映画『Dressing Up』トークショーレポ

母の“狂気性”は娘に受け継がれるのか? 映画『Dressing Up』が与える“自分を見る視点”

2015/11/09 21:00
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「ドレッシング・アップ」

 年齢を重ねていく中で、容姿でも性格でも、母親と似ている部分を感じた瞬間はないだろうか。切っても切れない母親との関係は、時に呪縛となって娘を襲ってくることがある。

 映画『Dressing Up』は、父子家庭で育った中学1年生の桜井育美(祷キララ)が、死んだ母親のことを探るうちに、それまで知らなかった母の狂気的な一面、また自分自身にも母と同じような部分があることに気付いていくというストーリー。死んだ母親への憧憬と大人に近づくことへの焦燥、母親を通して露わになった父親への嫌悪などの交錯した感情の中で、少女が孤独ながらも自らと必死で対峙していく姿が映し出されている。全編を通して画面から伝わってくる不穏でおどろおどろしい雰囲気が、かえって物語のリアリティや撮影当時小学6年生だった主演女優・祷氏のみずみずしさを感じさせる作品だ。

 本作は渋谷シアターイメージフォーラムで公開され、先日、同会場にてトークイベントが開催された。登壇者は安川有果監督、アーティストで文筆家のヴィヴィアン佐藤氏、映画監督の船曳真珠氏の3者だ。

 本作の中で、育美の母親は精神的な障害が原因で強い暴力性を持っていたことが判明し、育美も内なる破壊願望から、学校で問題を起こすシーンが描かれる。安川監督は、「これは育美が母親から純粋に暴力の遺伝子を受け継いだという簡単な流れではなく、娘が自分から積極的に母親になろうとした姿を描いた」のだと言う。

 1986年生まれの安川監督は、本作を撮影した25歳当時を振り返りながら、「自分たち世代は映画でも何でも、すでに出し尽くされた中で常に誰かの物真似になってしまう意識があった」と語る。オリジナルや本物に近づきたいという自身の焦燥感を、育美に重ねたようだ。

■対比される、父子家庭と母子家庭の女の子

 また劇中には、父子家庭の育美と対比させるように、母子家庭で育ち、学校の授業で「将来は母親のような人間になりたい」と発表する同級生の長谷愛子(佐藤歌恋)が登場する。育美は、新しい学校に転校したての身で、孤独ではありながら、いじめを繰り返す不良男子グループに立ち向かう。一方、愛子は女子数人で仲良しグループを結成し、気になる男子とも楽しそうに会話をかわすなど、キラキラした女子中学生として描かれている。

『母と娘はなぜこじれるのか』
娘は、母に近づいたり離れたりを繰り返していくのかも
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