「アート展にデリヘルを呼ぶ」ことが、「アートだから」で許されるはずがない

 「アート展にデリヘルを呼ぼうとしている」ことが発覚し、炎上中の案件があります。「真のアカデミー」という、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAで行われている現代アート展で、アーティストの丹羽良徳による「88の提案の実現に向けて」というワークショップが火種でした。

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「88の提案の実現に向けて」丹羽良徳

アカデミーと社会との往来 のなかで「88の提案」よりピックアップした提案の以下の実現に向けて実践的な行動を開始します。便宜的に講義ということにしておきますが、実際には参加者の実践的な参加が求められます。当日はビデオ撮影を予定しているので、参加者は ビデオに映ることをご了承のうえ参加ください。 同時刻より増本泰斗 featuring 吉濱翔「bar spiritual fitness」と同時並行で開催。持ち物なし、途中参加・途中退場自由。

14. デリバリーヘルスのサービスを会場に呼ぶ
78. 男子トイレと女子トイレを入れ替える
74. 階段で野菜の天ぷらを揚げる
85. タクシーで城の周りを5周する

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 このうちの「14. デリバリーヘルスのサービスを会場に呼ぶ」ことを問題視した、女優でパフォーマーである「げいまきまき」さんが、企画者(?)を叱責したことをツイートで報告。そこに、アーティストやクリエイターの集まる「渋家(シブハウス)」代表でアーティストの齋藤桂太氏が、丹羽良氏を擁護するツイートを行い、非難が殺到した、という構図です。

 なおイベントはすでに終了しており、「上記提案のうち、74と85は実現に向けての実践的な行動が行われ、14については急遽、事情に詳しい方にお越しいただき、仮にそれを行った場合におこるさまざまな問題点について、お話を伺いました。78は未検討です」とイベント終了後に追記があるよう、「デリヘルを呼ぶ」ことは中止されています。

 私は現代アートに造詣が深いわけではないので「デリヘルを呼ぶ」ことだけでなく、その他の項目も「なにが面白いのだろう?」「どこがアートなのだろう?」と純粋に疑問に思ってしまいます。「それがアートだ」と言われてしまえばそれまでなのですが、今回のワークショップは「88の提案」の一部のようですので、他の提案も覗きましたが、それでもよくわからない。

・受付の女性に抱きつく
・盗んできた品々を展示会場で披露する
・受付の前でマスターベーションする

など、中には犯罪に当たる行為も含まれていました。

 丹羽良氏の過去の活動も門外漢からすると「???」なものが多数ありました。ただ、どうやら、既に社会に存在している何らかの構造や関係性をひっくり返し、問題提起しようとされているように感じます。こうした活動に対して、芸術性や思想性があるか、私には踏み込むことも評価することもできないのですが、「88の提案」は丹羽良氏のこれまでの活動に通念しているものなのだということは理解できました。

◎「アートだから」で許される問題なのか

 さて今回の炎上は、丹羽良氏ではなく、むしろ彼を擁護した「渋家(シブハウス)」の齋藤氏が主役でした。詳細はtogetterの「丹羽良徳がギャラリーにデリヘル呼ぼうとして怒られたことについての反応」をご確認下さい。

 今回の記事で私が問題視したいのは、現代アート展にデリヘルを呼ぶことそのものです。

 ここ数年、風俗関連の書籍が多数出版され、風俗やその周辺の問題が可視化されたことで、論点整理が行われてきました。私は、セックスワークを語る際に、大きく分けて2つの論点を意識しなくてはならないと考えています。ひとつが社会の問題であり、もうひとつがセックスワークそのものの問題です。

 前者は、例えば貧困や障害を理由としてセックスワークにしかたどり着くことが出来なかった人が存在している現状を改善するために、社会制度や支援を変えていくという、社会の側からのアプローチであり、後者はセックスワークの労働環境の改善や社会からの偏見の目をいかに解消していくかなど、セックスワーク側からのアプローチが主になります。このふたつは、どちらか一方ではなく、どちらも同時に押し進めていく必要があります。前者だけでは、セックスワークへのスティグマは消えませんし、後者だけではセックスワークに就いている人たちの困難を全て解消することは出来ません。

 そして今回は後者の論点に着目すべき案件です。残念ながら風俗業界は社会から偏見の目に晒されています。なかには誇りをもって風俗を行い、外部に自らの職業を発信する風俗嬢もいますが、自分の職業について誰にも話さない/話せない風俗嬢がほとんどでしょう。げいまきまきさんも「SWへの従事を何人が知っているか」という質問に対しての答えが「平均で2人」であったこと、そして、その内訳は、同じ職場や職種(つまりセックスワーカー)だとツイートで明かされています。それだけ、風俗嬢であることを周囲に明かせないという現状があるわけです。

 これを踏まえれば、「現代アート展にデリヘル嬢を呼ぶ」ことが、「晒し者にする」以外の何者でもないことは一目瞭然です。もしかしたら丹羽良氏は、「社会にはデリヘルという職業があり、それが以下に偏見の目に晒されているのか、アート展に呼ぶこと(あるいはそれによって話題となること)で暴露したい」という思惑があったのかもしれません。しかし、個人の尊厳を傷つけてまで、そうした行為を行う正当性があるようには私には思えない。

 時折、「アートだから」という言葉が免罪符のように使われることがあります。表現の自由は尊重されるべきですし、アートにはアートの特殊性があるような気もします。しかし、だからといって、「アートだから」が全ての問題に通用するわけではありません。齋藤氏も一連のやり取りの中で、「アーティストって肩書きは『人権侵害します』という意味」だと呟いていました。あるいは、「『通り魔』を作家性にしているアーティストに『通り魔みたいだ』という批判は意味がない。(中止になったのは)(アートへの)リテラシーが低いヤツが来すぎたから、向こう(丹羽良氏)が引いてくれた」といった主旨のツイートもありました。

 「引いてくれた」という言葉から読み取れるように、斎藤氏には「社会に対してアートは優位である、あるいは外側にいる」という価値観をお持ちのように感じます。しかし、言うまでもなくアーティストも私たち同様に社会の一員ですから、「アートだから」がどこまでも通用するわけでもない、と私は思っています。

 さて、この案件、「アートだから」で許される問題なのでしょうか? 丹羽良氏の見解が出ることを望みます。
(門田ゲッツ)

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