でもなんだかんだで見ちゃう!

B級映画スターといえども……ニコラス・ケイジ主演の信じられないほど退屈なB級映画5作品

2016/06/25 16:00

■『バンパイア・キッス』(1988)

 88年に公開された『バンパイア・キッス』も、『ウィッカーマン』同様、ホラーにジャンル分けされている作品。ニコラス演じるニューヨークのきざなエリートサラリーマンのピーターが、ある夜、勢いでセックスをした妖艶な女性に、血が出るほど強く喉元をかまれる。プレイの一部だと思っていたが、その後、体調に異変を来していく。実は女性は吸血鬼で、彼女の虜になったピーターは自分も吸血鬼になると思い込んでいく、という物語だ。

 この映画は「吸血鬼女にかまれ、彼女を愛するようになった主人公の狂気を描いた作品」なのだが、狂気を熱演するニコラスの姿がおもしろいと話題に。まだ元気だった髪の毛をブンブンと振り乱しながら、部屋にいたコウモリを追い払ったり、街を駆け回って「オレはバンパイアだ!」と叫んだり、おもちゃの付け歯を購入してクラブを徘徊したり、鳩やゴキブリを食べたり……ホラーの要素がなく、コントを見ているのかという錯覚に陥ってしまう。

 「吸血鬼女に捨てられたピーターは、完全に正気を失い、最後は殺されてしまう」という結末を迎えるのだが、長時間にわたりニコラスの変顔を見せつけられてきた観客は、疲労感でげっそり。「ニコラスの演技だけでホラーを表現する」という心意気は評価されたが、映画評論家たちは「ニコラスの自堕落な演技のせいで、映画が台無し」と酷評。「史上まれに見る最低最悪なB級映画」だと笑われてしまった。

■『バンコック・デンジャラス』(2008)

 99年にタイで製作された映画『レイン』。耳が聞こえず孤独な人生を歩んできた男が、冷酷な殺し屋へと変貌。ある日、心優しい美少女に出会い、本物の愛を知るのだが、悲しく切ない結末を迎えることになるというハードボイルドで、トロント国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞するなど高く評価された。『バンコック・デンジャラス』は、この『レイン』のハリウッド版リメイク。オリジナルの監督がリメイク版も手がけることや、主人公である殺し屋ジョーをニコラスが演じることも、「背が高く、哀愁漂う雰囲気が殺し屋っぽい」と期待する声が上がった。

 しかし、大物俳優ニコラスに台詞ナシというわけにはいかないのか、主人公のジョーではなく、ヒロインをろうあ者に設定。この時点で、嫌な予感を覚えた映画ファンは少なくなかった。とはいえ、引退することを決意し、最後の仕事を行うためバンコクに来た殺し屋が、素朴で心優しいろうあの女性と出会ったことで感情が芽生え、“仕事”をこなせなくなるという設定は決して悪くない。殺し屋として「質問はしない」「堅気とは関わらない」「証拠/痕跡を残さない」「引き際を知る」という厳しいルールを己に課してきたジョーが、引退を決意し、猥雑で危険な街バンコクにやってくるというストーリーも最高にハードボイルドだ。

 ところが、そんな中、ケガをしたジョーが訪れた薬局で、耳の聞こえない店員に一目惚れ。ここからストーリーが妙な方向へ進むように。恋に落ちたジョーは、頑なに守ってきたルールを無視し始め、暗殺に失敗。それなのに、情けない顔で必死にナンパし、女性をデートに誘ってタイを満喫。デートシーンはまるでトラベル番組を見ているかのようだと、しらける声が上がった。肝心の殺し屋としての仕事ぶりは行き当たりばったりになり、挙げ句、殺しをするために弟子まで雇う始末。

 水上マーケットでの激しいアクションシーンは素晴らしく、リアルでグロいシーンも登場。アクション映画としてのクオリティは高いと評価された『バンコック・デンジャラス』。だが、完璧主義者で冷酷なヒットマンが早い段階で感情的に崩れていく展開に無理があると酷評されてしまった。なお、撮影は軍事クーデター勃発の前後に行われたため、ビビったニコラスはいつでも脱出できるようにと空港にジェット機をスタンバイさせながらロケをこなした裏話も話題となり、「情けないニコラスが主演した、なんちゃってハードボイルド」だと株を下げてしまった。

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