子宮の声に従い、やりたい放題! 子宮系女子界のカリスマによる非常識な万能感

 豊作に感謝をささげる〈秋のスピ本祭り〉第2弾(第1弾は、森三中・大島美幸氏の妊活本でした)。今回の収穫物は、子宮系女子のNo.1=子宮委員長はる氏初の著書『子宮委員長はるの子宮委員会』(KADOKAWA)です(この一文だけで、4回子宮って書いた……!)。

 当連載でもご紹介済みですが、子宮系女子とは〈女の幸せは、子宮を大切にすることから〉という思想を発信する一派です。その中でも子宮委員長はる氏は〈子宮の声〉というキーワードで、自身の体験といろいろな宗教をごった煮にしたかのような子宮説法をするのが特徴。なんでも子宮の声を聞くと魂の欲求が理解できるようになり、その欲求に忠実になると人間関係がよくなり愛されてお金も手に入りトラウマも解消され心と体が健康になり……ミラクルが起こる! のだとか。子宮って万能! 宇宙! マーベラス!

 著者のそんな喜びが詰まった人気ブログ(1日19万アクセス)がこのたび加筆修正され、書籍化という運びになった模様です。

 同書では子宮委員長の体験談をひもときながら、その要約を〈子宮の声〉という体裁で強調し、読者へ幸せのあり方を投げかける構成となっています。それは一体どんな声なのか、以下、一部を引用してご紹介しましょう。

・あなたが子宮(自分)を大切にしないから、あなたが社会から大切にされないんだよ by 子宮
・つらい人生変えたかったら、まずはわたしを温めてよ!by 子宮
・好きなものを食べ続けるときれいになれるよ by 子宮
・感情がたまってて、赤ちゃんが入れられないよ~ by 子宮

 プロローグでは〈本当の自分の声〉を〈子宮の声〉と表現して、すべてがうまくいく秘訣を発信してきたとあるので、これはなにかの比喩なのね……? と思いきや、読み進めるにつれ、具体的な健康話になってくるので、読んでいて頭の中が大混乱。〈子宮が脳を司る!〉と言い、子宮を温めると思考も柔軟になりトラウマもデトックス! なんだとか。逆に冷えていると、子宮に自己嫌悪や妬みがたまるといいます(どうやってたまるんだろう)。

◎子宮から感情が解放される?

 子宮委員長は精神疾患、子宮頸がんや子宮筋腫を経験し「その時の子宮の冷えはハンパじゃなかった」と語られていますが、こちらも〈心が凍った〉などの応用版かと思っていたら、本当に冷えていると感じたそうで、岩盤浴など物理的に温めるお手当を実行。そして温めケアやセックスで子宮が活性化されると、体も心も底力が出るといいます(ちなみに子宮を温めるには、膣を使うことも大事だそう)。最も大事なのは、生殖器を温めるとため込んでいた感情がブワワと解放されるので、そこで自分と向き合うこと。ちなみにそのとき、感情が下から上へと出ようとするため、喉を傷める人が多いんだとか。

 これは、精神の話なのか物質の話なのか。心と体は連動しているとはいえ、混沌の極みです。〈生体エネルギーは下から上に流れる〉という説明も同書にありましたが、どれもこれも一体何が根拠なのかよく分からなすぎて、数ページおきにびっくりぽん! 子宮をどう考えるかは自由に語ればいいけれど、病気や不調への言及って大丈夫なのかな~。

 ブロガーや講演会、個人セッション(しかも、いつの間にか90分10万円から60分10万円になっとる!)以外では〈おまた〉を温めるケアとして、布ナプキンの販売も行っている子宮委員長ですが、同書では布ナプを使えるかどうかで、女性の働き方もジャッジ。

〈布ナプキンを使えないほど忙しいなら、あなた本来の働きかたではありません〉

 手間がかかる布ナプを使うのが難しいハードな職場環境は、〈本当にがんばらないと稼げない〉〈頑張っても稼げない〉〈稼いでるけどパートナーとうまくいかない〉んだとか。つまり、体のリズムをじっくり観察できる程度に働き、パートナーとラブラブ☆ というのが、本来の働き方である、と……。うーん、愛があろうがなかろうが、生きていくために仕事はしますよね。仕事のモチベーションに愛が介在することはあるけれど、それが女性本来の働き方と言われると、ちょっとモニョモニョ。

 さらに〈子宮や骨盤まわりの血行は金脈や人脈につながっているので、ぽかぽか子宮になって子宮の声に従っていれば、必要なお金は自然と手に入る!〉〈女は外で働かなくていい、勉強しなくていい〉と豪語し、最終的には男がなんとかしてくれる、と悟ったそうです。

 同書掲載の著者プロフィールは〈恋愛・性愛アドバイザー〉ですが、元ネタであるブログでは〈現役風俗嬢〉を名乗っていました。そんな過去を持ちリスク大好き! と公言する著書に〈膣を使って子宮活性化、そうすれば自ずと儲かる〉と謳われると、子宮教というオブラートに包みこんだ売春肯定ととらえる人も出てきそう。

◎子宮の声は、すべての言い訳

 同書の帯にある〈女はぶっちゃけ生きているだけでいい〉〈自分のためのセックスは男も幸せにする〉というメッセージは、それだけ見るとフェミニズム(古くはウーマンリブ?)を思わせますが、実はその真逆で、〈子宮をポカポカに温めて感情のままに生きていれば愛されて、あとは男性がなんとかしてくれる〉というお説なので、むしろ真逆。「本当に女性を応援しているのか意味不明」と叩かれた安倍政権の〈輝く女性応援会議〉のほうが、多少マシに思えてきます。

 著者自身が子宮の声を聞いて具体的に何をしたかは、以下のとおりです。

・股を温め感情を放出! そして嫌な話は聞かず、楽になることや気持ちいいことを選び続ける修行をする。

・父親のわからない子供を妊娠→その後、現パートナーと結婚(避妊せずに複数の男性とセックスしたということ? 感染症や、そこからの不妊を招く可能性が高い行為、子宮に全然優しくないわー。むしろ子宮から、大抗議の声が聞こえてきそうです)

・気分次第で仕事はドタキャン

・子宮の声のままに「皿洗って!」「アイスクリーム買ってきて!」と要求(く、くだらん…)

・胎児が大丈夫といったから、妊娠中も酒、タバコOK(ここは子宮じゃないんだ)

・遠慮なく暴言、本音を口にしてたら、どんどん痩せた!

・嫌な縁は切り捨てると、自分に都合のいい縁がやってくる

 〈とにかく自分を責めず、何でも子宮のせいにしてやさぐれてみて!〉そんな子宮説法を読んでいると、女性万引き犯の「生理中でついイライラして……」という常套句を思い出しました。子宮の声に従って生きていると〈周りが変わる〉〈自分が思い描いていた環境になる〉とも言いますが、そりゃ常識的な人は離れ、残るのは非難も苦言も口にしない信者ばかりでしょうから、そうだろうよ~(バタリ)。

 さて、子宮委員長の教えを実践したらどんな女性ができあがるのか? ちょっと想像してみましょう。

 大金を手にするためせっせと膣を使い、固定観念にとらわれず、罪悪感を覚えることほどどんどん行い(言い訳は“全部子宮のせい”)、女はあせくせ働くなんてもってのほか、好きなものは好きなだけ食べ(膣があり、女である限り太っても愛されるそうですが、〈入れる穴があれば男は満足〉というようにも聞こえます)、自分にしか興味がなく、自分のためだけに生きる。手に入ったお金は魂が喜ぶことにどんどん使いましょう。私が幸せなら、それがパートナーの幸せでしょ?

 あ あ! あの女性を思い出しませんか……。

 そうです、まさかの木嶋佳苗!? 「自分のために生きている人は元気で低体温なんてならない」と子宮委員長は言いますが、木嶋佳苗もポカポカ子宮なのかな。そういえば木嶋佳苗も自分の性器はほかの女性たちとは違う〈特別仕様〉であると、信じていましたね。ご自慢の生殖器で自分自身にOK出しするのも、パートナーが喜んでくれるのも大変結構なことですが、妙な万能感を覚え出したらヤバげ!

◎それでも増えつづける信者

 2014年にアナ雪でも大ブレイクした〈ありのまま〉というフレーズは癒し界隈でよく使われる言葉でもありますが、〈好き勝手してもいい〉という意味ではないよなあ。〈罪悪感が消えて不道徳なことであっても自分の好きなように生きたら、世界はもっとHAPPYになる!〉とあるけれど、私にはものすごく自分勝手な人が増えた困った世界になるように思えます。世紀末の荒廃した世界で頭の悪い徒党が弱者に襲い掛かるヒャッハーな世界。そう感じるのは、子宮が冷えているからなんですかねえ。

 根拠がなくてもそこに“納得できる物語”があれば、布ナプキンだろうがデトックスだろうがオーガニックだろうがおまたぢからだろうが、人は信じたいものを信じるもの。しかしこの激しく雑な子宮説法で、納得する女性がどれくらいいるのか……? ところがセミナーを告知すればすぐに予約で満席、ブログは1日19万アクセスだといいますから、もしや既に、世は末なのか。

(謎物件ウォッチャー・山田ノジル)

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