仁科友里の「女のためのテレビ深読み週報」

椿鬼奴の“稼がない夫”は、なぜ批判される? バラエティに蔓延する「男はNG」の発想

2015/12/03 21:00

 3つめは、「なぜ番組が“家計費”に所有権をつけるのか?」である。付き合って1年目のクリスマスに、佐藤が無理をして買った指輪を鬼奴が失くしてしまい、同番組でサプライズとして指輪をプレゼントしたが、金の出どころは家計費で、司会の中山秀征は“鬼奴の金”だと表現、鬼奴は「お使いに行ってもらった感じ」とオチをつけた。「バラエティ番組だから」と言ってしまえばそれまでだが、もし稼いでいる男性タレントが、自分より収入の低い妻にプレゼントをもらって、“出どころは俺の金”と発言したら、好感度が落ちることは間違いないだろう。「男性がやるのはNGだが、女性がやるのは笑いになる」という発想は、少々ムシがよすぎないだろうか。夫婦には相互扶助の義務があるのだから、男女どっちが稼いできても一緒なはずだ。

 しかし鬼奴夫婦の家計費所有権問題より、私が気になったのは、しょこたんこと中川翔子の発言である。同番組での「助けたい人がわかる」という心理テストで、中川には「おばあちゃんを助けたい」との結果が出たのだが、中山に「お母さんじゃなくて?」確認されたところ、「お母さんは、私のお金でいろいろ楽しそうにしている」と答え、笑いを誘った。

 ミュージシャンだった父を早くに亡くした中川は、母の女手ひとつで育てられた。中川にとって母親は親友だそうで、ブログにはコスプレをして、胸の谷間を露わにするポーズを取る母がたびたび登場する。中川は、過去に俳優との熱愛が報じられたが、相手の収入が中川より低いことと、芸能界に入る前に設けた子どもがいたことで母親が交際に反対し、破局を迎えたと週刊誌で報道された。また、同番組で過去に語った結婚の条件が「10匹の猫と母を受け入れてくれる人」であったことからも、母親との関係が密なことを窺わせる。日本において、親孝行は無条件に褒められる行為で、母親に金を使わせてやる中川は“孝行娘”に違いないが、生活に困窮しているわけでもない母親との間に、扶養義務はない。

 稼がない男に冷たいが、母親には従順かつ甘い。世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数で、日本は145カ国中104位と低迷したままだが、男女平等を阻む“女性側の変わらない意識”を日曜の昼下がりに見せつけられた気がしてならない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。最新刊は『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)。
ブログ「もさ子の女たるもの

最終更新:2015/12/03 21:10
『しょこたん べすと――(°∀°)――!!』
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