[官能小説レビュー]

性器の真上に「M」のタトゥー……SMに没頭する元援交少女に、「純粋」を感じてしまうワケ

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『私はただセックスをしてきただけ』(角川文庫)

■今回の官能小説
『私はただセックスをしてきただけ』(サタミシュウ、角川文庫)

 10代の頃に経験したセックスは、その後のセックスに大きく関わってゆく。例えば、初めての相手が潔癖性の年上男性だった筆者の友人は、オーラルセックスを知らずに20代中盤まで彼と交際していた。20代半ばにして、初めてオーラルセックスを体験した彼女は、その恥ずかしさと気持ちよさに失神してしまったという。それまでの彼女にとって、セックスとはキスと愛撫、結合のみで成立していたのだ。

 10代の頃のセックスとは、遊びの延長の行為だったり、「先に処女を捨てた方が偉い」という価値観の影響から、仲間内でマウントポジションを取るための手段だったりする。まだセックスというものが何物かわからない年代なのではないだろうか。それゆえに、自分の中だけで「これが私のセックスだ」と位置付けたまま大人になり、ふと他人と比べてみると、あまりにも普通とかけ離れていることもある。

 今回ご紹介する『私はただセックスをしてきただけ』(角川文庫)は、サタミシュウ氏の人気SMシリーズである。物語は、妻・美樹の秘密を知ってしまった夫の視点で始まる。セックスレスの妻を抱こうとすると、妻の陰毛は綺麗に剃られ、性器の真上には「M」の文字のタトゥーが彫られていた――目を覚ました妻は、これまでの人生を語り始める。

 高校1年生の時、美樹は少し変わった形で処女を捨てた。そのきっかけは、友人の加奈子からの告白だった。加奈子は、恋人である大学生の久我が大学の仲間と作っている援交サークルに入り、援交をしているというのだ。「仲間に入らないか?」と誘われた美樹は、躊躇しながらも、これまでコンプレックスだった自分の容姿が「売れる」ものだと感じて、快諾する。久我と初体験をし、その後さまざまな男たちに抱かれてゆくたびに、美樹はずっとあこがれていた大人に近づいている気がして、うれしさを募らせる。

 セックスを重ねた美樹が興味を持ち始めたのは、SMだ。緊縛される女性の写真を見て興奮しながら、実際に自分がその行為を行うのは、特別な相手だけだと心の隅で感じていた。そんな美樹が、初めてSMプレイをした相手は、高校2年生の時の担任教師・向原。ある日、援交のためにラブホテルへ入る姿を向原に見つかってしまった美樹は、「俺のものになれ。その男とは二度と会うな」と告げられ、狂ったように抱かれた。こうして美樹は向原のものになり、首輪を付けられ、ロープで縛られ、さまざまなプレイを要求されるようになったのだ。

 しかし、向原との蜜月は長くは続かなかった。援交グループが摘発され、美樹の家にも連絡が入った。美樹は高校2年生の夏休み明けに退学し、祖父母の家で同居をすることになったが、4カ月ぶりに実家に帰ったとき、生涯の忠誠心を捧げるご主人様に出会う。そして美樹は、結婚後もそのご主人様との関係を続けていたというのだが――。

 同級生たちよりも多くセックスを重ねることで、性に対して人一倍強い関心を抱いた美樹が辿り着いた究極の快楽が、奴隷としてご主人様に調教をされることだった。

 軽い気持ちで始めた援交が、彼女の一生を狂わせたとも取れるし、SMという行為は決して一般的とは言えないけれど、たった1人の男に忠誠心を捧げて愛し抜く姿は、真っ直ぐにさえ思える。端から見ると全うな道から外れていると感じられる人でも、思春期の頃に知った快楽をその後も実直に追い求めているという意味では、もしかしたら純粋なのかもしれない。そんな発見のある1冊である。
(いしいのりえ)

旦那の心境になって、精神的にえぐられる楽しみ方もオツ!

しぃちゃん

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