バイブフォビアを公言する男って、自分の無知と偏見が恥ずかしくないの?

 私がバイブレーターの収集をはじめてから8年近く。ラブグッズを取り巻く環境はずいぶん変わりましたが、ラブグッズの使用はまだまだ〈特別〉です。誰もがする当然の行為であれば、雑誌のセックス特集で「おもちゃって使ったことある?」というアンケート項目はないはずです。「セックスのとき挿入ってする?」という項目はありませんものね。

 たしかにラブグッズがあろうがなかろうが、セックスもオナニーも成立します。だからこそ、グッズを取り入れた行為は特別なのです。英語にすると、スペシャル。快感をランクアップしたり、コミュニケーションを濃密にするために使うスペシャルな道具、というほうがニュアンスが伝わるでしょうか。でも、〈特殊〉な行為ではありません。どうせするなら気持ちいいほうがいい、というのはごく自然な感情です。人間は道具を創り、それによって生活を向上してきました。そこにあるものを「なくてもいいから、使わない」で留まるのか、「もっとよくなるために、使う」かは個人の判断ですが、後者がいなければ文明は発展しなかったでしょう。

 とはいえ、道具を使う人/使わない人がそれぞれ自分の判断を信じ、かつ互いの判断を尊重すればいいのですが、困るのは「理解できないし、使いこなすこともできない。だから使っている人を否定する」という人種です。

 先日、「スマホゲームとアダルトグッズは創造性を欠如させる原因に」を読みました。グッズ愛好家としてはこのタイトルを見た瞬間にカチンときて……ということはありません、むしろ「またか……」と嘆息しました。いるんだよね~、こういうバイブフォビアの男。

◎バイブを嫌い、恐怖する男たち

 バイブをはじめとするラブグッズ、およびそれを使用する女性を頭ごなしに否定することを、私は〈バイブフォビア〉と名づけました。フォビアとは、ホモフォビア(同性愛嫌悪)、ゼノフォビア(外国人嫌悪)のように使われますが、病的な嫌悪や恐怖をあらわす後置詞です。深刻なフォビアや社会問題になっているフォビアもあるので、軽々しく使うべきではない……とも考えたのですが、このフォビアもほかの嫌悪と同様に〈無知〉〈誤解〉〈偏見〉に根ざしたものなので、こう名づけても的外れではないでしょう。

 同コラムのなかでは、次のような論が展開されています。

・人間のエロスは創造性があるから燃えるわけで、女性ならオモチャを使わずに、手ごねハンバーグよろしく、自分の手でおいじりなさるがよろしい。

・手でやるってことは、みだらな妄想を抱くわけで、それが人間のクリエイティブ性を生み出すってもんでしょう。

 道具を使うことぐらいで阻害される貧しい想像力、クリエイティビティの持ち主ならでは発想ですね。ご自身がそうだからといって、なぜ他人もそうだと思うのでしょう? それとも、これってmessyの「スピリチュアル百鬼夜行」でツッコまれているような、「粉ミルクはだめ、母乳じゃないと!」「紙ナプキンはだめ、布ナプキンじゃないと!」的な、根拠レスの自然志向なんでしょうか?

・おもちゃを使っている女性は、反応はいいけど、恥じらいとか、エロい雰囲気とかに欠けていると思う。例えばの例で恐縮だが、「どこ、気持ちいいんだ~」とか聞いても、オモチャ派はダンマリか、開き直って「○ま○こ」とか軽く言うし。

 えーっと、この方はそんな女性たちと何人会ったことがあるのでしょうか? 200本超のバイブを所有する私ですが、女性器をその呼称で呼ぶのは好みません。それをいうことがエロスだとも思わないし、逆に口にしないことで奥ゆかしさが演出されるとも思っていません。男性からどう思われるかはどーでもよく、ただ好まないから口にしない。けれど、グッズの使用有無と羞恥心とのあいだに相関関係が本当にあるのだとしたら、それはそれでたいへん面白いデータですね。ご自身の貧しい性体験のみで語るのではなく、相応な数のサンプルをとったうえで、世に発表していただきたいです。

 貧しい性体験、と断言してしまいましたが、同コラムから見えてくるこの方の性行為は「セックス」ではなく「サービス強要」にしか見えないからです。

・大人のオモチャに、はまってる女子は、昭和のエロさが少ない。恥じらいがとても重要と言いたいのです。

 羞恥心やモジモジ、セックスでは大いにスパイスになりますよね。しかし、恥じらいとは自然発生的なもの。どんな性経験がゆたかな人でも、然るべきシチュエーションでは恥じらいが生まれます。でも、「女性が恥じらう姿を見ることで興奮する俺」のために、それを求められるのは御免です。じゃあ、女性が恥じらうシチュエーションを自分から提供しなさいよ、という話です。そしてそれは、「どこが気持ちいいか言ってみろ~?」というチープで創造性に欠けたプレイではないことは断言できます。

 この後に、女性は金銭でいかようにもできるし、お金を払ってもらった女性はセックスに応じなければいけないという主旨の記述もあります。世のほとんどの女性はこんなセックス観の男性と、小金を積まれたところで寝たくないですけどね。

 女性の性感もセックスファンタジーも、この方が思っているほど貧しくありません。ラブグッズのようなツールを取り入れることでより豊かな性感をさらに増幅させ、イマジネーションを広げることを知っている女性もたくさんいます。また、ここでは、「OLのお姉さんが、『あ~イライラする、ちょっくら抜いて寝るか』って、ウィーンウィーンすると気持ちいいし、寝付きもいい」ことにダメ出しされていますが、それの何が悪いの? サクッとイッて寝たい夜もあって当然。その振り幅の広さこそ女性らしさ、というより人間らしさでは? でも、そんなオナニーはこの種の男性にとってはツマンナイってことでしょうね。女性のオナニーは男性のためにあるわけではないので、それでいいのです。

◎結局は、コワイだけ

 彼らは「俺ではイカない女が、バイブではサクッとイク」のが許せないし、コワイのです。生身の人間とふれ合う快感と、ツールによってもたらされるそれは別もの、ということも知らなから、「かなわない!」と勝手に敗北感を味わい。でも、それを認めたくはない。だったら、その存在自体を否定してしまうのが、いちばんです。

 私はこのコラムを書いた男性を個人攻撃したいのではありません。バイブフォビアのおっさん、の超典型的なサンプルである、というだけです。女性のセックス観の豊かさといまどきのラブグッズのバリエーションの豊かさに対する〈無知〉、女性の快感も羞恥心も俺たちを満足させるためにあるという〈誤解〉で、「俺はバイブに絶対かなわない」という恐怖心をコーティングし、頭ごなしに攻撃する。どのフォビアもそうですよね。LGBTの実態を知らない無知ゆえのホモフォビア、外国人によって自分の存在がおびやかされるという誤解ゆえのゼノフォビア。LGBTや外国人の方と接点がない人ほど、やみくもに怯え、否定します。

 差別感情からなるフォビアを振りかざす人はこれからどんどん淘汰されていくべきで、そうするのは「無知や誤解、偏見はダサい」とみなし、まっとうなバランス感覚で世の中を見ている人たちでしょう。同じく、まずは女性たちが自分の性と向き合い、こうした誤解を片っ端から否定し、バイブフォビア男を絶滅させられればメデタシメデタシ。自分でも、戯れ言にいちいち目くじら立てるのって大人げないと思わなくもないのですが、無知や誤解による嫌悪は人を傷つけます。当事者じゃなくても傷つきます。女性の性をこうも低く見られると、女性としての尊厳に引っかき傷ができます。だから、それを見過ごすのは、バイブコレクターとしても個人としてもイヤなのです。

■桃子/オトナのオモチャ約200種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。

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