ファイザープログラム プレスセミナーレポート

化粧をすると健康になる!? 視覚障害者や高齢者の「美しくありたい」を支えるケアメイクの驚くべき効果

2016/06/16 15:00
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日本ケアメイク協会の大石華法代表

 製薬会社ファイザーの社会貢献事業「ファイザープログラム~心と体のヘルスケアに関する市民活動・市民研究支援」のプレスセミナーが6月3日に都内で開催された。今回のセミナーのうち、化粧を通じて視覚障害者をサポートする日本ケアメイク協会の講演について紹介する。

■女性の「美しくありたい」という尊厳を支える

 同協会の講演は「視覚障害者の『化粧をしたい!』を応援するプロジェクト」と題し、視覚障害者への「ブラインドメイク」の効能効果を医療・福祉の観点から考えるというもので、実際に視覚障害者の女性が壇上でブラインドメイクの実演を行った。

 同協会代表の大石華法さんが考案した「ケアメイク」は、障害や疾病、加齢などで、メイクをしなくなったり、できなくなった女性の「美しくありたい」という尊厳を支えるものだという。

 中でも視覚障害者が自ら行う化粧法がブラインドメイクで、その実演をした松下恵さんは41歳で網膜剥離によって視力を失った中途視覚障害者。大石さんから1時間のレッスンを10回ほど受けて技術を習得した。

 松下さんは、フェイスブラシやビューラー、マスカラコームなど、一般的な化粧道具のほか、耳かきやテープ、そして自らの指を使ってきれいに仕上げていく。とても視界の閉ざされた状態で仕上げたとは思えないほど、違和感なく自然なメイクが完成した。

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マスカラは、はみ出ないよう目元にテープを張ってから塗る
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眉、アイシャドー、アイライン、口紅は指を使って、中心から外側へ左右対称に塗っていく
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メイクをすると肌だけでなく、表情まで生き生きとした顔に

 このメイク技術を習得したことで、「正直に生きられるようになりました。顔を上げて道を歩けるようになったんです」と松下さんは喜びを語る。

■化粧が介護費用の削減につながる例も

 大石さんは、ケアメイクの効果について次のように述べた。

「以前、化粧をしていた記憶があった方に、思い出していただくのです。認知症で口紅を食べていた人が、口紅を塗るようになる。夫や子どもに『きれい』と言われて、にこっとするんです。鏡を見るようになる。できなかったことが、できるようになります」

 大石さんによると、実際に資生堂の研究では、化粧によってADL(日常生活動作)が向上するという結果が出ているのだという。ひいては、介護費用の削減につながるというデータもあるとか。

「年配の人ほど変わります。少女時代を取り戻すようです。あきらめて、化粧品売り場に近寄らなかった人が外に出るようになり、人とのつながりを取り戻し、しゃべれるようになるんです」(大石さん)

 単に装ったり飾ったりする表面的な効果だけでなく、人の精神や健康状態まで左右する、驚くべき力を持つ化粧。超高齢化社会において、その可能性は、今後まだまだ広がり、重要性を増していくのではないだろうか。

最終更新:2016/06/16 15:00
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