永遠の美しさを求め破滅していく少年たち 注目の若手俳優が集結した『ライチ☆光クラブ』

今回取り上げる映画「ライチ☆光クラブ」は、1984年に「東京グランギニョル」によって公演された舞台を見た古屋兎丸が漫画化し、その作品を原作に映画化されたものです。

この作品の映像化、舞台化はこれまで何度かされています。2012年、2013年には、古屋版が舞台化、そしてほぼ同じキャストが声優を務める形で2012年にアニメ化、このときはゼラ:木村了、タミヤ:中尾明慶、ジャイボ:玉城裕規が演じました。また2015年12月には、同じく古屋版が、ゼラ:中村倫也、タミヤ:玉置玲央、ジャイボ:吉川純広で上演されています。

現在上映中の映画では、物語の主役であるタミヤを野村周平が、ゼラを古川雄輝が、ジャイボを間宮祥太郎が演じています。その他にも、池田純矢、柾木玲弥、中条あやみなど、今、もっとも注目の若手俳優が集結した作品になっていると言えるでしょう。普段は女子の願望に応えるキラキラした役どころの多い若手俳優たち自身にとっても、「新しいことに挑戦している」という実感を持てる作品だったのではないかと思います。

物語は蛍光町という架空の町を舞台に繰り広げられます。タミヤがリーダーとして立ち上げた、少年たちのどこにでもある秘密クラブ「光クラブ」は、転校生のゼラが参加してから様子が変わっていったようです。醜いものを嫌うゼラは、光クラブの存在を知った女教師をメンバーに処刑させるほど強力な恐怖での支配をしています。しかし、「美しいもの」を連れ去らせるために開発していたロボットの「ライチ」が完成し、カノンという少女を連れ去ってから、徐々に「光クラブ」の9人の関係性が壊れていくのでした。

グロテスクな描写も多く、少年たちのミソジニー、エイジズム、ルッキズムの合わさった思想に、最初の何十分かは、とても最後まで見ていられないと思ってしまいました。でも、徐々にそれが覆されていくのでなんとか最後まで見ることができたという感じです。

◎ゼラへの心酔度が演技で見分けられる

映画を見て気づいたのは、ゼラが凶悪な光クラブの独裁者だとすると、光クラブを作ったタミヤはずっと常軌を逸しないまともな人間で、このふたりが、舞台の演技とドラマや映画の演技のように違った雰囲気を見せているのです。

また、ゼラに心酔しているメンバーは常に芝居がかって陶酔しているような演技をしています。例えば、ゼラに忠誠を誓うあまり、自分の体の一部を差し出したニコも舞台風の演技だし、ゼラを惑わす美しいジャイボもやはり自己陶酔したような演技です。

ところが、常に「まとも」な感覚を持ち、演技もリアリティのあるタミヤや光クラブの創設メンバーであった、カネダ、ダフは、自己陶酔した感じは見られず、現代にも存在しそうな普通の少年として演技をしているのです。また、連れてこられた少女のカノンも芝居じみていません。

キャラクター紹介にも「影が薄い」と書かれているヤコブと、機械オタクでライチのプログラミングを手掛けたデンタク、乙女のような性格の雷蔵は、ゼラへの忠誠という意味では、そこまで強いわけではありません。だからでしょうか、舞台風の演技と現代劇の演技の中間のように見えました。

物語の内容にもかかわってくるこの演技の手法の違いが、監督の演出によるものなのか、俳優たちが自然と選び取ったものなのかはわかりません。でも、とにかくこの映画においては、“芝居じみていない”ことが、ゼラに洗脳されず、まっとうさを保つ核になっているのだとも思えます。

確かに現実社会でも、何かに陶酔している人は、どこか別世界にいっているように思えるし、人間は、熱狂できる人ほど楽しみが多い気もするけど、一方では醒めた目を持っていないと、間違ったことにも心酔してしまうこともある。だから、簡単にのみこまれない自分を持つ必要もあるのだなと思えるのです。

そして、他の作品では見られない、異なった演技のまじりあった状態を、今をときめく若手俳優で見られるというのは、非常に面白い体験です。ただ、それが演出によるものなのか、俳優たち自身で考えたのかを、何度か俳優さんたちに取材する機会もあったのに、聞けなかったのが悔やまれます……(いつか機会があったら聞いてみたいと思います)。

◎「いつか大人になる」という時限爆弾を自ら仕掛けたゼラ

ゼラの大人になりたくない、醜くなりたくない、という思いは、徐々に狂気を帯びてきて、やがて自らを破滅に向かわせます。ゼラが大人になりたくない、自分の醜さを見たくない、成長を否定したいと思うようになったのは、あるものの発言がきっかけでした。少年時代のゼラは、人間の内臓のような物体に、予言をされます。「人を支配しろと、そうでなければ14歳になるまでに破滅してしまう」といわれたゼラは、それ以降、その言葉に捕らわれて生きていくのです。

実は、漫画版では、この予言をするのは、町中で出会った“マルキド・マルオ”という怪しい占い師でした。ところが、今回の映画でゼラに予言をする、内臓のような物体の声は、ゼラ自身のものでした。ゼラは、自分の思いが生み出した予言者の言葉に縛られ、次第に自分を狂わせていったのです。

ゼラのように、大人は醜い、こんな醜態をさらしてまで生きているのは考えられない、という自分の予言に縛られている人は、現実にもいないわけではないでしょう。特に若さや美しさなどで評価されることの多い女性の中には、老いていくうちに美しさを失ってしまうという現実に嫌でも気づかされるし、いずれは受け止めないといけないことだと思いながら、ギリギリまで抗って生きている人も多いでしょう。アンチエイジングにこだわったり、美魔女になるのも、その一例です。

ところが男性は、美しさや若さは自分にとってさほど重要な要素ではないと思うことが容易だし、自分のことを「女性の若さと美醜をジャッジする側の存在」だと思っていれば、体の自由が徐々にきかなくなるまでは、「大人になること=老いること」を他人事として生きることもできるでしょう。もちろん、男性にも見た目に変化があれば気にする人もいるでしょうし、美容に気を付ける人も出てきました。そういう人は、女性よりはまだ少ないからこそ、例えば“女子力の高い男子”などととらえられ、大きくとりあげられることもあります。ただ、その見た目の変化を、自分の仕事などの実力で挽回できる、それだけが自分の価値ではないとはねかえせる別の価値観を女性よりは持ちやすかったと思うのです(これは、前回の「オナラをしても、ギリギリのラインで愛したくなる男『俳優 亀岡拓次』と、男たちのワイルド願望」にもあてはまるかと思います)。

でも、光クラブの少年たちは、若さと美しさ以外の価値軸に重きをおいていません。ゼラの思想に共鳴し心酔したジャイボは、ゼラに愛される根拠となる「美しさ」や「若さ」が重要な少年であったからこそ、成長期の自分の体の変化を知って嘆きます。ゼラ自身もまた、自分の体の中に、大人と同じ醜い内臓があることを知ったときに絶望していました。それとは反対に、カノンは人間の心を持ったロボットのライチと一緒に年をとれないことを悲しみますが、年をとることに対しての絶望は感じられず、自然なことだと受け止めていたように思います。

ゼラやジャイボたちは、どんな人にもある時期に限って与えられる“若さ”に必要以上の価値を感じ、そこにこだわったからこそ、大人の女性や男性を醜いものと軽蔑もしていた。けれど、そのこだわりが自らを縛ることになってしまいました。時限爆弾をしかけたのは、自分自身だったのです。

支配的で暴力的だったこの物語の悲しい“悪”であるゼラの最後を見て、勧善懲悪ものを見るようにすっきりとは出来ず、切なくて悲しいと感じました。それは、「永遠の美しさや若さを手に入れたい」と考えてもいつか覆されるという、女性が味わう過程を、ゼラたち――ただ、ゼラの考えに支配されているメンバーたち全員がこの考えに捕らわれているわけではあえりません。それは前半に書いた演技の違いで読み取れます――が自らに課しているように見えたからかもしれません。

カノンに美しさを求めるのと同じように、自分の成長も否定して若く美しくありたい、そのことで他社を支配したいと願うゼラたちを見ていると、男性性に縛られているというよりも、むしろ“女”(社会的に求められる意味での“女”ですが)が縛られている様子を思い浮かべてしまいます。だからこそ一方的に女性の美と若さを無神経にジャッジし、消費し続けて生きられる男性よりは、無限の美と若さを切望して破滅していくゼラの最後に同情できるのだと思います。そしてこの作品が何度もリメイクされ、その都度“見られる”存在である若い俳優たちが出演していることにも納得がいくのでした。

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