血のつながらない子どもを育てるという選択【特別養子縁組編1】

「特別養子縁組」が日本で広がらない理由 支援団体代表が語る、アメリカとの子育て意識の違い

2016/02/29 15:10
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一般社団法人ベビーライフ代表理事・篠塚康智さん

 1988年に施行された「特別養子縁組」制度。生みの親との戸籍上の関係が消滅し、親族ではない夫婦の子どもとして縁組みができるという制度だ。日本では6歳未満の子どもを対象に、25歳以上の夫婦が共同で養育するという原則のもと、全国で年間300件から500件ほどの縁組が成立している。

 「養子大国」と呼ばれるアメリカでは、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー、マドンナやトム・クルーズなどのセレブを筆頭に、養子を迎える文化が定着している。その一方、日本において“他人の子どもを我が子として育てる”特別養子縁組は、まだまだ普及したとはいえない状況だ。

 実際に養子を迎えるということはどんなことなのか、またアメリカと日本では、養子縁組に対してどのような意識の違いがあるのか。養子縁組の支援をする民間団体「一般社団法人ベビーライフ」の代表理事である篠塚康智さんに話を聞いた。

■社会的養護が必要な子どものうち、養子縁組に結びつくのは1%

――ベビーライフでは養子縁組の支援以外にも、生みの親や養父母への支援をトータルで行っておられますが、具体的な内容について教えてください。

篠塚康智さん(以下、篠塚) 子どもを養子に出すことを希望される、実親さんの相談を受けています。実親さんには、養子縁組以外に、里子に出すという選択肢についてもお伝えしますし、もし経済的に厳しければ一定期間は生活保護を受けて育てられないかなど、一緒に模索することもあります。

 また、養父母を希望される方には独自の書類審査と面談を実施しており、授乳の仕方やオムツの替え方、沐浴の仕方など、人形を使って実演で教えるセミナーも行っています。そのほか、養子を迎える以外にも、里親(血縁関係のない子どもを預かり養育する)という選択肢があることについても説明しています。私たちは、養子縁組が唯一の解決策ではなく、生みの親と養父母双方に寄り添って支援をすることが大事だと考えているので、子どもの立場でベストな方法を見つけ出すようにしています。

――たとえば、民間の養子縁組あっせん団体に、特別養子縁組の仲介をお願いする場合、どのような準備と手順が必要になるのでしょうか?

篠塚 書類と面談審査では、なぜ養子縁組を選んだのかをヒアリングします。いろいろな角度から質問をして審査を実施し、登録の意思がある人は順番待ちをするというかたちです。この夫婦にはこの子どもさんがいいかな、というマッチング作業は、こちらで行います。たとえば、養父母が住んでいる場所に近いところで生まれたお子さんをお任せするのは、近すぎるかもしれない、というような地理的なことや、兄弟姉妹の有無など、さまざまな面を考慮します。また、公的な支援がないので、養父母のほうに実費負担が発生します。

――実際にこれまでどれくらいの養子縁組が成立していますか?

篠塚 当法人では、だいたい実親さんから毎年300件くらいの相談を受けますが、そのうち10%くらいが養子縁組に決まるかたちです。いま、社会的養護が必要な子どもは全国に4万6,000人ほどいるといわれていますが、施設で暮らす子どもが約85%、残りの約15%が里親委託、そして養子縁組に結びつくのはわずかに1%前後です。

――養子縁組はかなりマイナーなのですね。やはり選択肢としてハードルが高いのでしょうか?

篠塚 里親委託は児童相談所のみで実施していますが、養子縁組は公的機関以外に我々のような民間団体が請け負うこともできます。しかし、やはり養父母を希望される方の母数が少ないという現実がありますね。また、子どもと養父母をマッチングさせるというのは、支援の内容がすごく濃いものになるので、マンパワーがとても必要とされるんです。そうしたことから、養子縁組をサポートする人材が足りていないともいえると思います。私たちは、アメリカとカナダにも養父母希望者を抱えていますが、どちらも国を挙げて養子縁組を推進しています。逆に養護施設は緊急シェルターとしての役割でしかないので、そこで子どもが暮らすことはありません。

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