【EXOは東方神起を超えるのか?】第3回

EXO、中国人メンバー離脱で崩壊近づく世界観――「東方神起の後継者」という行く方

2015/11/15 16:00
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『@star1』vol.27

 過去2回の連載で、わたしは、東方神起の継承権を持つのはEXOである、と述べた。東方神起ファンからは、大きな反響をいただき、それは「トンロスを埋めるもの、彼らに取って代わるものはない」という予想通り厳しい反発だった。

 そもそも、東方神起とEXOは日本での立ち位置が大きく異なっている。前者は日本に居を構えたJ‐POPアイドルで、後者はあくまでK‐POPアイドル。イベントやライブのたびに日本を訪れるEXOは出稼ぎ状態にあると言ってよい。だからこそ、前述のファンの反発には強く同意するし、東方神起は東方神起、EXOはEXOという独立したアイドルだと思う。

 が、何度も言うように、所属事務所のSMエンターテインメント(以下、SM)、そして日本の所属レコード会社・エイベックス的には違う。彼らはゆえあって“東方神起の次はEXOだ”という空気を日本で積極的に醸成していかねばならなかった。それを裏付けるように、レコード会社のEXOへの宣伝費はハンパなかった。日本デビューに際し、レコード会社は“渋谷ジャック”を謳い、渋谷の駅構内を始め、いたるところに彼らのポスターやボードを掲示した。そこには“ポスト東方神起”なんて文字はないが、SUPER JUNIOR(SHINeeはレコード会社が違うので検討対象としない)以上の宣伝費がかかっていることは、否が応でも体感せずにはいられず、渋谷への絨毯爆撃は“東方神起の次はEXOだ”というレコード会社の思いを物語っていた。では、なぜ? それはEXOが自分たちの独自性をフルに打ち出せなかったからだ。

◎世界観を司る“設定”の重要性
 EXOは当初、こんな設定があった。宇宙から地球に不時着して記憶を失くした12人。彼らは、違う世界でお互いのことに気付かない2群の双子、EXO‐KとEXO‐Mに分かれたという神話めいたものだ。日本デビュー曲「Love Me Right ~romantic universe~」にも月、宇宙、銀河、といった言葉を散りばめて宇宙人ぶりをアピールしているのも、彼らが太陽系の外の惑星出身ゆえに他ならない。

 Kはコリア、Mはマンダリン(中国語)を指し、EXO‐Mには4人の中国人(正確には3人の中国人と中国系カナダ人1人)が在籍していた。が、昨年、うち2人が事務所に対し、専属契約効力の不存在確認訴訟を起こし、事実上離脱。昨年末のジャパンツアーでは、残留組の中国人・タオが「デビューしてから、いろんなことがありましたが、ファンのみんながいてくれて、感謝しています」とコメントしたが、「いろんなこと」とは、仲間2人が去ったことも含まれるだろう。そして、今年に入って、そのタオも離脱。この段階で中国人メンバーは1人となり、日本デビューを前にしてEXOの土台となる神話は崩壊寸前となった。彼らの依って立つ世界観の足元が崩れたことで、独自性を打ち出すチャンスを削がれてしまったのだ。

 10月23日、事態はさらに深刻化した。日本で初のドームツアー直前、日本の公式ホームページが下記の文章を掲載した。

「この度、EXOメンバーであるLAYの出演が困難となりましたため、本ツアーを欠席させていただくことになりました。中国での個人活動により、スケジュールの調整が困難になったため、LAYの本ツアーへの参加を見送らせて頂くことになりました」

 LAY(以下、レイ)とはただ1人残った中国人メンバー。理由となった「中国での個人活動」は今年設立された“レイ工作室”に管理され、そこにはSMの意向も反映されるはずだった。だが、結果的にレイの意思が優先されたようで、推測するなら彼を説得しきれなかったということだろう。実際、EXOの日本進出はレイを欠いたまま行われ、そして経験則に基づけば、彼の離脱も避けられないのかもしれない。

 現在、ネット上ではこんなうわさが飛び交っている。レイが来日しないのは、日中間の問題により、日本語で歌うことができないから、なのだと。このうわさを信じきっているファンもいるのだが、こんなことは決してありえない。これは、レイが個人活動を優先させたことを信じたくないファンの集団心理が作り上げた妄想でしかなく、こんなバカげた言説がまかり通るほど、みなショックに打ちひしがれているということだろう。

 レイの脱退という最悪の事態になった場合(恐らくはそうなるのであろう)、EXO‐Mは中国人メンバーをすべて失うこととなる。EXO‐Mが韓国人2人になれば、マンダリンで歌い中国で活躍するEXO‐Mは成立しなくなる。そして対となるEXO‐Kも成立しない。結局のところ、MもKも、1つのEXOへと発展的解消を遂げ、神話性を欠く、1つのK-POPアイドルになってしまう。

 またライブ中、ファンは「WE ARE ONE」と声援を送るのだが、それは“EXO‐KとEXO‐Mで1つ”、“EXOとファンは1つ”という意味だ。EXO‐Mが存在感を失えば、前者の意味もなくなり、「WE ARE ONE」という言葉も空しく響く。レイの脱退が確定した時、ファンはライブ会場で何と声を上げればいいのだろう?

 EXOはMとKがあってこそのEXOだった。EXO‐Mが崩壊しようとしている今、EXOはデビュー以来、最大の危機を迎えている。単なるK‐POPアイドルに堕しないためにも彼らには“東方神起の後継者”という舞台装置が必要となるのだ。
(小野登志郎)

最終更新:2016/02/23 15:28
『@star1 6月号 表紙 EXO (韓国雑誌)』
9人バージョンの設定、今考えてっからちょい待ちで!(イスマン)
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