イケメンドラマ特捜部【ジャニーズ&イケメン俳優】

『コウノドリ』で綾野剛が見せる“相反”の魅力……安定感とミステリアス、優しさと残酷

2015/12/16 17:30

◎ミステリアスと安定感を両立させる
 綾野が演じる鴻鳥先生は、隙のある青年で、普段は先輩にからかわれている。だが一方で、児童養護施設で育ったという過去を抱えている。また、医師の傍らBABYという謎の天才ピアニストとしても活動しており、劇中ではウィッグをつけた鴻鳥先生がピアノを演奏する場面が毎回見せ場として登場する。

 このピアニストという設定は若干、物語から浮いている気もするが、一見穏やかな医師の中にある孤独の影を表現しており、ミステリアスな魅力を残したまま、物語の進行役として見せることにも成功している。

 また、興味深いのは鴻鳥先生が見せる、残酷さの中にある優しさだ。本作では毎回、病院を訪れる妊婦とその家族が、出産にまつわる選択を迫られることになる。例えば、4話には破水して切迫流産の危険がある妊婦が登場する。

 そんな妊婦に対して鴻鳥先生は、出産にこぎつけたとしても脳性マヒ等の重い障害が出る可能性を伝え、子どもをあきらめるか、リスクを理解した上で出産に臨むのか、自分たちで決めてください、と選択を迫るのだ。

 「助けてくれよ。元気になると言ってくれ」と言う夫に対して、鴻鳥は「お気持ちはわかりますが、約束はできません」と答え、「僕たち医者はご家族の未来を背負うことはできません。でも、お二人の決断に対して僕たちは全力でサポートします」と伝える。淡々と現状を伝える鴻鳥先生は、妊婦を救う天使であると同時に厳しい現実を突きつける悪魔のようでもある。

 もちろん、登場する妊婦のほとんどは産む選択をするので、感動的な物語となるが、美談の押しつけに見えないのは、その場の感情に流されない鴻鳥先生のスタンスがあってのことだろう。冷静な口調の中に残酷さと優しさを同時に込めることで、綾野は一見普通に見える鴻鳥先生の中にある複雑な感情を見事に表現している。
(成馬零一)

最終更新:2015/12/16 17:30
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