『ロッキング・オン』元編集長・増井修氏×プロ童貞・山口明氏対談

介護のキーワードは「しのぎ」? 50代男性が語る、年老いた母親を見守る生活

2016/06/22 15:00

■年老いた親のところに詐欺がやってくる

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山口氏

――最近は、40~50代の働き盛りが親の介護を理由に仕事を辞めてしまう、「介護離職」が増えていることが問題になっていますね。増井さんは、『TONE』(ミュージックマイン/2003〜10年、増井氏が編集長を務めていた音楽雑誌)の仕事との兼ね合いは?

増井 介護がヘビーになってきて、季刊を合併号にしてもらって、最終的にはたたむことになった。行政や病院、集落とのやりとりに、1日最低2時間は時間が必要なんだよ。離れていてもそれくらいはやることになる。山口君はずっと一緒の見守り支援だと大変だよね。愛憎半ばする心理戦が一等疲労しますて。

山口 それはどうでもいいんだけど、まず、火の扱いが怖い。それと変な業者がいっぱいやってくるんですよ。

増井 あー、それは来るね。地震詐欺もいっぱいあった。「墓が倒れていたので、直しました」といきなり請求書が来たり、親が健康器具とか、変なものを買って俺がクーリングオフしたり。成年後見人になるといいよ。山口君が親の財産を仕切る決定を裁判所にしてもらうんだよ。勝手に10万円以上のものを買ったら無効。

山口 「オレオレ詐欺」の電話もかかってきたんだけど、「明なんですけど、携帯をなくしちゃって」って。でもオレは携帯を持ってないから、親も詐欺だとわかったみたい(笑)。

増井 これから山口君は俺と全く同じ道を歩むだろうね。両親のどちらかが亡くなると、遺産や遺族年金の手続きとか結構ハード。役所も窓口の時間がきっちり決まっているからね。でも、すごく楽しいよ。バリバリ仕事している気分になる。

山口 でも、これはオレらだけじゃなくて、どんな人にもやってくるじゃないですか。最初、親がおかしいなと思っても、どこに行けばいいのかわからなかった。行政なのか、病院なのか。

増井 ほんと、そうですよね。誰しもが必ず通る道。介護保険制度上の認定をしてもらわないといけないからね。ぽっくり死亡だろうがなんだろうが最後は介護だよ。行政の窓口に行けば、どこかには案内してくれるし、地域包括センターもあるからね。介護は最終的に絶対誰にでもやってくるから。これからのキーワードは「しのぎ」だよ。その大変さをどうやって変換するか。ただやはり楽しかったりする。

山口 たのしかねーよ……。

(構成・穂島秋桜)

増井修(ますい・おさむ)
1959年新潟生まれ。編集者。1990年から7年間にわたり『ロッキング・オン』の2代目編集長を務め、10万部を超える業界ナンバーワン音楽誌に成長させた。最新刊はロッキン・オン編集長時代をまとめた『ロッキング・オン天国』(イースト・プレス)。

山口明(やまぐち・あきら)
1960年千葉県生まれ。現在も童貞を守りぬくプロ童貞であり、漫画単行本や書籍の装丁デザインを手がける。携帯やパソコンをもたないというスタイルを貫いている。TwitterFacebook

最終更新:2016/06/22 15:00
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