[女性誌速攻レビュー]「CLASSY.」9月号

ぺたんこ靴の着回し企画の設定で、秘技「もしかして妊娠!?」を持って来た「CLASSY.」

2016/08/14 16:00

■シリアスを一瞬でコメディにする着回し企画の恐ろしさ

 キラーコンテンツといえば、着回し企画も大変おかしなことになっていました。「デイリーブランド×ぺたんこ靴で8月の着回しDiary」の初日シチュエーションがヤバイ。洗面台に寄りかかり、口に手を当ててうつろな目……「なんだか気分が悪いし、お腹が痛い気がする。まさかこれがつわり!? もしもに備えてぺたんこ靴にはきかえることに…」と、唐突な妊娠疑惑からスタート。

 交際9年目の売れないミュージシャンとは一向に結婚の話は出ずやきもきするこちらの女性。「さっそく最近ママになった先輩に相談しに行く」「信号が点滅し始めたけど無理な動作は禁物」「街中のチビッコたちにもつい目が行ってしまう! これも母性本能ってやつかな?」と、1人気を付けたり盛り上がったりしていますが、まずその前にやることがあるのでは……病院行けや!!
 
 結局、妊娠検査薬を買いに行ったのは、冒頭の「オエ~」から3週間後のこと。しかも結果は陰性。しかし彼女の妊娠騒動により目を覚ましたのか、売れないミュージシャンは最終日に「新曲『家族になってよ』を歌いながらのプロポーズ! 嬉しい! ありがとう! 一緒に幸せになろうね」。なろうね……じゃねぇわ! 「結婚前に妊娠してしまったかもしれないアラサー女性の戸惑い」を表現しようとしたのでしょうが、着回し企画を支配する病的なまでのお気楽ムードがそれを完全に打ち消し、ただただ戸惑ったのは読者だけなのでした。

■サラっと失礼なネーミング「4低男子」

 さて、続いて紹介しますのは「いま、結婚するなら“4低男子”!」です。先月号では“量産型女子”、そして今月号は“4低男子”を掲げる「CLASSY.」……嫌な予感しかしません。「結婚するなら自分より高学歴・高収入なイケメンがいい! と夢見ている婚活女子のみなさん、『いい人がいない…』の原因は高すぎる理想のせいでは? 実際、結婚して幸せをより実感できるのはハイスペック男子ではなく“4低男子”なんです!」とリード。

 「CLASSY.」のいう“4低男子”とはもちろん収入や身長のそれではなく、「低リスク(とにかく安定を好み、一定の生活基準を保てる)」「低姿勢(基本的に女性に優しく、妻の意志・意見を尊重する)」「低燃費(クーポン券やスタンプカードを嫌がらずに使う倹約家)」「低依存(一人暮らし経験があり、料理・掃除・洗濯など身の回りの家事は一通りこなせる)」という、ミラターボ(ダイハツ)みたいな男性のことを指すようです。

 しかし婚活女子たちは言うでしょう。「ハイスペックじゃなくていい、普通の人でいい」と。それを「高望み!」と一喝するのはおなじみ恋愛の専門家(今回は戦略コンサルタント)。「『尊敬できる』『面白い』女性にそう感じさせるには実はかなり高い教育レベルや知性、経済力を持ち合わせていないと魅力的には映らないから」「婚活の第一歩は自分の要求が高いことを自覚すること」「ハイスペック男子は、経済力もあり話し上手だからモテる。そんな人を自分一人に繋ぎとめておける気がします?」と畳みかけます。

 タバコも酒も好まず、家事全般得意で、女性に優しく、家族を大切にする。「ハイスペック男子」よりゲットしやすい「4低男子」に目を向けろということですが、実際こんな男の人……おらへんで~。結婚、理想、幸せを細かく突き詰めるほど、ゴールから遠のいていく。「4低男子は結婚への熱量が低い」って、もうそういうことではないでしょうか。結局、ちゃんと自分で生きていくことのできる人間は、結婚に固執しないのでは?

 「4低男子」なるものは、おそらく男性本音座談会で「オレに合わせた格好してきてくれればなんでもいいよ」などと言わないでしょうし、そもそも自分以外の世界にそれほど興味がなさそう。そう考えると、ハイスペック男子のわかりやすさ、容易さがなんだか愛おしいですね。優しいけど結婚に前向きじゃない男子をその気にさせるために「私……妊娠しちゃったかも」ができるかどうか、図々しさと底抜けの陽気さが結婚への道を開くことをまさかの「着回し企画」で悟ってしまった今月号の「CLASSY.」でありました。
(西澤千央)

最終更新:2016/08/14 16:00
CLASSY.(クラッシィ) 2016年 9月号 [雑誌]
妊娠しないとぺたんこ靴履けない、「CLASSY.」読者の闇が露わに……
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