[官能小説レビュー]

「おっぱいの大きい女=エロい女」記号化される女の悲哀が共感呼ぶ『星屑おっぱい』

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『密やかな口づけ』(幻冬舎)

 私たち女性は、なぜ“おっぱい”に振り回され続けなければならないのだろう? 小学校高学年に差しかかった頃から、無意識のうちに膨らみ始めてきた胸元。当時、よくクラスメイトの女子生徒同士で大きさを比べ合っていたが、筆者はプールの授業があるたびに、自分の薄っぺらな胸元を見つめて落ち込んだものである。

 おっぱいをめぐる葛藤は、同性だけでなく、当然異性からの視線によっても生まれるものである。今も昔も、おっぱいは「男性が好きな女性の部位1位」を誇るからだ。世間では、おっぱいが大きい女性は、女として1つの付加価値を持つとされているため、自分の胸を卑下して生きている、おっぱいの小さな女性も少なくないのではないだろうか。

 一方で、胸が大きいことにコンプレックスを抱く女性もいる。今回ご紹介する『密やかな口づけ』(幻冬舎)収録の『星屑おっぱい』の主人公・真樹は、物心ついた頃から自分のおっぱいを呪って生きてきた。真樹のブラのサイズはIカップ。小学校6年生の頃から急激に膨らみ始め、そのせいで、男子生徒からは遊び半分で胸を触られていた。学生時代にも、毎日のように痴漢に遭い、男たちから勝手に「エロい女」とカテゴライズされてきたのだ。

 そして現在、肉体関係を持つ会社の上司・高瀬は、真樹の乳首をねぶり回し、乳房で頬を叩かれては悦び、決して社内では見せないいやらしい顔を見せる。真樹には、それが滑稽でならない。

 そんな真樹が、小学生時代から現在まで交流が続いている親友のブライダルチェックに付き添う形で、乳がん検診へ行くことになる。マンモグラフィーの結果、真樹のおっぱいには、星屑のように石灰化があることが判明したのだ――。

 真樹は、生まれ持ったIカップの胸をコンプレックスとして受け止めて生きてきたが、貧乳の人からすると、例えば、豊満な胸に吸い寄せられた男たちを手玉に取り、指一本触れさせずに、ステータスを確立するなど、使い方によっては何者にも代えがたい武器にもなるのに……と思うかもしれない。

 しかし、見た目の特徴だけで、その人格全てを規定されてしまうと考えるとどうだろう。例えば真樹のように、何も意図していなくても、男たちは「真樹」という人物ではなく「おっぱいが大きい女」と、脳内で勝手に記号化してしまう。自分自身の人格を知ってもらう前に、自分とは別の人格を当てはめられてしまうなんて、どれほどつらいことだろうか。

 幼い頃から、自分の運命を背負い続けてきた真樹の姿は、読み手をどんどん悲しい気持ちに陥らせていくが、同時に誰しもが少なからず持っているであろう“共感されないコンプレックス”への共感を呼び起こすのではないだろうか。
(いしいのりえ)

同性からの偏見の目もつらいものがあるよね……

しぃちゃん

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