肉体派雑誌『ターザン』のセックス特集に、「愛の押し売り」は見られない

 セックスには「事前に知っておきたいこと」と、「実際に体験しながら学ぶこと」があります。でも実際の私たちは、「事前に知っておきたいこと」についてとてもあやふやな知識しか持っていなかったり、AV由来の間違った知識だったりします。

 たとえば私たちは、「子宮」や「膣」について習う機会はありますが、外性器についてはその機会がほとんどありません。おかげで自分の外性器を見たことも触ったこともない、つまりは何も知らないも同然という女性は、思いのほか多いです。バージンじゃなくて、すでに性経験のある女性でも、自分の性器をアンタッチャブルなものにしがち。そんなところをいきなり男性に見られ、触られ、人によってはかなりの痛みをともないながら受け入れるって……怖い!! かくいう私も処女のときは見ざる触らざる状態でした。そんな丸腰の状態で、よくロストバージンなんてビッグイベントをやってのけたものです。性器については最低限「事前に知っておきたいこと」だなぁと、いまさらながら思うわけです。

 さて話は変わり、8月の雑誌界は性に関する特集が花火のごとくあちこちから打ち上がっています。webマガジンでも、日経DUALで「男の子の性教育、女の子の性教育特集」が、クーリエ・ジャポンで「特集:世界『性革命』報告」が特集されていました。紙の雑誌における代表格はもちろん、『an・an』。そして私が昨年からにわかに注目している『GLITTE』の「LOVE and SEX」も入手しています(これは来週、お伝えする予定です)。日本人はセックスしなくなっているといいますが、夏=セックス! というイメージはいまだ強固なのですね。

◎セックスをするメリットって?

 そして、カラダ作りをしている自分が大好き!系な人たちの愛読誌『Tarzan』最新号も「性〈SEX〉学」と銘打って総力特集しています。『an・an』と同じ出版社から発売されている雑誌ですが、こちらは「自分史上最高のセックス~」「愛されるセックス~」的ふわっとしたイメージは求められていません。理屈と理論と実証とでカラダのことを徹底的に知り、そのうえで実践したい! というリアリストたちのための雑誌は、セックスをどう切り取るか?

 最初に結論をいいますと、同誌では「事前に知っておきたいこと」とザクザク出会えます。

 いえ、ツッコミどころも多々あるんですよ。たとえば、「すればするほどモテる!? モテ・スパイラルの謎を追え!」という漫画仕立てのページ。ここでは、『an・an』よろしく「セックスをするときれいになる」が議題にあがっています。「セックスする → 女性ホルモンが増える → きれいになる」は華麗に否定されましたが、それでも女性ドクターが「きれいになるセックスはある」と主張。そのためには、「愛する人と行うのが絶対条件。でないとオキシトシンもオーガズムも得られません」ってさ~~~~~。

 私、力が抜けてしまいました。マガジンハウスはどうしても、愛とセックスとは不可分のものと考えているようです。愛がないセックスでもオーガズムはあります(キッパリ)。愛と女性美とセックスをひとつの箱に詰め合わせて押し売りする、これはマガジンハウスのお家芸なのでしょうか?

 先週のコラムで私は「男性向けメディアで『セックスでかっこよくなる』というフレーズを見たことがありません」と書きましたが、なんと! ここで出会ってしまいました。断言は避けていますが、「セックスする → 男性ホルモンが分泌される → モテる!!」と匂わせています。ここでは「セックスするメリット」に光があたっていますが……メリット、必要ですか? セックスして気持ちよかった、パートナーといい時間を過ごせた、場合によっては子どもができた、それだけでいいじゃないですか。「セックスすると女はきれいになるんだって!」「男もモテるようになるらしい!」「やっぱセックスっていいよね~」って、どんだけの人の共感を得られるの? 心から疑問です。

 上記のお家芸以外にも大なり小なりのツッコミどころはあります。が、おおむねはセックスについて「事前に知っておきたいこと」がたくさん詰まっています。たとえば、男女における性反応の違いや、そのときにカラダで起こっている変化。男性の海綿体が平常時と勃起時でどう違うか、または、女性の愛液はどこから出てくるかなどが詳細に図解されています。そんなの知らなくたってセックスできるよ、と思われるかもしれません。たしかにそうでしょう。でも、「正しく刺激すれば、正しい反応が得られる」と知っておくことは、非常に重要です。

◎都合よく愛を持ち出す人たちへ

 女性のカラダがまだ興奮気にも入っていないのにぐいぐい強引な愛撫しても、心身がついていかない……男性だけでなく、女性にも必要な知識です。身体のメカニズムを知らないがゆえの、間違った愛撫では気持ちよくなれないということが、世の中の男女に常識レベルで浸透してほしい。

 というのも、こういうときにかぎって「愛していれば、どんな愛撫でも気持ちよくなれるはず」と、都合よく愛を持ち出す輩がいるからです。だから私は愛とセックスを切り離して考えたいし、同誌のように淡々とメカニズムを伝えてくれる記事に安心するのです。悩み相談のページでも、回答者が“カップル間のコミュニケーション”に言及することはあっても、“愛”を持ち出すことはありませんでした。愛という実態のないものがセックスにおいて具体的に役立つことって、実際はあまりないのではないでしょうか。

「セックスにまつわるびっくり世界珍記録」「読む秘宝館! 歴史と記録で知るセックス古今東西」「これぞ生命の神秘! 動物のセックス、8つの深イイ話」など、性に関する雑学もたっぷり。私たちの性生活にすぐに還元されることはなくとも、単純に面白いトリビアの連続で、特集を最後まで興味深く読めました。セックストークのネタとしても打ってつけですしね! シモネタではなく教養に裏打ちされたセックストーク、楽しいじゃないですか。そのヒントをじゃんじゃん提供してくれる『Tarzan』、とてもお得感がある1冊でした。

■ 桃子
オトナのオモチャ約200種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。

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