【messy】

風俗嬢にとっての「いいお客さん」「悪いお客さん」の違い

2016/02/22 20:00

性感エステ勤務歴4年の朝比奈ゆきえです。前回まではお店を移籍するときに気をつけていること、移籍先を探していたときに起こったお店とのトラブルなど、お店にまつわる話を書いてきました。今回はお客さんに着目して、いいお客さん、悪いお客さんの違いは何か、その違いを考えることで見えてきたお客さんへの向き合い方について書いていきたいと思います。

性感エステは風俗の業種の一つで、一般的なプレイ内容は、女性キャストがアロマオイルなどを用いて男性客に全身マッサージを施し、最終的に手コキなどで性的サービスを行うというものです。お店によってはキャストの上半身へのタッチやキスはOKだったり、フェラチオなどのオプションがあったりするようですが、基本的には女性が受け身になるのではなく、男性客が受け身になって楽しんでもらうお店がほとんどだと思います。

私が所属しているお店は、「何もしなくても気持ちよくなれます」を売り文句に、男性客が完全に受け身になるプレイ内容になっていて、女性の体に触れることはNG、キスやフェラチオなどのオプションもなく、それを女性に強要することも禁止しています。

◎いいお客さん、悪いお客さんの違い

私が考える「いいお客さん、悪いお客さん」の定義は、いいお客さん=「決められたプレイ内容の範囲内で楽しんでくれるマナーの良い人」、悪いお客さん=「ルールを守らず、女性の嫌がる行為をするマナーの悪い人」です。

先に悪いお客さんの具体例を挙げると、

・お触り禁止のルールを守らず、触ってくる
・フェラチオなど過剰サービスを強要してくる
・プレイ終了10分前(残りの時間は片付け)のタイマーが鳴っているにもかかわらず、「まだ10分あるでしょ?まだイキたくないからギリギリまで粘らせて」と、延長もせずに粘る
・「どうしてこの仕事をしているの?」「どこに住んでるの?」「本名は?」とプライベートに立ち入る質問ばかりしてきて、こちらが濁してもしつこく聞いてくる
・「お店を通さずに個人的に会おう」と連絡先をしつこく聞いてくる

といったところでしょうか。

逆に、これらの行為をせずにお店のルールをきちんと守って遊んでくれる人のことを、私はいいお客さんだと思っています。

◎お触り禁止のお店で遠慮なく触ってくる人

「女性が集まると、良いうわさ話よりも悪口やゴシップのほうが盛り上がる」とよく言いますが、お店の待機室で盛り上がる話題もやはり、圧倒的にお客さんのグチです。お金をいただいている立場でグチなんて……と思われるかもしれませんが、グチを言い合いながらも「こうしたらいいんじゃない?」とサービスを良くするための情報交換が出来ることもあるので、割と貴重な時間でもあるのです。

待機室ではよく、「太ももをそーっと触ってくる人、ホント気持ち悪い。こっちが感じるとでも思ってるのかな。鳥肌しか立たないんだけど」、「さっきのお客さんに抱きつかれて最悪だったー。髪に変な臭いついてたらどうしよう」、「皆触らせてくれたよってお決まりのセリフを言われたから、『具体的に誰なんですか? ルールを守っていない女性のことはお店の人に言わなきゃいけないんで』って言ってやったら、『ごめん違うお店だったかな』ってとぼけてきた」、「五千円あげるから触らせてって言われて断ったら、お金欲しいから働いてるんでしょだって。お金は欲しいけど、触られたくないからこの店で働いてるんだっつーの!どうして分からないのかな」といったグチが飛び交っています。

など、とてもじゃないけどお客さんにはお聞かせ出来ないものもあります。

私を含め、「せっかくお触り禁止のお店で働いているのだから、触られたくない」、「触られたくないからこのお店で働いている」という女性が多いため、触ってくるお客さんには皆苛立ちを募らせます。

とはいえ、「触りたい」と思うお客さんの気持ちも理解出来ますし(というか、ほぼ皆触りたがるので嫌でも理解する)、気分が盛り上がってつい手が伸びてしまったという程度なら、いちいち怒らず優しくかわしています。また、ほんの少しの肌の接触も嫌がっていたら雰囲気も作れないし、お客さんにも嫌がっていることが伝わってしまうので、脚や背中を触るのは許してあげたり、添い寝しながら手コキをしてあげたりなど、キャストそれぞれの許容範囲内でお客さんに満足してもらう努力もしています。

私たちキャストが腹を立てるのは、最初から遠慮なしにベタベタと脚やお尻を触ってきたり、無理やり胸を揉んでこようとする人に対してです。こちらが「ダメですよ」と優しく断っても、「何で? いいじゃん。一緒に気持ち良くなろうよ」と悪びれない人が多く、思わず「何でって、逆に何で? 好きでも何でもないおじさんに触られて平気だと思うのは何で?」と聞いてしまいそうになります……。

◎個人的に会おうとしてくる人

初めて接客したその日に「連絡先教えて。今度ご飯行こうよ」と言ってくる人もいれば、毎回「いつになったらデートしてくれるの?」としつこく聞いてくる人もいます。まぁ指名して呼んでくれているぶん、いいお客さんでもあるのですが……。

過去には、「仕事ばかりして出会いないでしょ? 僕が君の彼氏になってあげる」とものすごい勘違い発言をしてきた人もいました。この時ばかりは、「彼氏いるので大丈夫です」と言ってしまいました(笑)。あとは、「お店に渡すのと同じぶんのお金をあげるから、個人的にマッサージしてよ。そうすれば君も儲かるでしょ?」と言ってくる人や、「月いくら欲しいの? 愛人になってよ」と愛人契約を持ち出す人までいます。

私はお客さんとは個人的に会わないと決めていますし、お店側からもお客さんと個人的に会うことや連絡先を交換することは禁止されています。禁止する理由はおそらく、キャストがお客さんと個人的に会えばそのぶんお店の売り上げは減りますし、そのキャストが他店に移籍した場合にお客さんを持っていかれてしまう可能性があるからだと思います。

ただ、自分自身が嫌だ、お店側からも禁止されているからといって、「無理!」と無下に断るのではなく、触ってくるお客さんに対してと同様、上手にかわして次の指名に繋げる必要があります。これがなかなか面倒で、よく頭を悩まされる課題ではあるのですが……。

お店の人からは、「お客さんから連絡先を聞かれたら、お店から禁止されているからと断ればいい」と言われますが、お客さんからは「内緒にすればいい」と返されるだけなので、ほとんど効果がありません。

はっきり、「プライベートでお客さんと会う気はないし、そうする義務もない」、「お客さんに恋愛感情は持てないし、体の関係を期待しているのなら尚更無理です」、「連絡先が流出して、万が一身バレしたらと思うと怖くて無理」、「個人的に会うよりも、お店を通して呼んでくれたほうが指名にカウントされるし、新しいお客さんもつけてもらいやすくなるから、そのほうがありがたい」、「たとえお小遣いをもらって会ったとしても、ちゃんとお店に出勤したほうが貰える金額が大きいので休みたくない」と本音を言ってしまえればどんなにラクかと思いますが、結局「今は忙しくてプライベートの時間が全くない」とか「まだ信頼関係が出来てないから連絡先は教えられない」と歯切れの悪い断り方をするばかりです……。

◎プレイ時間の中でデート気分を楽しんでくれるいいお客さん

一方で、プレイ時間の範囲内で宿泊しているホテルのレストランで食事をご馳走してくれたり、部屋で一緒にDVDを見たりしてデート気分を楽しんでくれるお客さんもいます。中には私の出勤時間いっぱいを貸し切ってくれて「これで指名ポイントに大きく貢献出来たかな」とまで言ってくれるお客さんもいます。

「気に入ったキャストとゆっくり過ごしたい」と思っている点では個人的に会いたがるお客さんと同じだと思いますが、きちんとお店を通してくれるお客さんは本当にありがたいですし、一度会ったお客さんにまた指名してもらえることは本当に励みになります。

当たり前のことですが、お客さんはお店にお金を払うことでサービスを受けていて、私たちキャストもお店を通してお客さんからお金をいただくことでサービスを提供しています。お店を通して作られた、サービスの受け手側と提供する側。いいお客さんは、お互いのこの立場をきちんと理解してくれているからこそ、きれいに遊んでくれるのかなと思います。

◎悪いお客さんをいいお客さんに変える努力

「お客さんが皆マナーのいい人ばかりだったらどんなにいいか」と、しょっちゅう思いますが、現実はなかなかそうもいきません。

余程マナーの悪いお客さんでない限り、嫌がっていることを悟られずに上手にかわして、次に繋げなければなりません。そうすることで結局こちらの本音がお客さんには伝わることはないし、難しいところですが……。

けれど、最初はマナーの悪いお客さんでも、根気よく向き合っていけば次第にいいお客さんに変わってくれることがあるので、「悪いお客さんをいいお客さんに変える努力」は必要だなと思います。たとえば、最初はベタベタ触ってきていたお客さんでも、優しくかわし続けていたら大人しくなってくれたこともありますし、毎回しつこく連絡先を聞いてきていた人も、どうしたら楽しんでもらえるかを考えて接し続けたら、「本当はデートしたいけど、こうやって話してるだけでも楽しいからいいや」と、その後もずっとお店を通して呼んでくれました。

お客さんと風俗嬢という関係性ではあるけれど、ここにも一つの人間関係が成立するわけで、相手に好意(恋愛感情じゃなくても)を持ってもらえれば自然とこちらが嫌だと思うことはされなくなるし、いい関係性が築いていけるのかなと思います。

私がお客さんに、「お店を通した、サービスの受け手と提供する側」という関係性を崩さないでいて欲しいと望むのなら、私自身はお客さんに満足してもらえるようにサービスの範囲内で精一杯努力すべきですし、当たり前のことですが、気遣いを忘れなかったり、感謝の気持ちをきちんと伝えていかなきゃなぁと改めて感じています。
(朝比奈ゆきえ)

最終更新:2016/02/22 20:00
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