嵐よういち×ルーカス B.B.対談

リオは危険なだけじゃない! 旅行通が語る、世界中の人を惹きつける魅力とは?

2016/08/05 15:00
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嵐よういちさん

 8月5日、ブラジルでついに開幕する「リオデジャネイロオリンピック2016」。204 の国と地域から参加するトップアスリート1万500人がメダルを競う同大会、4年に1度のスポーツの祭典を心待ちにしていた人も多いのではないでしょうか。その一方で、ジカウイルスの問題や、ひったくりや盗難など多発する犯罪、さらには警察官のストライキなどが報道され、開催国の現状に不安を覚えた人も多いかもしれません。

 すっかりマイナスイメージが浸透してしまったリオですが、実は世界有数の観光地でもあります。そんなリオに惹かれてやまないという2人、これまで世界81カ国を巡り、ブラジル渡航歴を多数持つ旅行作家の嵐よういちさんと、地上で読む機内誌をコンセプトにした雑誌「PAPERSKY」編集長ルーカス B.B.さんに、知られざるリオの魅力や、ほかの都市にない面白さを教えてもらいました。

■状況が悪くても“なんとかなる”というブラジル人

――まず、お2人は、ブラジルのどんなところに魅力を感じられたのですか?

嵐よういちさん(以下、嵐) ブラジルの“人”ですね。日本人には考えられないくらい、「明日のことはどうでもよくて、今がよければそれでいい」という、めちゃくちゃさがある。こんな人たちがいるんだと驚きました。

ルーカス B.B.さん(以下、ルーカス) 僕も同感ですね。ブラジルはとても楽観的な人が多い。僕が「PAPERSKY」の取材でブラジルに行った時も、大統領への抗議デモをやっていたのですが、行進しながらぺちゃくちゃおしゃべりしているんです。デモって深刻な雰囲気でするものですよね。でも、彼らはまるでサッカー観戦に来たみたいな陽気さだった。状況がどんなに悪くなっても、“なんとかなる”という考えなのかなと。

 素直だし楽観的なんですよね。たとえば、ブラジルの女性は全員と言っていいくらい、お金とセックスが大好き。どんなにかっこいい男でも、お金を持っていない奴はモテない。だから男性も、お金がなくても、遊びに行く時はパリッと無駄にアイロンがかかった服装をしてるんです。セックスは、単に気持ちがいいから好き。実に率直で正直な人たち。僕は好きですね。

――オリンピックを目前に控えて、特にリオの治安の悪さも取り沙汰されていますね。

ルーカス 実際、行くまでは本当に怖かった。幸い僕は何も被害に遭わなかったんですが、事前にリオに行ったことがある4人くらいの人に聞いてみたら、皆スリや強盗に遭ったようです。

 僕はブラジル全土に行ったわけではないのですが、日系の方などからお話を聞くと、のどかな地方ですら、強盗に結構入られることがあるようです。息子が目の前で銃を突きつけられたことがあるという人もいて、その体験が今でも忘れられないと言ってましたね。田舎は貧しくて、警察もゆるいので、こういう事件は頻繁に起こっているようです。

■旅行会社が企画する「ファベーラツアー」がおすすめ

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ブラジル裏の歩き方』(嵐よういち著、彩図社)

――少し前までは、ブラジルは景気がいいと言われていたと思うのですが、やはり貧富の差が激しいのでしょうか?

 確かに給料は上がっているようですが、それ以上に物価が上がっているので、貧しい階層の人たちにとっては、景気が良くなったということは感じられないみたいですね。良くなったのは、一部の金持ちや中産階級の人たちです。そのため、貧富の差がますます広がっていくばかり。貧しい人たちと裕福な人たちとの溝が深く、そのことが犯罪の温床にもなっている。警察官もちゃんと給料をもらっていないので、不満があり、仕事に真面目に取り組めていないようですね。

ルーカス ブラジルでは、階級によって命の値段が違うと思うんです。それは、とても悲しいことです。

――リオをはじめブラジルの大都市には、ギャング抗争が絶えないといわれるスラム「ファベーラ」が点在していますよね。このファベーラが犯罪の温床になっているのでしょうか?

 そうですね。ファベーラはある意味一つの自治体であって、それを仕切っているのは、いわゆるギャンググループです。ただ、ファベーラもかなり危険な区域から、それほどでもないところまで、いろいろあります。そういえば最近は、旅行会社が比較的安全な「ファベーラツアー」を企画していますね。僕も参加したことがあるんですけど、ホテルなどで申し込めて、たぶん日本円で5,000円くらいなので、そこまで高くもない。目立たない格好で行けばまず大丈夫で、危害を加えられたという話はあまり聞かないのでおすすめです。というのも、ここに観光客が入る時、危険な目に遭わないようにギャングが守ってくれる。危害を加えるようなやつがいれば、そいつには死の制裁が待っているので。

ルーカス ファベーラっていう場所は、面白いことに貧困窟でありながら、山の手に作られていて、結果そこは見晴らしの一番いい地区なんですよね。

 普通、世界中どこの国でも大体金持ちが高い土地に住み、貧乏人が低い土地に住むっていうのが常識ですが、ここは全く逆です。というのも、もともと19世紀末に「カヌードス戦争」という戦いがあって、任務を解かれた兵士が大都市に流れ込んだのですが、土地がないので仕方なく丘の上を貧しい人たちに提供して、自治区が誕生したからなんだそうですよ。

PAPERSKY no.50 - RIO DE JANEIRO Bossa Nova
危険と美が混在
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