する会(JMAS)」もある。02年にカンボジア地雷処理支援において元自衛官らが活動を始めた団体で、06年からラオスでも活躍している。JMASの本部事務局長兼ラオス事業の事業統括責任者・關廣明氏に、米国の支援発表について聞いた。

「2年前からUXOラオが資金不足で処理チーム削減を始めていたので、負の遺産を残した米国が支援を増大させるべきだとは思っていました。今回の増額は歓迎ですが、3年間90億円に限らず、さらに長期的に支援をすべきです」

 關氏は、米国の支援を、ラオス政府はどのように活用するとみているのだろうか?

「開発重点地域の処理の促進や、被害者救済と支援などに、幅広く使われるのではないかとみています。不発弾問題収束でラオスが経済発展をするかというと、あまり変わらず、処理活動はラオスの人々の安全確保という、経済発展のための基盤作りになると思います」

 ラオスの安全化が実現するまで、今のペースでは200年かかるという試算もあるが、米国の支援が適正に利用された場合、それがどれくらいにまで短縮できる見込みなのだろうか?

「わかりません。現在は、外国の処理組織は我々JMASのほか、欧州NGOが中心です。今後は米国も資金のみならず、自国組織や最新機械の投入で、処理の加速化に貢献してほしいと思います」

 JMASの活動は、不発弾処理に必要な技術をUXOラオ職員に教えることが柱で、ラオス人主体で対応できるように支援する。定年退職した陸上自衛官らが志願して現場に赴き、数カ月滞在して指導してきた。そして、14年11月にいったん現場から手を引き、首都ビエンチャンに教育施設を建設して、自衛隊だけの技術「のこぎりカット法」を教えている。現場で爆破処理ができない場合でも安全化できる技術だ。

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教育施設でのこぎりカット法を学ぶ、UXOラオの職員

 それから、今月にはJMASによりコマツ製処理機械を導入する。12年初めにも一度特殊ブルドーザーを導入したが、地雷処理用だったため、子爆弾が小さすぎて破壊できなかった。しかしJMASとコマツは諦めず、今回、再び機械導入に挑戦する。10月中に訓練と機械の性能確認、11月から実際に処理を始める予定だ。うまくいけば不発弾処理作業手順書を作成し、処理機の操作や整備に関する技術をUXOラオに移譲していく。

 機械が使えれば、広く平らな地域においては劇的に処理速度が上がる。山岳部など傾斜地で使用も可能だが、現場までの道が険しく、山林でどこまで活躍できるかは、実際のテストを通じて調整することになるだろう。

 ラオス全体の安全化が、米国の支援とJMASの活動により、スピードアップしていくことを祈るばかりだ。 
(髙田胤臣)

取材協力
日本地雷処理を支援する会(JMAS)

最終更新:2016/10/05 15:00
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