育児系カルトの「紙オムツ全否定」を信じるママたち、目を覚ましてください

 先日読んでいた育児マンガで〈布オムツの保育園〉があることを知りました。

「ひえー。ただでさえ激務な保育士さん、さらに大変だわー」
「自然派育児をウリにした、私立の認可外保育園※なのか?」

 なーんて思っていたら、なんとこれ、公立認可保育園の話なんだとか。区長による「ゴミ削減!」という鶴の一声から始まったそうです。ところが昨年、紙1枚の通達によって、そのエコな布オムツ保育は突然終了。

※公立認可保育園は自治体のルールに従い運営されているため標準的な保育が行われており、いろいろな意味で自由な認可外保育園は、保護者のニーズや独自の理念が反映されているところも少なくない。

 表向きの理由は布オムツのレンタル業者(そんな商売があるんですねえ)の値上げとされていますが、巷では業者を選定する際によろしくない癒着があり、それをもみ消すためでは……なんてウワサがあるそうで、何だかズコー。さぞかし熱い育児理念と環境意識の高さからくる布オムツ推しであると思っていたのに~。しかし腹立たしくはあるけれど、EM菌や江戸しぐさを教育現場に持ち込むような〈トンデモ系〉でなかったという点は喜ばしいかもしれません。

 布オムツのトンデモといえば、凄まじいのは『ママ、紙オムツヤメテ!!』(谷口祐司著・文園社)です。〈おしりカッカ、アツイよ!! 反抗的な悪い子になっちゃう!!〉というサブタイトルからもお分かりの通り、全力で紙オムツをディスる啓蒙書です。

 著者の肩書は〈育児研究家〉であり布おむつ製造会社の元会長、そして現在は閉鎖されている育児文化研究所※※の理事長、さらには宇宙からさまざまなメッセージを受けとり世を正す(?)、UFOカルト活動家とも言えるでしょう。

※※過去に研究所のセミナーによって指導された無介助出産によって7人の新生児が死亡し、厚生省から注意喚起されている。

 そんな著者が謳っていた布オムツ効果とは? 紙オムツはなぜいけないのか? 同書にはこんなお説が掲載されています。

・紙オムツは通気性ゼロだから、赤ちゃんのお尻はまっかにただれる。だから不快感で機嫌が悪くなり、やさしいお母さんの声も美しい音楽も赤ちゃんの心に響かず、やがて反抗的になっていく。イライラの連続の中で脳の発育も悪くなる。
(改訂版が発売されたのは1991年ですが、その当時のオムツは既に通気性も改良されているかと……)

・水分を含んだ高分子ポリマー(オムツに含まれる、水分を閉じこめる素材)を手で触ってみると、ぬるぬるぐちゃぐちゃベトベト。これが紙オムツの正体!
(いや、正体と言われても。高分子ポリマーが肌に触れない構造になっておりますし)

・ポリマーを含んだ紙おむつをトイレから水に流せば、それを食べた魚の内臓にたまり、それを食べた魚を口にする私たちの子孫もまた、公害の犠牲者に!
(つっこむのもバカバカしいけど、紙オムツの処理法をご存じないのでしょうか)

・紙オムツ育児は排泄物を見ないから、健康チェックが遅れる。
(紙でも排泄物はチェックできるし、しますよ~)

 主な主張はだいたい紙ナプキンをディスる布ナプ信者と似たようなもので、〈紙と言ってるけど石油製品で、肌と健康に悪い! しかも排泄物を手軽に処理するから健康と向き合わない!〉とのことです。それに加え、脳の発育が著しい赤ちゃん期に不快な思いをさせることで、いかに人生を台無しにするかという脅しを盛りまくりです。さあ、ここからが本気で笑うところです。

◎ツッコミどころが多すぎる!

・赤ちゃん時代はわずか1年か2年。長い人生の中で、たったそれだけお母さんが小さな楽をしたいために赤ちゃんにどれだけ影響があることか。いつかきっと赤ちゃんのほうから家庭内暴力、非行というしっぺ返しが来る。

・著者の予想通り、紙オムツ100%のスウェーデンをはじめ、デンマーク、オランダ、フランス、イギリスなど紙オムツを多く使っている国は、だんたん衰退!
(センセー、残念ですが2016年の現在、フランスもスウェーデンも出生率が回復しております。笑)

・紙オムツで育った世代は反抗的なので長期ストを行い、経済的にも悪影響。
(紙オムツが主流のヨーロッパではストが長期化し、布オムツが主流だった日本はストをやっても短期で終わることを例に挙げています。ふ、ふうん……)

・ソ連では、赤ちゃんは国家のものと考え、みんな政府機関である保育所で育てられる。そこでは雑巾のような布オムツで、1日5~6回交換。日本の赤ちゃんよりもお尻が濡れている時間が長い(著者調べ)ので根性が悪く陰険な性格になり、漁業交渉で日本をいじめる。

◎徐々にカルトめいてきます。

 オムツ以外の育児ネタでは、こんなすごいお話も。

・体重の増え方が悪いのは知能の発育がよい証拠(脳を発達させるためのエネルギーを使っているから)。

・母乳育ちは愛情が満ち足りて、その部分の脳が発達するから頭の形がきれいになる。

・夜泣きの種類には、〈霊が見えておびえて泣く〉ものがある。

・妊娠中、夫を嫌うと絶対に父親になつかなくなる。だからなつかないのは母親のせい。

・妊娠初期に障害があるのでは……と母親が不安を抱えたら、手から出るプラナーという電波の力で自然に流産することができる。赤ちゃんの魂は4カ月ごろから宿るので、それ以前なら自然流産しても心を痛める必要はない。

・胎教のためにも妻の精神安定のためにも、妊娠中は10カ月までセックスを続けるべき。

 もう完全に、地球外生物レベル! しかしこんなトンデモが詰め込まれているにも関わらず、巷の自然派嗜好なお母さんたちのブログなどをウォッチングしていると、著者のお説を引き合いに布オムツを信仰しているような記事が見つかるので、さらに驚きです。ほっこり真面目な自然育児サークルなどで、いまだに氏は影響力を持っているのでしょうか? もしそうであれば、どうか同書のプロローグの前に掲載されている写真を見て、目を覚ましてほしいものです。

「自らオムツを着用し、その着用感を試す筆者」
「育児研究所では赤ちゃんの身になってオムツを考える」

 そんなキャプションとともに、〈中年男性たちのオムツ着用写真〉がドドンと登場。これ、一体何のプレイ。うん、やっぱり正気じゃないようですよ。

 ちなみに著者の『自然育児・裸育児 知能・才能が10倍に育つ新育児法』(文園社)では、

「多くのUFOが現れ、家の中が光で一杯になり、その中でも強く光る光の大天使さまが降りられ、赤ちゃんと話をしていかれました(中略)きっと谷口先生が私共の家にパワーを送って下さったことにより天使様方がきて下さったのだと思います」

 なんて体験談も掲載されているので、育児界に紛れ込む、どカルト宗教であったことは、確実です。

 育児界には数多くのトンデモが存在し、胎内記憶や乳児に履かせる冷えとり靴下なども、ほぼ同類でしょう。子供の発達を引き合いにしたおためごかし商法はまだしも、本気でそれをよかれ思って布教しているものが混ざるのが、困りものです。冒頭の区長のように「エコ!」程度であればいいけれど(癒着はダメだけど・笑)、発達が云々が出てきたら注意ワード。〈子供のため〉というトンデモにうっかり近づかぬよう、お母さまたちご注意を。

(謎物件ウォッチャー・山田ノジル)

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