映画レビュー[親子でもなく姉妹でもなく]

孤独な中年女と若く奔放な娘――男を葬り去る女たちの『女と女と井戸の中』

――母と娘、姉と妹の関係は、物語で繰返し描かれてきました。それと同じように、他人同士の年上女と年下女の間にも、さまざまな出来事、ドラマがあります。教師・生徒、先輩・後輩、上司・部下という関係が前提としてあったとしても、そこには同性同士ゆえの共感もあれば、反発も生まれてくる。むしろそれは、血縁家族の間に生じる葛藤より、多様で複雑なものかもしれません。そんな「親子でもなく姉妹でもない」やや年齢の離れた女性同士の関係性に生まれる愛や嫉妬や尊敬や友情を、12本の映画を通して見つめていきます。(文・絵/大野左紀子)

■『女と女と井戸の中』(サマンサ・ラング監督、1997年)ヘクター×キャサリン

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 誰でも心の中に、深い井戸を持っている。そこに沈潜しているのは、人には言えない、自分でもはっきりと意識しないような願望だ。普段は井戸の蓋が閉められていて、願望がダダ漏れになることはない。もしそうなってしまったら、まともな社会生活を営むことができない人も出てくるだろう。

 「願望は睡眠中の夢に姿を変えて現れる」と言ったのはフロイトだった。夢の中で願望は変形されているので、元の姿が何だったのかなかなかわからない。逆に言えば、それは変形されねばならないほど、一般には許されない種類の刺激的な願望だったのだ。
 
 さて今回取り上げるのは、『女と女と井戸の中』(サマンサ・ラング監督、97)。オーストラリアの田舎を舞台に、2人の歳の離れた女の関係を一風変わったサスペンスタッチで描いている。

 隣の家まで何マイルもあるような、荒涼とした大草原の中の古い屋敷。訪ねてくるのは、財産管理を委託している仲買人ハリーだけ。年老いて頑迷な地主の父の世話をしながら、地味で単調な暮らしをしていた中年女性ヘクター(パメラ・レイブ)はある日、施設出身の少女キャサリン(ミランダ・オットー)を家政婦として迎える。猫のように気紛れな少女に、ヘクターは魅了されていく。

 年齢だけでなく、あらゆる点でヘクターとキャサリンは隔たっている。白髪混じりの長い髪を編んでいるヘクター、金髪ショートヘアのキャサリン。足の悪いヘクター、踊りまくるキャサリン。クラシック音楽を聴くヘクター、ロック好きなキャサリン。そして、土地と家に縛りつけられたヘクターと、身寄りのない風来坊のキャサリン。

 鳥かごから小鳥が逃げていくのを怖れ、ヘクターはキャサリンに家事労働をさせず、プレゼントをして歓心を買おうとする。陰鬱だった家の中で、堅物の中年女の中に潜在していた同性愛感情は、奔放な若い女への不器用な愛情表現となって現れる。

心をしばる「父」なるものはどこにいく?

しぃちゃん

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