【連載】夫の不倫相手を訴えた! 実録「慰謝料請求裁判」体験記20

不倫は純愛か? 慰謝料請求裁判をしたことで見えたもの

2016/06/02 15:00
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Photo by Steve Johnson from Flickr

 こんにちは、まほです。結婚4年目にして、夫の不倫が発覚。その日を境に、今まで送ってきた生活は、がらりと大きくありようを変えました。その顛末記です。

■男性の半数以上、女性の3分の1以上が配偶者および恋人を裏切っている

 さてこの連載も、最終回となります。わたしが経験した不倫の慰謝料裁判についての結末は前回、お伝えしましたが、発覚から和解までに、おおよそ2年を費やしているうち、芸能人や有名人の不倫が世間を何度も賑わし、そして、不倫する男女を非難する世間の声は、激しくなっていくばかりです。もちろん、不倫は(不貞行為があった場合)、日本の民法上では不法とされている行為です。道義的にも、正しい行いとはされていません。けれど、これほどまでにヒステリックに世間が騒ぐのはなぜか。

 「実は不倫願望がある人は多く、しかし、家庭のことを考えて我慢している。だから、感情のままに恋をしている人のことを羨ましいと思う気持ちが嫌悪につながる」といった解釈などもされていましたが、わたしが思ったのは、むしろ「実は心の中に密かに、『自分もされているかもしれない』という疑心を持っていて、そこを刺激されるので、ことさらに否定してしまう」のではないかということです。

 というのも、日本家族計画協会家族計画研究センターがコンドーム・メーカーであるジェクス株式会社からの依頼を受けて実施した「ジェクス ジャパン・セックス・サーベイ」という調査結果があります。最新のものでも2013年と、若干古いのですが、全国満20 歳から69歳の男女を対象としてインターネットリサーチを実施したもので、調査配信数は10万6,871 人。都道府県間の比較を行うために、47 都道府県から回収順にしたがって均一に107 サンプルを収集し、合計5,029 人を集計対象としたデータです。

 これによると、「これまでに配偶者(夫・妻)や恋人以外の人とのセックス(性交渉)があったか」との質問に対し、男性の55.1%、女性の34.9%が「あった」と答えているんです。この数字、どう思いますか。実に男性の半数以上、女性の3分1以上が配偶者および恋人を裏切っているということです。このうち何%がパートナーの浮気の事実を知っているか、という調査結果はありませんでしたが、一緒に住んでいる夫婦ならば、「なんか怪しい」「あの人、もしかして」と考える瞬間は必ずあると思います。その時に、わたしがしたように「でも、まさかね。うちの人に限ってそんな(笑)」と楽天的に考えて、真実から目を背けている人って、たくさんいると思うんです。もちろんすべて知っていて、「家庭に迷惑をかけないのならば」と目をつぶっている人もいるでしょう。けれども、目を背けても目をつぶっても、心の奥では疑念や怒りが、ふつふつとたまっていくものです。だから、芸能人の不倫のニュースを聞くと、八つ当たりのように怒りをぶつけてしまうのでは、と思った次第です。

■慰謝料請求裁判をしたことで、自分の見たくない部分ばかり見えた

 わたしは芸能人の不倫には腹は立ちませんが、しかし、不倫を当事者同士が“純愛”と言ってのけることには腹が立ちます。結婚によって結びついている男女のほうがむしろ“不純”だって暗に言われているような気になってしまうからです。もちろん、結婚は生活を共にすることなので、“純愛”に照らし合わせると、“不純”と言われる発言や行動だって避けて通れません。夫が突然仕事を辞めて、夢を追い始めようとしたら、自分たちの生活のために考え直すように説得するでしょうし、セックスだってしたくない時は、相手にどれだけ求められても断る。

 そう。自分でもわかっているんです。ひたむきに愛情を注ぐことができない自分に、後ろめたさを感じているからこそ、胸を張って“純愛”だと言い切られると腹が立つっていうことも。夫の不倫の発覚、そして、不倫の慰謝料請求裁判をしたことで見えてきたのは、そういう自尊心の高さ、嫉妬深さ、そして、優越感を得るために不倫相手を見下すような驕りや、不倫相手に対抗意識を燃やす自己顕示欲の強さといった、自分で見たくない部分ばかりでした。

 そして後悔ばかりです。夫とその不倫相手との関係の深さを認めたくなくて、無理やりに引き剥がしたために、今度は彼らがより狡猾に密会するようになったこと。相手は捨て身になり、自殺未遂までして全身全霊で夫を引き留めようとしたことを「メンヘルこえー」とせせら笑い、かっこつけて余裕なポーズで、毎晩女友達と飲み歩いて、夫の気持ちが“かわいそうな愛人”に寄り添ってしまったこと――今さら後悔しても仕方ありませんが、やり直せるとすれば、最初の三者面談の時点で弁護士を入れて、「これ以上調子に乗ると、裁判するぞコラ」と、夫と不倫相手の両方に脅しを入れておけばよかったと思っています。

 なんせ、不倫といえども当人たち、もしくは片方が“純愛”気分に浸っている場合は「付き合っていて、何が悪いの? わたしたちは愛し合っているのに」と考えているのだから、その配偶者は、完全に愛を切り裂く邪魔者扱いなわけです。そんな相手にいくら話をしても無駄、こちらに与えられた権利を行使しつつ、ただ粛々としかるべき措置を講じていくことが、物事を解決するただひとつの方法だったと思います。

 そして、最後に言いたいのは、慰謝料請求裁判をして、よかったということです。自分の中でメラメラと燃えていた夫と不倫相手への怒りは、ほとんど消えましたし、身をもって「うちの妻は本気になったら怖い」と知った夫は、前よりもわたしや家庭を尊重するようになりました。相手の女性はきっと、今でもわたしのことを恨んでいるとは思いますが、それでも、自由になれて楽になったのではないか――とも、わたしは思っています。クリスマスやお正月といったイベントの日はもちろん、週末も、夜も朝も、自分が会えていない時はいつも別の女性(わたし)と過ごしていて、SNSでちょっと探れば、愛しい自分の恋人の隣で、周囲に“カップル”として認められて当然の顔をしている、その女性の姿が目に入る――そんな地獄から、ようやく逃れることができたのですから。

 全20回と長期にわたって、極私的な体験談を読んでいただいたことを感謝いたします。不倫の沼に浸かって溺れそうな方、旦那様の浮気で苦しんでいる方、ともに幸せな未来が訪れますように。
(まほ)

最終更新:2019/05/17 19:50
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