[連載]おばさんになれば"なるほど"

「おばさん」になるのは案外悪くない。中年の50代女性が得るもの、手放すものの豊かさ

2015/10/17 17:00

◎中年を過ぎて手に入れられるもの
 したいこと、できることが絞られてくるように、人間関係も徐々に整理されてきます。若い時は、なるべくいろんな人に会って交流を持ちたい、友だちもたくさん欲しい、仕事上豊富な人脈を築きたいと「繋がり」の多さを求めていても、それらをずっと維持し続けることは大変です。「繋がり」はただ多いより、少なくても濃い方がいい。おつきあいは厳選し、そこにかけていた時間やお金や体力をちょっと温存しておこう。そういう気分と共に、賑やかだった人間関係も、中年を過ぎて徐々に落ち着いていきます。

 その一方で、中年後期は「再会の時代」でもあります。久しぶりに同窓会に出席し旧交を暖めた、というケースもそうですが、家庭や仕事に追われて過ごしてきた30代、40代を経て、ふと「あの人、今頃どうしているだろう」と懐かしい顔を思い出し、連絡を取ってみようという気になるのがこの年代。

 昔行っていた店に顔を出したら、偶然知古が来ていて声をかけられたとか、最近知り合った人が昔の友人と仕事で繋がっていた、などというケースにも遭遇します。ネットがない頃であれば引っ越ししてしまってわからずじまいだったのが、今はSNSなどを通して再会することもよくありそうです。私自身、40代半ばで始めたブログがきっかけで、若い頃にお世話になった人や、20年以上前の予備校の教え子(すでに40代)から連絡が来たり、なんとなく仲違いして10年以上たっていた人と和解したり……ということが、50歳を過ぎてから続けてありました。

 交流が途切れても、長い人生の中で、会うべき人にはきっといつか再会するものなのです。そして再会のドキドキと楽しみは、それまでの時間が長ければ長いほど大きい。まず、互いに外見的には「年相応に老けたなぁ」、でも中身は「本質的に変わらないな」という確認。次に今、何に愛情を注ぎ、周囲とどんな関係性を作っているかについての、驚きや共感。そして何より、「お互い頑張って、ここまではなんとか生き延びてきたわけだよね」という感慨。この年代の再会とはもしかしたら、広い戦場で古い戦友に巡り逢うようなものかもしれませんね。

 かように、“おばさんになればなるほど”、人生は面白く味わい深い顔を見せてくれる。そう考えると、歳を取るのも案外悪くないものだなと思いませんか。
(大野左紀子)

大野左紀子(おおの・さきこ)
1959年生まれ。東京藝術大学美術学部彫刻家卒業。2002年までアーティスト活動を行う。現在は名古屋芸術大学、京都造形芸術大学非常勤講師。著書に『アーティスト症候群』(明治書院)『「女」が邪魔をする』(光文社)など。共著に『ラッセンとは何だったのか?』(フィルムアート社)『高学歴女子の貧困』(光文社新書)など。
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最終更新:2019/05/21 16:53
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