一ノ瀬文香の「夜のお店で働いてみた」レポート

新宿二丁目の女装バーは女性も入りやすい【一ノ瀬文香の「夜のお店で働いてみた」レポート】

2016/08/03 15:00
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一ノ瀬文香です

第1回 女装バー「女の子クラブ」

 女のコ大好き! そして新宿二丁目大好きなタレント、一ノ瀬文香です。

 夜の街には、SMバーやニューハーフバーなど、行ってみるにはちょっと勇気のいるお店がいろいろありますよね。そういう個性的なお店がどんな世界なのか、興味はありませんか? そこで私が実際に働いて、従業員目線とお客さん目線の両方からレポートします。

 今回紹介するのは新宿二丁目にある女装バー「女の子クラブ」。もともと私がお客さんとして楽しませてもらっているお店です。従業員は全員、女装男子(一部、心が女性や中性のコも含む)です。

■店内はピンク色でいまどきの女装のコだらけ

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ピンク色の店内

 お店の入り口を開けるとまず、広めの店内を染めるピンク色が目に飛び込んできます。ソファーもカウンターのイスまでも全てがピンク。そこに、可愛く着飾った娘たちが座って談笑しているのです。中に足を踏み入れると、自分がまるでラブリーなお人形ハウスの中に入ったような気分になります。

 娘たちはみんな、女装した男子のお客さん。「女装」というと、青々としたひげ剃り跡に過剰に派手な化粧……という人を思い浮かべる方も多いと思いますが、「本当にみんな男子なの!?」と驚くこと間違いなし。“男の娘”(おとこのこ)とも呼ばれるいまどきの女装男子たちは、ツルツルに手入れされた肌に、トレンドの化粧やファッションで身を包んでいて、少女漫画の中に出てきそうな可愛い娘さんたちが多いのです。

 ちなみに女の子クラブは誰でも入れるお店ですが、お客さんの7割以上が女装男子。残り3割は腐女子や可愛いコが好きなバイセクシャル女性も遊びにきています。年齢層はさまざまですが、数ある二丁目周辺の女装バーの中では20代前半の若い女装男子の割合が高い印象ですね。

 私が女の子クラブで働くことになったきっかけは……お店のママに「働いてみない?」と誘ってもらったため。「女装の従業員しかいないお店でなぜ?」と思いますよね(笑)。理由は、水商売経験があることと「女装男子に溶け込んでいる」から。顔と男性的と言われるサバサバトークから「元男性? 」と疑われることがたびたびあり、女装男子たちに溶け込んで会話を楽しんでいるからです。

 店内にいる女装男子のクオリティが高いため、女子の中でも顔が卵型~面長型で濃いめの顔立ちのコが女の子クラブに来ると、「クオリティの高い女装男子」と間違われる可能性あり。トークがサバけていたり声がハスキーだと余計にその確率は上がります。お店に来ている女装男子たちは、普段よりも子ども心を出してキャッキャ無邪気な会話を楽しんでいるコが多いので、その中に溶け込んで学生に戻ったような気分を味わうこともできますよ。

■手ぶらで女装できて、メイク道具も使い放題

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無料で使い放題の衣装とメイク道具

 ママから誘ってもらって、「面白そうだから1日だけ働いてみたい! 当日、人手が足りなそうな時にでも声かけてほしい」と答えておきました。すると、本当にとある日の夜に「今から働けない? 」と連絡が。タイミングが良かったのですぐに行きました。しかし、その時の私はスッピンにジャージ!  従業員としては明らかにマズイ格好……。

 でも大丈夫! 女の子クラブには、無料で貸してくれる洋服がたくさんあるのです。さらにウィッグやカチューシャなどの小物もあり、豊富なメイク道具まで無料で使い放題。女装男子たちが気軽に女装を楽しめるようにというサービスなのですが、お客さんなら誰でも、もちろん女子も利用できます。ということで、私もお店の衣装に着替えてさっと身支度を整えてから働けました。

 このように女の子クラブは「手ぶらで女装ができる店」なので、仲の良い男子を一緒に飲みに連れていって女装させるという楽しみ方もあり。新たな思い出づくりや、男子の新たな魅力開発にいかが!?

■話したい従業員には飲み物を勧める

 この日は水曜日だったのですが、週末並のにぎわい。慣れた従業員のコが急遽、病欠になった関係で、ママと新人のコ1人しか従業員がいなくて、私にお呼びがかかったわけ。ママはお客さんたちをさばいており、新人のコはカウンターの中で洗い物をしていました。

 とりあえず、お客さんのテーブルの上をキレイにしようと片付けていると、また新たなお客さんが数人のグループで入ってきました。

 「いらっしゃいませ! 新人のいっちぃーです! 今日、初めて出勤なんですぅ~」と、わざと裏声で可愛いらしくご挨拶。するとお客さんの1人が「へぇ、新人なんだ~。でも(二丁目のことをよく知っている)玄人でしょ? しかも純女だよね? 俺たちとりあえずビールにするけど、君も何かどうぞ」と。私のこなれた感じの挨拶や雰囲気から“玄人”と言われ、“純女”(生まれたときから女性の体の人のこと)という女装界の専門用語を使われ、そして私にも飲み物を勧めてくれたことから、「玄人客」だとわかりました。従業員はお客さんから飲み物をいただいたら、飲んでいる間はそのお客さんと会話するのが基本。会話でお返しするのです。

 飲み物を用意し、乾杯して少ししてから、ママがやってきました。するとお客さんはママにも飲み物を勧めます。他にもお客さんたちがたくさんいるのに従業員が2人固まっているのはよろしくないので、ママの移動に合わせ、私はママがいないテーブルを回っていくことにしました。

 「ほかのテーブルの片付けをしてこなきゃなので、残っているドリンクはまた後で飲みに来ていいですか?」と私が言うと、そのお客さんは「仕事しておいで」と優しく送り出してくれました。従業員に対して気遣いをしてくれるお客さんは、従業員から好かれます。仕事とはいえ、従業員も人間だから感情は入るもの。また、ほかのお客さんからも好かれますね。直接本人に言わなくとも、「あのお客さん、飲み方がキレイだね」とほかのお客さんが従業員に話してくることがあります。お客さん同士も見ている人はよく見ているのです。

女装と日本人 (講談社現代新書)
女装にもいろんな形がある
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