角川慶子の「シロウトで保育園作りました」第100回記念対談(後編)

角川慶子×小阪有花「保育園で見かける親子の心の行き違いと、『うちの子を見てない』という保護者の思い込み」

2015/11/22 16:00

角川 わかってる保護者は「お互いさまですから」と言ってくれるんですけど、「ぶたれそうになったら安全なところに移動させてくれ」と言う親御さんは多いですね。それが勉強だと思ってない。ちょっとしたトラブルで「この園は合わない」と、すぐ辞めさせてしまう人もいます。以前、1歳の子が公園の砂場で転んで、頬が少し赤くなってしまったんです。そしたら、親御さんはすぐに病院に連れて行って、こちらに不満を言うことなく、退園してしまいました。でも、砂場で1人の子とずっと手をつないでいるなんて無理。

小阪 それは、子どもをお人形として見ているんですかね。自立を望んでいなくて、自分の大好きなお人形でいてほしい、と。

角川 子どもがそうやって成長していくということが、わかっていないんでしょうね。その子の場合、転んだことに加えて、何度か洋服の取り違えがあって。「この保育園は、うちの子を見てないんじゃないか」と思ってしまったようです。

小阪 些細なことで「うちの子を見ていない」といった意識が働く親御さんはいますね。

角川 入園してきたばかりだし、記名もしていないのに、洋服の間違えは仕方がないですよ。

小阪 保育士の仕事がリアルに考えられないし、考えるつもりがないんだと思うんです。このスタッフの数で、これだけの子どもたちがいて、第一優先は「安全」でしょう。いくつか優先順位がある先の先に、“洋服”がある。結局、自分の子どものことしか考えていないんですよね。もちろん、なくしたり間違えたりしないように最善は尽くすけど、もうちょっとご理解いただけるとありがたいですね。

角川 スタッフがマスクをしているからか、「笑顔がないから怖いです」というクレームを受けたこともありました。保育はサービス業だと思っているので、そのときはスタッフに「マスクをしていると、120%の笑顔で普通に見えるんだよ」と伝えました。保護者のクレームは私が全て受け、保育士に伝えています。過保護な世の中になっているのは確かだと感じます。

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小阪 ちょっとズレた考え方を持っている親御さんを目の当たりにしたとき、胸が痛むじゃないですか。その感情との向き合い方が、いまだに見つけられません。この子の将来どうなるんだろうと思いつつも、決定権は親御さんにあるから、どうにもできない。すごく悩みますね。

角川 そこは、保育園は立ち入れない。

小阪 角川さんのように、角川さんの理念をリスペクトした上での入園は理想的だと思う。人って「この人の話は聞きたくないけど、この人の話は聞きたい」ということが絶対あるので、リスペクトしている人の言葉なら素直に聞けますしね。

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