実は「何を見ても一緒」じゃない!

大沢たかおの怪演に、クマとの格闘シーンも! 絶対見るべき、スティーヴン・セガール出演作5選

2016/08/21 17:00

■『沈黙の要塞』(1994) 

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 記念すべきスティーヴンの単独監督デビュー作であり、極寒のアラスカが舞台となる大作。「石油会社の火災事故の拡大を食い止めた消火技師フォレストが、事故の真相を調べるうちに石油会社の陰謀を知る。悪徳石油会社に命を狙われたフォレストは、彼らに迫害されているイヌイット族に命を救われる。しかし族長が殺害され、フォレストは敵討ちを誓い、石油会社を破壊する。そして、最後に環境保護国際会議に出席し、石油会社の陰謀を暴き、環境保護の大切さを訴えるスピーチを行う」という物語。「巨大企業の陰謀に立ち向かい、私利私欲にまみれた石油会社の社長との戦いを通して、民族問題、環境保護を訴える」という壮大な筋書きを掲げているが、本作もスティーヴン1人が大活躍するワンマン・スタイルである。

 全体を通して、銃撃やど派手な爆破シーンが多いが、酒場で鬱憤を晴らすかのように、下っ端の石油作業員たちを華麗に次々と倒すシーンは痛快。消火技師なのに山小屋に大量の爆弾を持っていること、大爆発に巻き込まれるがピンピンしていること、社長を殺しても逮捕されないことなど不可思議な点はあるが、これもお約束のように全て問題にはならない。過去の経歴は明かされていないが、『暴走特急』で演じたケイシーがテロリストたちに恐れられていたように、今回の役も石油会社の社長に恐れられており、ハードボイルド好きな男性たちの心をくすぐる。

 B級映画ファンの間では、本作品の最大の見どころは、「スティーヴンVS熊のファイティングシーン」といわれている。「イヌイット族に魅せられた、スピリチュアルな物語」という設定なのだが、無敵のスティーヴンもアラスカの巨大熊には勝てず、川に投げ込まれてしまうのだ。流れ着いた洞窟では全裸の女性がベッドへ誘うというお色気シーンもあったが、硬派な男の意地を見せ、打ち勝っていた。

 なお、社長役を演じたマイケル・ケインは後に、「仕事が激減し、必死になってた時期があってね。そんな時、セガールの『沈黙の要塞』にオファーされ、出演した。セガールもスタッフも素晴らしかったけど、とんでもない駄作でねぇ。おまけに極寒の地なんかで撮影して。どんなに落ちぶれても、もう二度とこの手の映画には出ないと誓ったね」と回想。脇役のマイケルに駄作と言われてしまった本作で、スティーヴンはゴールデンラズベリー賞の最低監督賞を獲得している。

 環境保護がテーマであるわりには、「ほかに選択肢がない」と派手に建物を爆破し、環境を破壊した挙げ句、最後に環境汚染を繰り返す企業に対して、偉そうに説教をかます傍若無人っぷりも味わい深い。

■『イントゥ・ザ・サン』 (2005)

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 1974年の映画『ザ・ヤクザ』のリメイクで、スティーヴンの日本語が堪能できる作品としてマニアの根強い人気を誇る『イントゥ・ザ・サン』。スティーヴンが演じるのは、東京の下町育ちで刀剣屋を営む在日CIAエージェントという役。FBIとCIAが、東京の新旧ヤクザ、アジアマフィアの争いに介入するという無理がある展開なのだが、あくまで「スティーヴンが斬って斬って斬りまくる、痛快人情アクション映画」なので、辻褄の合わない展開だろうと、察することができる。

 そんなB級ハリウッド映画なのに、寺尾聰、伊武雅刀ら日本の大物俳優が出演。新興ヤクザの親分役を演じた大沢たかおに至っては、これまで演じたことがないような、狂人じみたキャラをハイテンションで熱演している。スティーヴン主演映画は、彼とその他大勢となることが多い。しかし本作では、日本人の脇役たちは、ハリウッドが描く日本に戸惑いをにじませつつも、それなりの味を出すことに成功したのである。

 注目すべきスティーヴンの日本語だが、「どないナッテンねん」「ナンヤ、これ」と大阪・十三で覚えた大阪弁を駆使して、さらにアクションシーンでも「かかってこい!」「ばっキャロ!」「たたきコロしてやる!」などと、愛くるしいイントネーションを披露。真面目なシーンでは、関西弁と標準語のチャンポンだが、B級とはいえ世界的に名の知れたハリウッドスターがここまで日本語を話すのはうれしい限りだ。

 日本をリスペクトしてか、本作品で使う武器は日本刀のみ。「これ、人斬れますよ」「ねっ! これ、今晩使いますよ」とうれしそうに刀を眺めるシーンや、刀でザクザクと敵を斬るシーンもあり、乱闘の場面では血しぶきまみれとなる。

 ちなみに、ヤクザの下っ端が事務所で見ているテレビには、映画『ガメラ』シリーズばかりが映っていたが、『ガメラ2 レギオン襲来』(96)と『ガメラ3 邪神覚醒』(99)に、スティーヴンが前妻との間にもうけた娘、藤谷文子が出演しているからで、チラッと娘の姿が映るシーンもあり。ある意味、初の親子共演だと話題になった。

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