「腸に穴が開いた」の報告も……

そもそも宿便なんて存在しない!? 逮捕者も出た“浣腸”健康法がはらむ矛盾と死の危険

2016/02/11 18:00

 2012年11月放映の『ためしてガッテン』(NHK総合テレビ)でも、大腸肛門病消化器内視鏡専門医の黒田敏彦氏が、「1万人以上の腸を見てきたけれど、いわゆる“宿便”のある人はいなかった」と、“宿便”は通常ありえないと明言していた。

 ちなみに、西洋医学による宿便の定義は「2~3日出てこない便」のことで、要は便秘のこと。当然、便秘は体に悪いが、断食、いわゆる“デトックス”が腸内環境に良いという主張も誤りで、

「断食で胃腸を休め、腸内環境を改善する、という考えがありますが、腸は自律神経で動く臓器です。つまり、断食しても腸が休まることはないのです。腸内環境をよくするには、むしろ積極的に腸を動かしてあげることが大切なのです。また、断食によって、食べかすを腸に送り込まないようにすると、腸内環境は悪化します。腸のなかの食べかすがなくなると、腸内細菌は腸粘膜を分解し、壊してしまうこともあります」(辨野義己『腸をダマせば身体はよくなる』/SBクリエイティブより)

と、断食しようが腸は休まらないという説もあるのだ。

■直腸を突き破って破裂……死に至ることも?

 さらに、コーヒーエネマは数ある代替医療の中でも、かなり深刻な事故が多い健康法だ。いずれもレアケースではあるものの、「直腸にコーヒーを流したことで、腸に穴が開いてしまった(2012年)」、コーヒーエネマによって「血液中に病原体が入り込み、全身に炎症反応が起きた(1984年)」、「患者に電解質異常がみられた(1982年)」ほか、コーヒーエネマによる死亡例も数件報告されている。

 自宅でもできるキットなどが発売されているが、昨年12月、「腸内洗浄で肌改善」の触れ込みで無許可の医薬品「カフェコロン」を販売したとして、医薬品販売会社の社長らが逮捕された事件も。「自力で排便が困難になった」という健康被害が報告されているほか、「直腸の粘膜を傷つける恐れや、突き破って直腸が破裂する場合があり、死に至ることも考えられる」と語る医師も。実際にアメリカ食品医薬品局も、実験でコーヒーエネマを使うときは「死の危険がある」と通告するように指示している。

 また便秘のみならず、ガンなどの悪性腫瘍にも効果的で、肝臓や胆嚢の機能を改善する、という主張に対しては、これを裏付けるデータが出てきていないのが現状だ。浣腸のやり過ぎによる電解質異常や、自力での排泄機能が弱まる可能性もあり、コーヒーが肝臓にいいというデータは多いものの、果たして浣腸は死のリスクを冒してまでするようなものだろうか? それなら普通に口から飲むか、肝臓への効果が認められたサプリメントを飲む方が良いだろう。
(取材・文/チロル蝶子)

最終更新:2016/02/11 18:00
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