「すべての女よ、悪女であれ!」――女性誌による悪女像の系譜

◎うちなる「悪女」への憧れを解放せよ!

「悪女」はもともとネガティブなイメージで語られがちだったが、「美人は得」の価値観が社会に蔓延した結果、目指すべき女性像として一部から羨望を集める存在となった、というのが前回までのお話。くどくどと語ってしまったが、「わたし、悪女だから」と言われた場面を想像してみてほしい。「さぞや、おモテになるんでしょうね」と思うはずだ。つまり、「悪女」という言葉は、美人やモテの象徴として現在では流通している。

では、「悪女」は女性ファッション誌や週刊誌などで、どのように語られてきたのだろうか。ちょっと調べてみるとわかるのだが、「悪女」を特集する雑誌記事は、意外なほどに多い。

ひとつのジャンルとして確立されているのが、前回も紹介した「悪女占い」なるものだ。

『女性セブン』(小学館)2001年2月22日号には、古代ユダヤに伝わるという“カバラ数秘術”によって、自分の悪女タイプを判定できる占いが掲載されている。「悪女」のタイプには、楊貴妃、西太后、クレオパトラ、阿部定などそうそうたる悪女オールスターズが並ぶ。ちなみに著者(男)は、マリー・アントワネットタイプの「悪女」で、「男は超イケメンかお金持ちじゃないと許せず、利用価値がないとわかったとたんポイ捨て」なんだそうだ。

“カバラ数秘術”がなんなのかは寡聞にして存じないが、「あなたに隠されたホントの魅力」という見出しからわかるのは、「女ならば、誰もが悪女の要素を持っている」との考え方が前提にあることである。同ページに美容整形の広告が載っているのが、なんとも趣深い。

『JJ』(光文社)2002年10月号の「悪女占い」は、質問に答える形で悪女タイプを芸能人の性格別に判定できる。叶恭子、神田うのといった誰もが納得できるタイプがいる一方、松嶋菜々子、深田恭子といった一般的には「悪女」のイメージが薄い芸能人も槍玉に挙げられている。美人という理由だけで「悪女」扱いされるのも、ひとつの勲章なのだろうか。

『JJ』の見出しには、「実は密かに憧れちゃう?」という煽りが使われている。「密かに」は、『女性セブン』の「隠された」と同じニュアンスの言葉だ。女性誌でこうしたエクスキューズが用いられるところを見ると、「悪女」という言葉の持つ複雑さを認めざるを得ない。

つまり「悪女」のネガティブな印象に後ろめたさを感じるものの、実は密かに憧れている。しかし、女ならば誰もが「悪女」の要素を持っており、うちなる欲望を解き放つべきだ、ということだろう。「悪女占い」は、そうした潜在意識に気付かせるカジュアルな方法であり、普段は表立って語ることができない「悪女」への羨望をくすぐるコンテンツなのである。

◎つまようじでキスマークを消す70年代の悪女

『女性セブン』2013年3月7日号では、「悪女シリーズ」などの作品で知られる作家の越智月子がインタビューに応えている。いわく、「女性は誰しも心のどこかで悪女に憧れている」「女同士って、パッと一目会った時から、“この人にはかなわないな”とか“この人より勝っている”みたいなものが直感でわかる」のだとか。女同士の間でパッと一目会った瞬間に、格上か格下かの判断が下され、「悪女」は戦闘力が高い格上の女として扱われる。

ならば、女性誌が提唱する格上の「悪女的な生き方」とはどのようなものなのだろうか。「性と愛のあらゆる場面で、すぐに役立つ ちょっぴり悪女の悪知恵21章」と題された『女性自身』(光文社)1974年5月25日号の記事は、時代が古いだけにかなり笑える内容だ。

まず、当時は保守的な家庭が多かったせいか、「悪女」のための親対策が紹介されている。外泊を承知させる方法のほか、「鍼の代わりに、つまようじで周囲をチクリチクリ。1日2回ずつ」などといった、本当に効果があるかどうかわからない謎の「キスマークの取り方」が指南される。加えて、乱れたあとの化粧法として、「黒砂糖入りパック」なる怪しいものの作り方まで掲載。砂糖は喫茶店のシュガーパックでもいいというから安上がりだ。そもそも、実家に住み、親の目を気にしている時点で、ずいぶん行儀のいい「悪女」である。

さらに、男への対策として「処女のふりをする方法」という悪女ハック(?)が紹介される。親と男の前では清楚で通すことが、当時の美徳とされていたのだろうか。ここでの「悪女」はあくまで内面的なものであり、おおっぴらに解放させるものではないことがわかる。

一方、時代が進んで『週刊女性』(主婦と生活社)1988年4月26日号では、もう少しオープンな悪女像が提示される。浮名を流した当時の人気女優たちを紹介し、「色白で肌をぜったいに焼かない」、「ストレートか大きなウエーブのロングヘア」、「ダイヤのピアスをさりげなく」、「シャネルのバッグ」「1足3000円のストッキング」といった悪女像をイラストで紹介している。「美人でなけりゃダメ。ブスだったら、ただの性悪女!!」と手厳しい。

「HOW TO 悪女」というコーナーでは、恋愛と結婚は別であり、「恋の相手はハンサムで遊び上手なカルイ男、結婚するのは金持ちで尽くしてくれる男」。さらには、「男の数だけ資産を増やす」「目的別に男を作る」「男のライバル意識を利用する」といった言葉が並ぶ。

同じく『週刊女性』による2015年2月24日号の特集「男を惑わす悪女のテクニック」は、かなりあけすけだ。「男を本気にさせ、意のままに操り、金を貢がせる」方法を、歴史上の悪女から学ぶ内容となっている。「男を惑わす女=悪女」が特集の定義になっているようだ。

美しさ、性的魅力、自己演出力、社交スキルといった「エロティック・キャピタル」をフル活用し、男をゲットして利益を得る。女に生まれたからは、うちなる悪女性に目を向け、それを上手に利用しない手はない。それこそが悪女的な生き方だ、ということだろうか。

◎『an・an』が提唱する強い悪女像

これらの悪女像に共通点して見られるのは、男性中心社会を前提としていることだ。社会が男を中心に回っているなら、その前提を逆手にとって世の中を上手に渡っていけばいい。悪女にしてみれば、男なんてチョロいもんである。だから、過剰な「逸脱」はしない。既存の社会から逸脱してしまったり、壊したりしてしまっては「ハック」にならないからだ。

「男から利益を得る」という発想は、「男が利益を独占している」ということの裏返しにほかならない。それに対するレジスタンスとして、悪女的な生き方が提示される。「利益をこっちにもよこせよ、おら!」というわけだ。つまり、「男が利益を独占している社会構造」の転覆を狙うのではなく、あくまで既存ルールの隙をついた、ゲリラ的な局地戦を仕掛けている。男からの眼差しを内面化し、それに過剰な抵抗をしない作法だと言えそうである。

もちろん、こうした悪女像に対して反感を持つ者もいるだろう。「悪女」なら男からの眼差しを気にせずに、もっと強く生きるべきだ。男に媚びる必要なんてない、と。そのような強い悪女像を打ち出してきた雑誌の一つに、ご存知、『an・an』(マガジンハウス)がある。

1986年4月18日号では、「少し 悪女の 感覚。」という特集で、当時の現代的な「悪女」のライフスタイルを、外国人モデルを起用したフォトグラビアとともに紹介されている。

「仕事を早めに終えて、化粧室で素早く変身。6時きっかりに、いい顔でオフィスを出たいから」

「上司にチクリと言われても平気。その分、昼間はテキパキ、無駄口なんかしないで、人一倍働いているって自信を持って言えるから」

「男に独占されたくないし、ちやほやされるのもまっぴら。好きな男がこっち向くと、急にプイッと無視したくなることもよくある」

「男のために料理をしない、そんな女になる」

「ブーブー、とクラクションの音。2回だけしか鳴らさないでね、と私の言いつけを守る彼を罰として15分待たせる」

「5つ星のホテルのダブルとシングルの2つの部屋。シングルは私の名前で予約する。(中略)その気にならなければ、彼を置いて帰る、そんなこともできるように私だけの部屋をいつもリザーブしておく」

「男と一緒に朝を迎えない」

なんとも、ずいぶんな「悪女」である。クラクションのくだりに至っては、なぜ言いつけを守ったのに、罰として15分も待たされてしまうのか、わけがわからない。しかし、おそらく伝えたいメッセージとしては、「男の眼差しに絡め取られるな」ということだろう。

また、同号では、「私なら、こんな悪女になりたい。」というコーナーもあり、女優や作家が自身の悪女像を披露している。女優の秋吉久美子は、男の前で、そそるようなポーズを取るような「悪女」を「いわば日帰りコースの悪女」と批判し、「本当の悪女ならば、男の眼を意識なんてせずに、自分の世界で生きているはず」としている。さらに、1998年8月7日号では、作詞家・プロデューサーの秋元康が「普通の女の子って、これはいけない、あれもルール違反だとかいって、気持ちや願望を押さえ込んでしまう。(中略)魔性の女はそれと正反対のことをしているから目立つ、だからモテるんですよ」と自説を述べている。

男に媚びるのは、「日帰りコース」の甘ちゃん「悪女」であって、本格派は違う。男の眼を意識せずに、我が道をいくのが本当の「悪女」なのだ。しかし、なぜ「自分の世界で生きる」ことが悪なのだろうか。やはり、ここにもなにか抑圧的なものを感じざるを得ない。

つまり、これも男性中心社会の転覆を狙ったものではない。構造を無視する。無化する。男性中心の構造をないものとして扱って、自由に生きる。しかし、根本的な問題とは対決せず、構造そのものは別の場所で温存されたままなのである。「悪女」に、男性中心社会の転覆を狙う「革命型」、男の眼差しを内面化する「順応型」、男の眼差しを無視する「逃避型」の3タイプがあるとするならば、後の2タイプが女性誌の推す悪女的な生き方なのだ。

悪女性の解放は、ほどよくが一番。これが女性誌のたどり着いた、現代的な悪女像である。

今、あなたにオススメ



サイゾーウーマンのSNS

  • 「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

関連リンク

アクセスランキング

  1. 「オワコン女優」認定の3人は?
  2. 「二度と仕事したくない」勘違い女優
  3. 狩野英孝の“最もヤバいウワサ”
  4. 狩野英孝事務所、無慈悲な対応
  5. 袴田吉彦の不倫相手が売名活動へ
  6. 日7対決“敗北しそうな番組”ランキング
  7. 嫌われている“歌姫”3人を大暴露
  8. ムショ飯はうまいのか?
  9. 狩野英孝、淫行報道で引退の危機
  10. 『東京タラレバ娘』はミスキャスト?
  11. “もう終わった”イケメン俳優3人
  12. “消えたAKB48”河西智美は今
  13. 工藤静香インスタで“におわせ”?
  14. 違法ギャンブルにハマる危険な芸能人
  15. 新春ジャニオタ放談
  16. 「仕事をしたくない」嫌われ者タレント
  17. 篠田麻里子、「老婆のように」劣化!!
  18. 薬丸裕英から家族すらも去った?
  19. 若い男を恋愛対象にするのをやめたい
  20. 狩野英孝「圧力一切ナシ」の裏側

ジャニーズの人気記事

  1. 新春ジャニオタ放談
  2. SMAP・中居が熱愛報道に渋い顔
  3. 葵つかさ「松潤の相手」表記にクレーム
  4. ジャニーズ事務所がひた隠すV6の真実
  5. 藤ヶ谷太輔、破局劇に大ブーイング

カルチャーの人気記事

  1. 恋愛に浮かれられない「GINGER」のサガ
  2. 他人の記事をパクるのはこんな人
  3. 逮捕された元警部が語る覚せい剤と刑務所
  4. 「捨てられる妻」の典型とは?
  5. ノンケが「レズ風俗」に行ってみたら

海外ゴシップの人気記事

  1. C・ブラウン、『DB』の痛車でデートへ
  2. マライアが“バツ2”自虐ギャグでノリノリ
  3. ケイティ、年末年始に日本を堪能
  4. トランプ就任式はしょぼくてもOK!
  5. リアーナ、J. Loをアンフォロー