5歳から性教育をするデンマーク。そのセックス観を象徴するラブグッズとは

 バイブレーターは、その国のセックス観を映す鏡のような存在です。新進バイブブランド「AVE」のアンバサダー、Bo Torovicさんのからデンマークの性事情をうかがうと、そう思わずにはいられません。

 1年前、「バイブコレクターが推す最新バイブは、ほかにはない変わった形状に注目~!」という記事で、同ブランドによる、雲の形をしたファンタジックなバイブレーターを紹介しましたが、今冬、その新作が日本で発売されました。「SKY ALTO-Light」です。

 前作とまったく同じじゃん……と思うことなかれ。見た目こそ前作をほぼそのまま踏襲していますが、「リフト運動」という画期的な機能が追加されました。ボディ部分が約20°の角度で上下に動くのです。

 これによって、指を挿入して膣の上壁を押すときのような刺激が味わえますが、そこに振動がプラスされます。クリバイブもあるので、内と外両方から快感が押し寄せてくるからスゴイんです。

 サイズは前作より小さめです。「前作について、特に若い女性からの『大きすぎる』という声が多かったので、今モデルは小さめにしました」と、Boさん。年配の女性は大きめを好むので、前作の評判がよかったとか。それはきっと、年とともにバイブに慣れていくって意味ですよね。デンマークでは女性がいくつになってもバイブを使っているということでもあります。ステキ。

 小さめサイズはアジア市場に向けての戦略でもあるそうです。中国、シンガポール、韓国などなど。私も欧米のバイブは全体的に「大きい」と感じます。なかには、挿入がかなりツライものも……。骨格の小さなアジア人にとってはサイズダウンは朗報です。

 ファンタジックな雲の形は、「オーガズムは7番目の天国を見せてくれる」というコンセプトを形にしたもの。男性デザイナーが幼い娘に「天国の絵を描いてみて」とお願いしたところ、こんな絵を描き上げたそうです。だからキュートなうえにあたたかみを感じるんですね。

 私は、このバイブのコントローラーをとても気に入っています。バイブの表面は完全なシームレスでどこに操作ボタンがあるのかまったくわからないほど。なのに、説明書を読まなくても自然に操作できるのです。

Boさん「雲のもこもこした形を損ないたくなかったので、ボタンは付けたくありませんでした。そこで、大きめのふくらみ=ONボタン、小さめのふくらみ=OFFボタンとしました。これによって感覚的に操作できますし、視覚障害がある方でもそれぞれのボタンの位置が簡単にわかります」

 振動パターンを替えるボタンのみ、矢印のようなマークが本体に薄くほどこされています。これがあることで、いちいちバイブ本体に目を向けることなくボタンを押せます。操作するのに気を取られ、気持ちよさが減っては元も子もないですもんね。バイブにも、こうしたユニバーサルデザインが求めらているのだと実感しました。

◎世界で最も進んだ性教育

 気持ちよさにも使いやすさにも全方位的に気配りがなされているバイブを生み出したAVEですが、意外なことにデンマーク初のラブグッズブランドだそう。起ち上げ早々、これほど自由で大胆な発想のバイブを生み出した裏には、デンマーク人の、ほかに類を見ないほどオープンなセックス観があるようです。

Boさん「デンマークでは、多くのセクソロジスト(性科学者)が活動しています。セクソロジーは大学で学ぶことができる専門的な学問で、これで学位をとることもできます。日本では性の悩みを誰にも話せずに困っている人が少なくないそうですが、デンマークではこのセクソロジストが常駐している薬局もあり、気軽に相談できるんですよ。たとえば『オーガズムが得られない』と打ち明けられれば、それを実現できるエクササイズを教えてくれます」

 それ、スゴイ! 某サイトでセックスのお悩み相談をしている私がいうのもナンですが、日本では「安心して相談できるセックスの専門家って、一体誰のこと?」と考えることがあります。産婦人科医はフィジカル面においてはスペシャリストでも、相手との関係性となるとそうでもない。セックスカウンセリングは資格が必要なく誰でも名乗ることができるから、なかにはアヤシイ人も含まれている……というのが実情でしょう。

 セックスを体系的かつ多角的に学んだ専門家が身近にいて、いつでも気軽に相談できるって日本人からすれば夢みたいな話です。デンマークのQOS(クオリティ・オブ・セックス)の高さがうかがえます。

 でも、日本では「性について相談することすら恥ずかしい」という風潮が強く、それは私たちが子ども時代から「性とは恥ずかしいもの、隠すべきもの」と教えこまれてきたことと決して無関係ではありません。

Boさん「デンマークでは学校教育のなかで性教育がしっかり行われるので、13歳になればセックスについてひと通りのことを知っています。そうでなくとも、家庭で5歳になるころから、親が本を見せながらペニスやヴァギナについて教えます」

 ご、5歳ですか!?

Boさん「ええ、ほんとうですよ(笑)。デンマークは世界一、性に対してリベラルな国ですから! 学校教育も大事ですが家庭でもセックストークをオープンにしていくことで、デンマークの子どもたちは自分の身体について、そしてセックスについてのポジティブなイメージを養います。学べば学ぶほど身体のことがよくわかるし、セックスを肯定できるし、安心して気持ちよくなれます。自分のセクシャリティについて表現するというのは、自分自身を表現すること。16歳ぐらいになると少年少女たちはセックスしはじめますが、そのころには『自分を大切にする』という当たり前のことが身についているんです」

 これは憶測ですが、性をポジティブにとらえつつ、その裏にあるリスクについての正しい知識が行き渡っている国では、望まない妊娠による中絶率や性感染症の感染率が低そう。いままた梅毒が大流行している日本ってやっぱり恥ずかしい……。性犯罪の発生率も気になるところです。

◎日本の性はファンタジーが強い

 また、性の主導権が長らく男性の手にあった国では、バイブは男性の興奮を増幅させるためのツールでした。「iroha」のような国産ブランドが登場したとはいえ、女性の心身を傷つけかねないバイブレーターはいまだ市場にあふれています。一方で、性に対してオープンでそこに男女差がほとんどなく、家庭でも学校でもセックストークができる国で生まれるバイブはこんなにもピースフルで、女性にやさしいのです。

 では、Boさんの目に映った日本のセックス観は?

Boさん「日本の性はドアの内側に隠されていて、外からは見えない。でも、中を見るとスゴイ世界が展開している! という印象があります。ゆえに、市場としては大きなポテンシャルがあると私は見ています。でも一方で、アニメをはじめとするファンタジーが強くて、リアルの世界より優勢のように見えます」

 AVやエロ系のアニメ、コミック、ゲームなどなど、リアルとかけ離れたセックスコンテンツはまさに日本の十八番です。

Boさん「それよりも、セックスを日常的なこととしてとらえてほしいですね。日曜の午後、リラックスしてコーヒーを飲むような感覚で、セックスする。ファンタジーのなかにいると、リアルなセックスはストレスになります。そんなセックスは気持ちよくないですよね。日常的で心地いいセックスにシフトするきっかけとして、AVEを提案したいです」

 日常的なセックスを大事にするという感覚は、日本ではたしかに薄いように思います。女性誌のセックス特集では「セックスってめくるめくもの!」「最高のセックスじゃなければ、セックスじゃない!」と声高にアピールされますが、これにはもうお腹いっぱい。気合入りまくりで採点基準の厳しいセックス、とても強迫観念的です。「もっとリラックスして!」とBoさんはくり返しいいました。肩の力をもっと抜けば、「オーガニズムが見せてくれる7番目の天国」を私も見ることができるのでしょうか。

■桃子/オトナのオモチャ約200種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。

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