[女性誌速攻レビュー]「nina’s」11月号

ビジネス誌のスーパーママ礼賛記事より読者に追い込む、「nina’s」の復職特集

2015/10/30 20:00

■パパの働き方は変えられない、という悲しい前提

 続いて紹介するのは、最近「nina’s」でよく見かけるようになってきた復職企画。「産後復帰はいつにする? ママのお仕事復帰計画」です。海沿いの一軒家で子どもたちのかわいい成長記録をインスタにアップしたり、梅仕事したり刺繍したりしながら日がな一日ほっこり暮らせる人などごくわずか。リードには「『育休が明けるから』『子どもが入学・入園して時間ができた』『社会の空気を吸いたい』…様々な思いで復職するママたち」とありますが、いやいや一番はマネーでしょうがマネー。

 さまざまな職業のママたちに復職までの道のり、大変だったこと、仕事と家庭を両立するための工夫、復職後の1日のスケジュールなどをインタビューしています。さまざまな職業のママといいながら、登場するのがブランドプレス、美容師、輸入こども服セレクトショップ、アパレル、ヨガ講師などあまり一般向けでなさそうなところはご愛嬌。あ、お一人医療事務の方がいらっしゃる……と思いきや、次のページが「ニチイで資格」の広告でいろいろ察しました。

 しかしその実、厳しい復職の現実いや働く母の現実が浮き彫りとなっています。とあるブランドプレスのママの1日は6時起床からスタート。子どもたちに朝食を食べさせてその間に身支度、8時に出社するパパに「娘を保育園に送ってもらう」、18時に帰宅して夕食準備、夕食を食べたら子どもと遊びタイム、21時半に子どもと一緒に就寝するも23時に一度起きてパパの夕食準備、家事、24時にパパの夕食にお付き合い……ちなみに土日は平日の食事の下準備に費やすそうです。深夜に起きてパパの夕食準備をしているママが多数いたことに驚きを隠せません。というか、「娘を保育園に送って“もらう”」って、そんくらいしなさいよアンタ!

 仕事が多忙で帰宅が深夜になることもあったというママ。「(息子に)『帰るのが遅くなってごめんね』と言うと、怒ったような、悲しげな顔でこう返されました。『ゴメンって僕が一番嫌いな言葉を言うママは、ママの形をしたニセモノだ!』あまりに衝撃的な一言でした」。この一言から転職を決意。週2~3回時短ベースに切り替えたところ、親子関係も驚くほど良好になったそうです。「仕事ONLYはダメ! 家族第一です」とこちらのママは語っていました。

 「家族第一」とは働くママにとっては呪いの言葉。あくまでもやることは専業主婦と一緒で、そこに職業という別種のタスクを背負い、常に“子どもに寂しい思いをさせているのではないか”という負い目と戦わなければなりません。この「復職ママたち」を見て“あぁ私も働きたい”と思うママがどれほどいるのでしょうか。子どもに反抗的な態度を取られたからといって働くスタイルを変えることができるほど、キャリアと才能を持ったママがどれほどいるのでしょうか。ビジネス誌におけるスーパーママ礼賛記事より酷なのは、この「家族第一」の旗が読者の心にキョーレツにはためくからでしょう。これこそ、オシャレの皮をかぶった昭和良妻賢母の雑誌「nina’s」の本領なのかもしれませんが……。
(西澤千央)

最終更新:2015/10/30 20:00
nina's(ニナーズ) 2015年 11 月号 [雑誌]
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