デンジャラス・ビューティ 女性器に毒を仕込む女たちの事情

「社会の窓」って言い方は、女のチャックに使えるのかな?――お手入れしたらしたで“ビッチ”扱いされ、お手入れしないならしないで“だらしない女”扱いされる不思議なパーツ、女性器。人類が女性器に加えてきた、美白・脱毛・装飾などなどの“女性器カスタマイズ”の歴史をふりかえる連載、今回は「女性器に毒を仕込む女たち」のお話です。(連載・全10回予定)

◎中世フランスの媚薬は、○○の毒でできていた!?

SMのSのほう、「サディズム」の語源となったことで知られる、元祖ドSの人・サド伯爵。

彼は18世紀フランスに実在した貴族ですが、一度バスチーユの牢獄に入れられています(1)。容疑はいろいろありましたが、中でもちょっと見過ごせないのがこちらです。

「プレイ後に相手の女性が亡くなった」

いったい何をしたんだサド伯爵、っていう感じですが、原因は当時の未熟な医学にありました。スペインバエという虫の持つ毒に、熱感・血流増加作用があったことから、「この虫の毒を使えば女性器が熱く感じやすくなる!!」と、中世フランスで媚薬として大人気だったのです(2)。

スペインバエの毒は「パスティーユ・ドゥ・リシュリュー」なんていう、オシャレな洋菓子みたいな名前で呼ばれていました。この「パスティーユ・ドゥ(以下略)」を、サド伯爵が相手の女性に使わせた結果、致死量を超えてしまい死亡事故に至った……というわけです。

そうです、“死亡事故”です。裁判の結果、「サド伯爵には女性を殺すつもりはなかった」という判決が下されました。よって、数百年前にフランスで起こったこの件は、死亡事故だということにされているわけですが……どうでしょうね。

サド伯爵が貴族であったのに対し、相手の女性が社会的に弱い立場の娼婦であったことを考えると、私はこれが公平な裁判だったのかどうかも疑ってしまいます。「そもそも金にモノを言わせて他人に変なもん飲まてせる時点でアウトじゃね」、と。

こういうことが起こっていたのは、フランスだけではありません。昔の日本にも、やむをえない事情で女性器に毒を仕込まなければならない人々がいました。

◎遊女たちが女性器に毒を仕込んでいた理由とは

中世フランスの娼婦たちは、性感増進のためにスペインバエの毒を使わされていました。では日本の遊女たちがどうしていたかというと、ホオズキの毒を使っていたんです。それも、中絶のために。

その方法というのがまた、思わず股間を押さえたくなってしまうようなものでした。

“ほうずきの根を紐でくくって五本ばかり、お秘所に刺しこみ、子の出る道を開きます”
――竹内智恵子「鬼追い: 続昭和遊女考」未來社 p.140より

お秘所というのが、つまりは、女性器のことですね。ってなんか冷静っぽく書いてみましたけど、私はいま、めっちゃ内股になってます。

今すぐタイムマシンに乗って遊郭に避妊リングやコンドームを広めに行きたい気持ちですが、別にタイムマシンに乗らなくても現代でも安全な避妊・中絶にアクセスできない女性というのはたくさんいるわけなので、なんかもう、なんていうかもう、もっとちゃんと女性器を語り合おうよ! 大事なことだもん!! っていう気持ちです(引き続き内股になりながら)。

未発達な医療と社会的不平等から、女性器に毒を仕込まざるをえなかった女性たち。現代人である私たちの手には、スペインバエの毒のかわりに温感ローションがありますし、ホオズキの毒のかわりに避妊や中絶の方法がありますね。

ですが、現代でも、女性器に毒を仕込んだ女性の例はあるんです。最後に、2013年のブラジルで起こった出来事をご紹介しましょう。

◎「女性器の匂いがいつもと違う」病院に行ってみたら……!?

2013年1月、ブラジルの病院でこんな出来事が起こりました。「妻の性器の匂いがおかしいんです」と、ある男性がパートナーの女性を連れて受診したところ、女性器の中から毒が見つかったのです!(3)

「女性器に毒を仕込んでから、舐めて欲しいと頼んだ。夫を殺すつもりだった」

そうして殺害計画を明らかにした彼女自身も、もし受診が遅れていたら、膣から毒を吸収して自分まで死んでしまうところだったそうです。

模倣を防ぐため、毒の種類は明らかにされていません。ただ、その毒の分量は、彼女自身とその夫との両方が死に至るのに充分な量だったといいます。

彼女が夫の殺害を決意した理由は、「離婚を切り出したのにそうさせてもらえなかったから」でした。ということはつまり、相手の男性のことを「離婚はしてくれないけどクンニはしてくれそうな男」だととらえていたわけですね。

フランス、日本、そしてブラジル。それぞれの事情で女性器に毒を仕込んできた女性たちの歴史を前に、私は、考え込んでしまうのです。彼女たちはそれぞれ、女性器に毒を仕込んだのか、それとも、仕込まされたんだろうか……と。そして、医療が発達した現代において、なぜ彼女は女性器に毒を仕込まなければならなかったのか、と。

(1)Iwan Bloch, “Marquis de Sade: His Life and Works”, The Minerva Group, Inc, p.162-167
(2) Ronald Hayman, “Marquis de Sade: The Genius of Passion”, Tauris Parke Paperbacks, p.64
(3)Huffington Post UK(http://www.huffingtonpost.co.uk/2013/01/29/vagina-murder-plot-brazilian-man-wife-poisoning-_n_2572836.html)、International Business Times(http://www.ibtimes.com/vagina-poison-murder-plot-brazilian-man-claims-wife-put-toxic-substance-inside-her-kill-him-1044046)ほか

牧村朝子
1987年生まれ。タレント、文筆家。2013年にフランス人女性と同性婚、現在フランス在住。セクシャリティをテーマに、各種メディアで執筆・出演を行う。将来の夢は「幸せそうな女の子カップルに”レズビアンって何?”って言われること」。twitter:@makimuuuuuu

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