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――本屋にあまた並ぶ新刊の中から、サイゾーウーマン(サイ女)読者の本棚に入れたい書籍・コミックを紹介します!

■『少年の名はジルベール』(竹宮惠子、小学館)

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 理想の少年像はネクタイかリボンか、半ズボンか長ズボンか。萌える関係性は「友情に毛が生えた程度」か、「愛情にちょっとだけ踏み込んでいる程度」か――。

 1970年代、まだ世の中に“腐女子”や“BL(ボーイズラブ)”という言葉はない時代に、そんな会話で熱く盛り上がっていた女性たちがいた。

 『少年の名はジルベール』は、高校生で漫画家デビューした竹宮惠子が、20歳で上京してからの約6年間を振り返った自伝。萩尾望都らと同居した日々や、多くの漫画家や編集者と出会い刺激を受け、いったんは編集者に反対されつつも、スランプを超えて代表作『風と木の詩』が「週刊少女コミック」に連載されるまでが描かれている。

 まだ「少女漫画の主人公は素直でかわいい少女」であることが当然だった時代に、少年同士の性愛も含めた交流を描いた『風と木の詩』の構想を練っていた竹宮。そして、デビューしてすぐ人気漫画家として頭角を現す萩尾。萩尾を経由して知り合った、のちに竹宮のブレーン的役目も果たす増山法恵。それぞれ1人でも十分独自の活躍を見せたであろう、タイプの違う才能を持った3人が同居を始めることで、お互いが刺激を受けていく。彼女らが暮らす狭い長屋は、近い感性を持った若いファンや漫画家が日々集う“大泉サロン”と呼ばれ、理想の少女漫画や少年像が日夜語られる場所になり、「少女漫画」というジャンルに新しい風を吹き込むうねりの起点となっていく様子が、みずみずしく描かれる。

 回想には“サロン”の常連だった坂田靖子、師と仰いだ石ノ森章太郎、ともに1カ月半の欧州旅行に行った山岸凉子ら、そうそうたる漫画家の名が躍るが、ほとんど初めて語られるのは、同居する同じ年の天才漫画家・萩尾への複雑な思いだ。

 新しい表現手法を生み出し、人気も作品評価も高い作品を生み出し続ける萩尾。竹宮自身が才能ある漫画家だからこそ、萩尾が1コマに込めた描写の新しさや凄みが、誰よりも理解できる。ライフワークと位置づけた竹宮の『風と木の詩』を「少年愛はテーマとして不適切、わからない」とボツにする編集者が、同じように少年愛を含んだ萩尾の『ポーの一族』を「別冊少女コミック」にあっさり掲載していく――。

 すぐ隣に自分とはまったく違うタイプの天才がいることに対して、尊敬や誇らしさを感じると同時に、追いつけない自分への焦りや息苦しいほどの嫉妬に襲われる竹宮。そんな感情がスランプと体調不良を呼び、同居して2年で大泉サロンから離れることになる。以前と変わらず親しみをもって、新しい仕事場の近くに越してきた萩尾に、はっきりと「距離を置きたい」と告げざるを得ないほど心身が参っていたことを、淡々と抑制された筆致で振り返る。

 憧れ、尊敬、友情、嫉妬、焦り――何層にも重なって、当時20歳すぎだった彼女にはもう正体がわからなかったであろう感情のもつれが、長い時間を経て活写されることで、穏やかに一つひとつ解きほぐされていく。そして、竹宮氏にとっての「印象深い思い出」として、2人が同居を始めたばかりの頃、穏やかな日差しの下で交わされた他愛ない会話がつづられる。

「私、萩尾さんの作品、望都って名前と作風を見て、絶対に男の人が書いたんだって思ってたの(略)それで、こういう才能とだったら、結婚してもいいなって」(竹宮)
「結婚!……それは……良かった。そうね、私も結婚するならあなたのような気が長い人でないと無理かも」(萩尾)

 この会話は、読者にとっては萩尾と竹宮が明確に言葉を交わしたほとんど最初のエピソードでもある。最終的に袂を分かち、その後、表立っての交流はほとんどない2人だが、互いの尊敬と好意が最大級に詰まったこの思い出が、竹宮氏の記憶の底で光り続けている。そのこと自体が、2人の関係を一言で表せない、複雑な色合いで見せている。

 今後、少女漫画史を語る上で重要な資料になるであろう1冊だが、古い慣習を打ち破っていく女性たちの力強い青春ストーリーとして、そして短くも濃密な友情物語としても読み応えのある一冊だ。

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