吉野一枝先生インタビュー

豆乳を飲むと「生理痛軽減」「ダイエット効果あり」!? ネットのうわさを婦人科医がジャッジ

2015/10/31 17:00

――では、豆乳を飲むことで女性にとってうれしい効果は特にないということでしょうか?

吉野 豆乳自体は栄養価も高く体にいい食品ですから、健康の側面からも摂取することはおすすめします。ただ、女性ホルモンにまつわる影響を期待して飲むと、望む効果が得られるとは限りません。それはまた別物です。

 先ほど、「生理痛を和らげたい」という話が出ましたが、だったらピルを飲むのが一番。ピルは排卵を抑えてくれるので卵巣の疲弊を防いで卵巣がんのリスクを下げますし、子宮内膜が薄くなって経血の量が減るので、生理が軽くなります。それにより、子宮体がんのリスクも下がるし、子宮筋腫や子宮内膜症、不妊症などの予防にもなります。生理周期のコントロールもできるし、ホルモンバランスによる精神の不安定も防げ、PMSや更年期の症状も軽くなるなど、避妊以外に女性にとってうれしい効果がたくさんあるんですよ。

――ピルは副作用など怖いイメージが強く、抵抗がある人も多いような気がします。

吉野 ピルの血栓リスクは4倍と述べましたが、3カ月ほど気をつければ体が慣れて血液が固まりにくくなります。ちなみに、血栓のリスクは妊娠中は約13倍、出産後12週目くらいで30~40倍に上がるんです。ピルをやめて妊娠した方がよっぽど怖いということになりますよね(笑)。

 正しい知識がないままリスクだけを聞いて怖がる人が多いけれど、真偽を判断する知識もないまま、ネットから根拠のない情報を入手して惑わされている人がたくさんいます。豆乳にまつわるウワサも、ピルを必要以上に怖がって、代わりに頼れるものとして注目されたのでしょう。婦人科に来れば正しい知識が身につきますが、日本は婦人科に通う習慣すらありませんよね。ピルの普及、婦人科の利用など、女性の健康に関して日本は海外から100年遅れをとっているともいわれています。正しい知識を身につけて、氾濫するウソやウワサに惑わされないよう、賢く自身の健康を守ってくださいね。
(取材・文=千葉こころ)

吉野一枝(よしの・かずえ)
産婦人科医。高校卒業後、フリーター、コマーシャル制作の会社勤務を経て、29歳の時に医学部受験を志、32歳で帝京大学医学部入学。卒業後は、母子愛育会愛育病院、長野赤十字病院などに勤務。2001年、臨床心理士資格取得。03年、よしの女性診療所を開院。著書に『母と娘のホルモンLesson』(メディカルトリビューン)などがある。

最終更新:2015/11/02 14:32
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