『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』著者・永田カビさんインタビュー

レズビアン風俗に行ったのは母から自立するため 人間関係に悩んだ漫画家の生きづらさの乗り越え方

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永田カビさん(自画像)

「誰と付き合った経験も 性的な経験も ついでに社会人経験も ないまま28歳になった私は 2015年6月、真っ昼間、レズビアン風俗でおねえさんと対峙していた」

 大学を半年で退学した後、うつや摂食障害などの生きづらさを抱え、親や周囲との関係に悩んでいた永田カビさんが自分の心を深く洞察し、内面をさらけ出した漫画『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)が話題です。pixiv掲載、そして2016年6月に書籍化、発売から1カ月で5刷と多くの人からの注目を集めているのは、レズビアン風俗の体験記という点よりも、自らの困難を克服していく過程のようです。著者の永田カビさんに、出版後の反響や、生きづらさの乗り越え方、漫画を描くことの効果をお聞きしました。

■うつや摂食障害で苦しんだ原因は、母親だけではない

――大学中退後うつを発症したとのことですが、高校時代までは、うつのような症状や悩みなどはありませんでしたか?

永田カビさん(以下、永田) 困ったことはあったのかもしれませんけど、悩みを自覚することはなかったですね。高校時代は普通科がない美術学科の学校だったんですが、似たような趣味の子が多く、話も合って楽しかったです。

 高校では座学の時間は少なく、実技が多かったです。デッサンの授業が一番好きでした。コース選択では、デザインとか美術とか工芸とかに分かれていくんだけど、私は油絵と彫刻を選んで、彫刻では大阪府高等学校美術・工芸展や大阪府高等学校芸術文化祭で賞がもらえたりして、良い思い出が多いです。

――漫画家として活躍する以前の高校時代に、自分の作品をたくさんの人に見てもらう喜びをすでに感じていたのですね。

永田 そうです。

――大学生活は、どのようなことに苦しみを感じましたか?

永田 大学では「この時間はデッサンしましょう」などとはっきり決まっていない、時間の縛りが緩い中でやっていく感じだったんですが、周りの人たちと、なんとなく気が合わなかったんですよね。高校時代と何が違ったんだろう……同じように絵を描きたい人たちが通ってきているはずなのに、居場所がないと感じてしまいました。

――『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』の中で、田房永子さんのコラムを読むシーンがありますが、田房さんが『母がしんどい』(KADOKAWA)で描かれたように、永田さんがうつや摂食障害で苦しんだ原因は、母親との関係からくるものだと思われますか?

永田 母が原因としてあるかどうかって聞かれると、絶対あるんです。だけど、それは母が私の一番近くにいたからということで、母だけが原因だとは思っていません。夫や姑と同居しているという母の状況や、母が育った環境、母親のさらに母親、つまり祖母の育ち方、そういう影響がずっと積み重なっていて、私に向かう抑圧の「矢印」の一歩手前が母親だったってことだと思っています。

――お母さんと娘の間がうまくいってないと、おばあちゃんが間に入ってくれたり、反発からおばあちゃん子になったりということもあると思うのですが、永田さんの場合、そういうことはなかったのですか?

永田 なかったですね。おばあちゃんとは、あまり話をしませんでした。

■高校時代の友達との付き合いが原動力に

――本書の中ではアルバイトや就活を繰り返したり、本やインターネットでヒントを探したりと、試行錯誤しながら生きづらさを解消しようとする様子が描かれていますが、その過程で一番影響力のあったものは何ですか?

永田 漫画に描いたように、ここ数年は、本やネット記事、就職活動で出会った人の言葉に影響されることが多かったのですが、大学をやめてすぐの頃に心のよりどころとなっていたのは、当時まだ続いていた高校時代の友達との付き合いでした。高校の頃は友達と「高校を出たらデザイナーになりたい」など、将来の夢を持って一緒に勉強し、卒業しました。だから「私も夢をかなえないと悔しい」という気持ちがあって、それを原動力に立ち直ろうとしたんです。

――ネットや本・雑誌などから情報を得て、自分の心の状態を探ったり、その情報を参考に問題を解決しようとする中で、特に役立った情報は何ですか?

永田 漫画で本を読んでいるシーンがありますが、集中力を持続させるのが苦手で、あまり本を読むのは得意ではなく、ネットで調べることが多かったですね。

 今から10年ほど前、大学を退学した頃は、病気についてネットで調べようと検索すると、個人の闘病ブログがヒットすることが多かったです。そういったものは病気の苦しみなどについては書かれているのですが、専門的な知識によるものではなく、第三者の目を通す編集がされていないので、参考にはしづらかったです。しかし、ここ数年、わかりやすく親切な情報へのアクセスが簡単になった印象があります。

 本を買って読む時は、どのような内容か事前に確認し、厳選していました。書店では、パラパラっと立ち読みして、役に立ちそうと思ったものだけを購入しました。またAmazonで買う場合も、自分が気に入った本だけでなく「この商品を買った人はこんな商品も買っています」と紹介されている本に注目しました。そうすることで、実際に手に取って読まなくても、本のだいたいの内容や傾向を知ることができるからです。

――田房さんの漫画のほかに、BLの同人誌も読んでいたそうですが、どのような漫画が好きですか? 好きな漫画や、影響を受けた漫画を教えてください。

永田 漫画では竹宮惠子さんの『風と木の詩』(中公文庫ほか)、『変奏曲』(マガジンハウス)が好きですね。でも、高校生の頃はよく漫画を読んでいたけど、連載を抱えている今は、読むより描く方に時間を割いています。時々、同年代や年下の人が描いた作品を読んで、面白くてヘコむこともありますよ。

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