【messy】

うるつやピンク☆女性器美白ケア

2015/10/20 20:00

お顔に塗った美白クリーム、あそこにも塗っていいかしら――お手入れしたらしたで“ビッチ”扱いされ、お手入れしないならしないで“だらしない女”扱いされる不思議なパーツ、女性器。人類が女性器に加えてきた、美白・脱毛・整形・装飾などなどの“女性器カスタマイズ”の歴史を、その背景や具体的方法とともに見ていきましょう!(連載・全10回予定)

◎で、でたーwww「ピンクの女性器=純潔」みたいなこと思ってる奴wwww

 女性器の美白について書こうと思うんですけど、資料収集中に恥ずかしくなってしまいました。女性器について調べることが、ではありません。エロ小説における女性器の色についての描写を読むことが、です。

 たとえば、こういうやつ。

これまでわたしはそんなきれいなピンク色の女性器を見たことがなかった。お前は誰ともまだお×××をしていないでしょう。万里がそう言って、栞が泣きだすのがわかった。
――村上龍「The Mask Club」(幻冬舎文庫)より

 ピンクの女性器=処女、だそうです。ピンクの女性器=処女、だそうですよ。

 そうなんだ、すごいね!(AA略)

 この発言をしたのは村上龍氏ではなく、もちろん作中の登場人物なわけですが、それにしても正味これ、登場人物がものすごい童貞中学生オーラに光り輝きながらミステリーである本作品の雰囲気をブチ壊した瞬間でした。

 調べてみるとその他にも、同様の表現をしている小説は色々出てきました。ですが、そのうち調べるのをやめました。男が女に向かって「君の女性器は黒ずんでるねえ。どうして黒ずんでるか教えてあげようか? んっ?」みたいなことを言ってる官能小説に遭遇したあたりから。

「自分は女性器を知ってる」アピールで他人を犠牲にするな、と。

 別に、俺は女よりも女の体を知ってるんだぞってことにしないと落ち着かない系男子にキレたいんじゃないんですよ。ご勝手に、と思うだけです。ただ、そういう人たちの「君の女性器は黒ずんでるねえ。どうして黒ずんでるか教えてあげようか? んっ?」みたいなやつで女子が悩み苦しみ変なサプリを飲むようなことだけは、決してあってほしくないんです。

 処女崇拝に付き合う女も大変ですよね。四半世紀前の本にだって、「自分は処女なのにもう黒ずんでいる、そのために処女だと思われなかったら困る(1)」という女性の話が出てきます。またインドでは二〇一三年、女性器美白リキッドソープのCMが流され、その商品に有害な化学物質が含まれていることが判明し、あげくの果てには「お前、肌の色の黒い人が下級カーストとして差別されてきてるインドで『彼氏のために女性器美白☆』とか言ってんの!?」ってことで国際的に炎上した事件もありました(2)。

◎女性器がピンクかどうかは、人種や性交経験で決まるものではありません。

 たとえば、二〇〇五年の「国際産婦人科ジャーナル」には、こんなタイトルの論文が発表されています。

「女性器の外観~“ふつう”の解体」(3)

 こちらの論文によると、人種に関係なく集められた50人の女性のうち41人が、周辺部の肌より濃い色の女性器をもっていたというのです。

 また、皮膚科医の吉木伸子氏も、その著書で「(乳輪や陰部の色は)その人の体質であって、男性関係とは無関係です」と断言しています(4)。その色は人により、ピンク、赤、ブラウンなどと、まるで口紅の色みたいに様々なのです(5)。

 ですからもう女性器に関しては、ありのままでいいと思うんですよね。世界にひとつだけの女性器ですよ。取り除くべきなのは女性器の黒ずみではなく、「黒い女性器=ヤリマン」という俗説とか、「ヤリマン=悪いこと」という価値観を押し付ける行為のほうだと思うのです。

 ……ということを踏まえた上で、最後に、現在女性器美白のために世界で流通している美容法を淡々と挙げていきたいと思います(6)。

◎女性器美白法・イン・ザ・ワールド

・デリケートゾーン美白化粧品として宣伝されているものを塗る
・シミ取り用のレーザーを当てる
・黒ずみ部分を手術で切除する
・ケミカルピーリング(※化学薬品で肌の表面をすこしだけ溶かす施術)を行う
・レモンやライム果汁をはちみつと混ぜて塗る
・ヨーグルトを塗る

 ……いかがでしょうか。かく言う私も、以前叶姉妹ブログで乳首美白法(ヨーグルトにはちみつとはとむぎパウダーを混ぜて塗る)を読み、「これは女性器にも使えますか?」って書こうとしてためらった経験があります。

 私は、女性器美白を良いとも悪いとも言いません。ただ、これらの女性器美白法が、「他人に黒いと言われたくないから」じゃなくて「自分がピンクにしたいから」行われていることを祈るばかりです。

 自分の女性器の色くらい、自分の思うままにしたいですよね。よかったらあなたが思う女性器の色についてのご意見も、コメント欄で教えてくださいね!

参考文献
(1)上野千鶴子著『スカートの下の劇場: ひとはどうしてパンティにこだわるのか』(河出書房新社, 1989)
(2)フランスのマリ・クレール誌WEB版(http://www.marieclaire.fr/,inde-blanchir-vagin-publicite-polemique-decolorant-eclaircir-sa-peau,701207.asp)、イギリスのデイリーメール紙WEB版(http://www.dailymail.co.uk/news/article-2128854/Vagina-lightener-Indian-company-launches-intimate-wash-designed-lighten-vagina.html)ほか報じる。2015年10月8日閲覧。
(3)英文原題は“Female genital appearance: ‘normality’ unfolds”、Jillian Lloydらによる。BJOG: an International Journal of Obstetrics and Gynaecology 2005年5月 Vol. 112, pp. 643 – 646に発表
(4)吉木伸子著「いちばん正しいスキンケアの教科書: 吉木メソッドで美肌になる!」西東社, 2014年
(5)Debby Herbenick, Vanessa Schick著「Read My Lips: A Complete Guide to the Vagina and Vulva」Rowman & Littlefield Publishers, 2011
(6)女性器美白法については、Med-Health.net (http://www.med-health.net/Whiten-Pubic-Area.html)、スキンケア大学(http://www.skincare-univ.com/article/003118/)ほかを参考にまとめました。

牧村朝子
1987年生まれ。タレント、文筆家。2013年にフランス人女性と同性婚、現在フランス在住。セクシャリティをテーマに、各種メディアで執筆・出演を行う。将来の夢は「幸せそうな女の子カップルに”レズビアンって何?”って言われること」。twitter:@makimuuuuuu ブログ:http://yurikure.girlfriend.jp/yrkr/

最終更新:2015/10/20 21:23
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