『大麻解禁の真実』著者・矢部武氏インタビュー

高知東生が覚せい剤と一緒に大麻をやっていた理由 医療にも使われる植物の効果と危険性

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矢部武氏

 覚せい剤4gと大麻1.3gの所持と使用容疑で逮捕された高知東生被告の初公判が8月31日、東京地裁にて開かれる。所持量の多さと、同時に2種類を持っていたことにより、常習性が疑われている。なお、大麻については、7月の参議院選挙で新党改革から出馬した高樹沙耶氏が医療大麻解禁を公約に掲げていた。大麻とは覚せい剤同様に人を惑わす危険なものなのか、人を救う可能性を秘めた神様からの贈り物なのか。『大麻解禁の真実』(宝島社)の著者・矢部武氏に、大麻と覚せい剤の違い、また医療面での可能性を聞いた。

■覚せい剤と大麻の違い

――そもそも覚せい剤と大麻は、何が違うのでしょうか?

矢部武氏(以下、矢部) まず、覚せい剤はメタンフェタミンを主成分にした薬物であり、中枢神経を刺激し、神経伝達系のドーパミンの分泌を高めます。一言でいうと、元気になって24時間働き続けることができるんですね。ヘロイン、コカインと同様に耐性があり、常用すると効果が薄れてくるため、いつの間にか使用量が増え、過剰摂取で死に至る危険性もあります。1893年に日本人の薬学者・長井長義が合成に成功しており、長年、日本に蔓延しています。依存性が非常に高く、一度逮捕されても再犯率の高いことも特徴です。自分の力だけでは依存症から脱出するのは難しいのですが、日本には治療施設が少ないことも問題となっています。

 一方、大麻は植物です。葉と花の部分を乾燥させたマリファナ、葉や茎から採取した樹脂を固めたハシシの2種類があり、パイプなどで吸引します。気分がリラックスしてハイになり、多幸感があるのが特徴です。依存性は低く、カフェインと同程度。大量に摂取しても、死に至ることはありません。

――高知東生被告は、覚せい剤と大麻を所持・使用していました。興奮系の覚せい剤と、抑制する大麻を同時に使う理由とは、なんでしょうか?

矢部 高知被告がどれだけ理解していたかは疑問ですが、カリフォルニア大学バークレー校のアマンダ・レイマン博士は、大麻が覚せい剤依存症者の治療に役立つのではないかという研究を行っています。依存症者は薬が切れると「早くクスリを使え」という幻聴が現れるなど、脳の指令によって体が薬物を渇望するのですが、大麻を吸うと症状が落ち着き、幻聴がなくなるそうです。

 現在、研究は進行中なのですが、ハードドラッグ常習者が薬物を断ち切るために、一時的に依存性の低い大麻を使用することで回復できるのではないかと期待されています。高知容疑者がそれを知っていたかはわかりませんが、所持量から推察するに常習していたでしょうから、大麻の効果を体で知っていて、使い分けをしていたのかもしれません。

■暴走する危険ドラッグ

――相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件では、容疑者が大麻を所持していたという報道がありました。大麻と事件は関係があると思いますか?

矢部 一部には大麻使用と殺傷事件を関連づけた報道もありましたが、それは考えにくいですね。大麻を摂取すると暴力的な衝動は鈍くなり、ハイになって気持ちよく笑っている感じだと思います。もし犯行に関係があるとすれば、危険ドラッグなのではないでしょうか? 容疑者は、危険ドラッグも常用していたと報じられていました。危険ドラッグに含まれる合成カンナビノイドは大麻と似た成分ですが、ほかにさまざまな有害成分が混ざっているため、本物の大麻よりはるかに有害で危険です。意識障害、呼吸困難、痙攣などに襲われ、錯乱状態に陥り、多臓器不全で死に至るケースもあります。2014年の池袋暴走事件を起こした男も、これを使用していました。

■医療大麻は危険なのか?

――7月25日に亡くなった末期がん患者の山本正光さんは、治療のための大麻使用で逮捕され、公判で医療大麻の使用を認めるよう求めていました。また、今夏の参院選に新党改革から出馬した高樹沙耶氏は、医療大麻の解禁を公約に掲げていました。海外では医療大麻の使用を認める動きもあるようですが、医療大麻は、いわゆる嗜好品としての大麻とは、どのように違うのでしょうか?

矢部 本質的には同じものですが、用途が異なります。アメリカでは1996年にカリフォルニア州で医療大麻が合法化されました。現在25州、アメリカ全土の約半数が医療大麻を合法化しています。大麻には抗炎症・鎮痛作用があり、緑内障、リウマチ、多発性硬化症、てんかんの治療に用いられています。また現行の医薬品よりも副作用が少ないと判明しています。大麻を吸引することに抵抗がある高齢の方などは、クッキーやドリンクにして摂取しているようです。

――医療大麻が、それ以外の用途のために流出するという危険性はないのでしょうか?

矢部 全くないとは言い切れませんが、アメリカでは栽培者、販売者、使用者を登録制にして管理しています。さらに娯楽用大麻も4州が合法化、18州が非犯罪化しています。非犯罪化というのは、1オンス(約28g)以下の個人的な所持は交通違反程度の罰則で、逮捕・収監されることはありません。

――医療大麻に、副作用や毒性はないのでしょうか?

矢部 前述した通り、覚せい剤と比較すると、依存性、中毒性が軽微です。さらに、タバコのニコチンよりも、依存性がずっと低いんですね。注意すべきは、大麻を摂取すると軽い運動程度の心拍の上昇があるため、心臓に問題のある方は避けたほうがいいでしょう。またこれも研究段階ですが、未成年の脳には影響を与える可能性があるため、娯楽用を解禁しているアメリカのコロラド州でも21歳未満は使用を禁止しています。また動作が鈍くなるため、車の運転も避けたほうがいいでしょう。未成年禁止、服用時の運転も禁止というのは、アルコールに似ていますよね。娯楽用を解禁している州では、一定のルール内で使用すれば問題はないと考えられています。

■大麻は高齢化社会の希望?

――アメリカ以外で、医療用大麻を推進している国はありますか?

矢部 イスラエル政府が、医療用大麻の研究を支援しています。1960年代にヘブライ大学のラファエル・メコーラム教授(医療化学博士)が大麻から精神活性作用のあるTHC(テトラヒドロカンナビノール)を抽出し、同大学のルース・ガリリー名誉教授(免疫学博士)がCBD(カンナビジオール)に抗炎症性や抗不安作用があることを発見しました。

 現在は、THCの含有率が低くCBDが多い、医療向けの品種の改良が進んでいます。また、高齢者特有の関節炎、不眠、食欲不振、痙攣などに、現行の医療では何種類もの薬を大量に飲む必要がありますが、イスラエルの老人ホームで医療大麻を導入したところ、処方薬がほとんど必要なくなったそうです。超高齢化社会を迎える日本において、高齢者のQOL(生活の質)や医療コスト削減の面でも、参考になるケースです。

――アメリカでは今後、すべての州で医療大麻が導入される流れになるのでしょうか?

矢部 その方向で進んでいます。オバマ大統領も、この問題に対して前向きに取り組んでいます。医療大麻は連邦法では禁止されていますが、このまま合法化する州が増えていけば、連邦レベルの合法化もあり得ると思います。また、11月の選挙ではカリフォルニア州で娯楽用大麻の合法化案が住民投票にかけられますが、それが可決されると、医療用・娯楽用を含め、大麻解禁の流れが一気に進むでしょうね。

 日本においては、1996年にカリフォルニア州で医療大麻が合法化された直後に厚生労働省の担当者に取材した際は、連邦法が改正されたら日本でも検討することになるかもしれないとコメントしていたのですが、最近ではその可能性が出てきたためか、逆に慎重な姿勢を見せています。日本でも戦前は、大麻の使用は認められていたわけですし、まずは議論を深めていくことが、医療大麻導入の第一段階になるでしょう。
(松田美保)

覚せい剤と大麻は全然違うもの

しぃちゃん

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