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『同性カップルの子どもたち』著者・杉山麻里子さんインタビュー(前編)

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杉山麻里子さん

 2015年6月、アメリカの連邦最高裁判所が、同性婚を「憲法上の権利」と認める判断を示してから、およそ1年がたった。日本でも昨年11月に、渋谷区で「パートナーシップ証明書」の発行、世田谷区では同性カップルを対象にした「宣誓書」を受け付ける制度の導入などが決まり、セクシュアル・マイノリティを取り巻く環境に変化が生じている。

 世界に目を向けると同性婚や同性カップルの権利を保障する制度を持つ国と地域は、約20%におよんでいる(EMA日本の公表による)。そして、そのほとんどは同性カップルが養子を持つことを容認。また、どちらかの精子や卵子を使った体外受精などで子どもを授かるケースも増えている。アメリカでは同性カップルのうち約10万組が子どもを育てているといわれているが、彼らの子どもは“ゲイビー”と呼ばれ、いま空前のゲイビーブームに沸いているという。里親や養子縁組のほか、精子提供や代理出産といった生殖補助医療を利用するケースも増えている。

 アメリカで起きているゲイビーブームは、生殖ビジネスの発展を抜きにして語ることはできない。現状に迫ったルポ『同性カップルの子どもたち アメリカ「ゲイビーブーム」を追う』(岩波書店)の著者である朝日新聞記者の杉山麻里子さんに話を聞いた。

■裕福なセレブの限られた話ではない

――書籍の執筆にあたり、20組以上の家族や関係者に取材をされたということですが、杉山さんご自身の価値観が揺さぶられた家族について教えてください。

杉山麻里子さん(以下、杉山) やはりこの本を書くきっかけにもなった、長男の小学校のクラスメートの一家です。夫の赴任先のニューヨークに居を移した後、息子がチャーリーという男の子と仲良くなりました。彼はクリスとボブというゲイカップルに育てられていて、卵子提供による体外受精型の代理出産で生まれた子でした。

 最初、父親たちに会った時は、「友達か兄弟かな」と思っていたのですが、チャーリーは2人を「ダディ・クリス」「ダディ・ボブ」と呼んでいて、父親2人の家庭であることを、まったく隠そうとしていませんでした。クリスもボブも学校の授業参観やボランティアにも熱心に参加していて、「私の夫です」と互いを紹介するなど、保護者にも溶け込んでいたんです。私はそれまで新聞記者として、里親・養親家庭など多様な家族を取材してきたのですが、ゲイカップルやレズビアンカップルがつくる家庭までは思いが至らなかったので、「アメリカでは同性2人による子育てが、こんなに普通のことになっているのか」と衝撃を受けました。これは、「家族のかたち革命」と言えるのではないか、と。

 また、歌手のエルトン・ジョンが同性パートナーと代理出産で子どもをもうけたということはニュースで知っていましたが、裕福なセレブの限られた話だと思っていたので、身近なところでもゲイカップルが代理出産で子どもをもうけていることに驚きがありました。

■代理母のビジネス化とリスク

――チャーリーの両親が依頼した「代理母」ですが、アメリカではエージェンシーが仲介して、ビジネスとして普及しているそうですね。報酬は2万から2万5,000ドル(約265万円)とのことですが、経済的な理由だけでなく、人の役に立ちたいという動機で志願する女性が多いと。一方で、代理母が出産で死亡する事例も起きているようですが、そのあたりのリスクをどの程度踏まえた上で志願しているのでしょうか?

杉山 代理出産は不妊の異性婚カップルも利用していて、代理出産を扱うクリニックは全米で350前後あり、11年には1,600人近くの子どもが体外受精型の代理出産で生まれています。代理母を志願する人は、これまでの妊娠、出産経験で「かえって体調が良くなった」とか「妊婦でいることが楽しかったし、安産だった」といったケースが多いようです。出産はリスクと背中合わせなので、絶対に安全だという保証はどこにもない、ということは志願者も理解していると思います。

 ただ、通常の妊娠、出産と何が違うかというと、代理母の場合、最近は自分の卵子を使わないことが多いので、他人の卵子と精子による受精卵を懐胎する点です。そのため、たとえば背が低くてきゃしゃな代理母に、背が高くて大柄な卵子提供者の卵子を使った受精卵を移植した場合、すごく大きな赤ちゃんに育って、普通分娩が難しくなることもあります。

 また、受精卵が1つだけだと着床しないことがあるので、妊娠率を上げるために複数の受精卵を子宮に戻すことも少なくありません。そうすると、双子や三つ子が生まれる確率が上がります。多胎妊娠は母胎に負担がかかり、赤ちゃんにも早産などによる健康リスクが高まるので、子宮に戻す受精卵は2つ以内にするなど、業界で自主規制が始まっています。代理母側も、経験者自身がエージェンシーを経営したり、経験者同士で勉強会を開いて注意するべき点などについて情報交換をしたりしています。

――そこまでして代理母を志願するというのは、すごいことですね。とはいえ、高所得の女性が代理母になるケースは少ないということですが、実際のところ、経済的な理由で志願しているというケースもゼロではないかと思います。生殖という領域にビジネスが浸透することで、どのような懸念があるでしょうか?

杉山 お金が目的になる側面も確かにあります。たとえば、代理母の旦那さんに借金があって、その返済に充てたり、報酬で新たに事業を始めたりするケースもあります。また、収入が低い軍人の妻が、家計を支えるために代理母を志願するケースも増えているそうです。ただ、妊娠時や出産後に何か問題が起きては困るということで、貧困層や未成年者はエージェンシーがふるいにかけています。「経済的に安定していて、生活保護を受けていない」ことを条件にしているところが多いです。

 ただ、やはりビジネスが広がれば、女性の搾取につながる恐れや、たとえば小児性愛者などが虐待目的で子どもを買うといったリスクも高まります。里親制度や養子縁組ではホームスタディー(家庭調査)などを通して、親になる資格があるかどうか細かい調査を受けますが、生殖補助医療の場合は基本的に依頼者の犯罪歴調査などは行われず、お金さえ払えばサービスを受けることができるというのは、問題だと思います。

――そのあたりはドライというか、割り切っているのですね。

杉山 個人の権利と自由を重んじるアメリカでは、生殖補助医療に関しても、技術的に可能であれば、リスクがあろうと、倫理的な批判があろうと、個人の子どもを持つ権利を優先させてきました。その分、結果についても「自己責任」という考えが根強くあります。たとえば15年10月に双子を妊娠していた代理母が出産直前に羊水塞栓症で亡くなったのですが、アメリカで代理母が死亡した初のケースとみられるにもかかわらず、メディアで大きく報道されることはありませんでした。もし日本で代理出産が認められたとして、同じことが起きたら大騒ぎになると思いますが、アメリカではあくまで「自分で選んだのだから仕方ない」という捉え方なのかもしれません。

 代理母には、妊娠・出産による心身への負担やリスクがあることは事実で、私自身、代理出産の是非について、答えを出せずにいます。また、誰が生殖補助医療を利用可能とすべきか、どこで線引きをするかというのも、難しい問題です。日本では、先天的あるいは病気で子宮のない人など明らかに懐胎能力に欠ける既婚女性への適用に限って、国内での代理出産を認める方向で議論が進んでいます。

 アメリカでは、異性婚カップルには理由を問わずに代理出産を認めるが、ゲイカップルには認めない、という州もあります。代理出産で子どもをもうけたゲイカップルたちの取材を通して、代理母とも妊娠前から綿密に話し合い、出産後も交流を保ち、「代理母が自分たちの夢をかなえてくれた」と心から感謝している姿を見てきたこともあり、依頼者の性的指向によって代理出産を容認したり禁止したりするのはどうなのか、とも考えさせられました。

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