血のつながらない子どもを育てるという選択【里親編1】

単身者でも“親”になれる 厚生労働省に聞く、日本の里親制度の課題とは?

2015/12/10 17:00

――最初は「養育里親」として児童を預かっていた方が、自分の子どもとして養育したいから養子縁組したいと考えるようになったらどうなるのでしょうか?

担当者 その際は、個々の子どもの事情に合わせて対応することになります。あくまで子どものための制度ですので、養育里親の希望だけで養子縁組を検討するわけではありません。ただ、子どもの状況をみて養子縁組した方が良いと判断され、養育里親と養子縁組された子どもさんもいらっしゃると聞いています。民法に定める養子縁組の制度として、「特別養子縁組」は6歳までに養育していれば8歳に達するまでは可能です。子どもの年齢などの状況から「普通養子縁組」(※)をされる場合もありますね。

※ 「普通養子縁組」とは、養子が実親との親子関係を存続したまま、養親との法律上の親子関係をつくるという縁組で、養子と養親の同意に基づく。養子となる者が15歳未満の場合、親権者や後見人といった法定代理人が代わりに縁組の承諾をすることができる。また、法定代理人が承諾をするには、養子となる者の父母の同意を得なければならない。養子となる者の父母で親権を停止されている場合も同様。未成年者を養子とするには、家庭裁判所の許可を得なければならない(そのほかにも、複数の要件がある)。
 一方、「特別養子縁組」とは、養子と実親との法律上の親子関係を終了し、養親が養子を実子と同じ扱いにする縁組のことを指し、家庭裁判所の審判によって認められる。

――養育里親が養子縁組を希望した場合、預かっている子どもの最善の利益を考えたとき何が優先されますか?

担当者 もし養育里親となってから養育する子どもとの養子縁組を希望する気持ちが芽生えたら、子どもにお話しする前に、まずは児相の担当者にご相談いただくことが必要だと思います。

 というのは、「児童の権利に関する条約」には「できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する」とあり、子どもの気持ちを十分に聞く必要があるためです。また、特別養子縁組のように、対象となる子どもが幼い場合は、実親が子どもの養育をどのように考えるかということも重要です。

 一方で、子どもの最善の利益を考えた場合に、子どもが実親との生活を希望したり、実親が引き取りたいと言っても、子どもにとって適切な養育ができる状況にあるかどうかを、児相とともに話し合いながら進めるので、すぐに引き取らせないこともあります。そのような中で、実親が長期間子どもに会いに来ないなどの場合は、養子縁組を選択肢のひとつとして実親に提案することもあるようです。いずれにしても、子どもに伝えるときには慎重にお話しする必要があるので、児相とよくご相談いただくことが重要です。

――家庭的な養育を推進するという方針が定められたのは、いつ頃からですか?

担当者 平成23年7月に国の審議会で「社会的養護の課題と将来像」という取りまとめがされました。そこで、社会的養護における子どもの養育のあり方として、できる限り家庭的な環境で、安定した人間関係の下で育てることができるよう、里親委託を推進することが望ましいということが示されました。これを受けて、「平成41年度までの15年間で、社会的養護が必要な子どものうち里親やファミリーホーム(児童福祉法で定められた「小規模住居型児童養育事業」を行う住居)に委託される児童数を概ね3分の1にする」という目標の達成に向け、5年ごとの目標値を定めた計画を都道府県ごとに作成することとしており、今年がその計画をスタートさせる初年度になります。

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