創刊号からセックス特集を組んだ新雑誌。謎人選により微妙すぎる内容に…

 雑誌でセックス特集が組まれるのは、年に一度が相場(数年前の『an・an』は毎号のようにやっていたけど)。それを創刊号から大々的に特集しちゃった、と話題になっているのが、新雑誌『MARIA ORIENTE』です。なかなかパンチのあることをするなぁ。

 しかもターゲット35~45歳というのは、いままであまりないですね。『an・an』にしても、先日ディスりまくった『GLITTER』にしても読者層はアラサーぐらいまで。個人的には『婦人公論』の性愛特集がとても好きですが、年齢層はぐぐっと上がります。35~45歳というのは大きなライフイベントを迎える人が多く、個人差はあるものの身体的にも人生の後半戦に向けて少しずつ変化していきます。そんな悩み多き世代の性についてアンサーを提示してくれるなら、私自身の将来への不安も緩和されるかも、という気持ちで手に取りました。

 でもでも、冒頭にある編集長からの〈EDITTOR’S LETTER〉を読むと、本誌の読者としてイメージする女性を「性に関する本能と、海よりも広い母性を両立させることができる女性」としていて、思わず身構えました。女性は生まれながらにして母性が備わっていて、誰もがそれを大いに発揮すべし、という考えは、たいへんツライ。おまけに、「女性にはそんな聖母的な一面と娼婦のように淫靡で欲深い一面がある」といったようなことも書かれてあり、えっ、それってよくいう「昼は貞淑な妻、夜は娼婦」じゃない? そんな男性のご都合主義を具現化したような女性像を求められても……と腰が引けました。

 が、総じて見ると、おかしな母性の押し売りはナシ。妊活の特集ページもありましたが、そこではテレビなどでも活躍されている医師の友利新さんが有益な情報を発信されていたので、胸をなでおろしました。

◎なぜこの人が性や愛を語るの…?

 という具合に、その内容を語るにふさわしい人に取材したページもあるのですが、全体的には人選がな~んか微妙すぎ!! タレントのMEGUMIさんを「現代を象徴するタイムレスビューティ」としたり(いつそうなった?)、マーク・パンサー氏が恋愛を語ったり(彼から恋愛を学びたい人っている……? まぁイイ話ではあったけど)、恋愛工学の藤沢数希氏が「アラフォーのキャリアウーマンはモテる!」というコラムを書きおろしていたり(女性を対等な相手として尊重しないナンパ術を語る男に、そんなおためごかしをいわれても)……ツッコミどころ多すぎ。

 トホホなレベルで済むぶんにはいいのですが、恋愛科学監修&医療アナリストの荒牧佳代さんの監修ページもありました。この方、例の『GLITTER』でもフェロモンとホルモンをわざと混同させて、「ホルモン出してフェロモンで男を惹きつけろ!」と主張されていたんですよね。この『MARIA~』でも、「女性の知性は、よほど高めないとただ計算高いと思われがち」と解釈できる記述があったり、「女性は好きな男性の情報を常にインプットして管理したがる性」という根拠のないレッテル貼りが頻発していたり。ある意味、期待を裏切りませんでした。

 本誌でも、ホルモンを増やしてフェロモンを出そう的なページがありますが、これは荒巻さんとは無関係の広告ページです。ヒトのフェロモンって解明されていない都市伝説的なものだし、ホルモンと関係ないし、ホルモンって増えればいいってものでもないし、そのへんのことをちゃんとわかっている女性も増えているんだから、いい加減、この手の記事はやめたほうがいいと思うのだけど……。

 そして、肝心の「無限に広がる快感の世界」特集について。監修者に山下真理子さんの名前があるのを見て、脱力しました。これまでも〈女医〉の肩書で数々のコラムなどを書かれ、著書もある方ですが、ときにそのトンデモな内容が良識ある医師を呆れさせ、また、医師免許は取得したものの医師研修を終えていないという指摘もなされてきた人物です。〈女医〉というのは厳密には資格を示す肩書ではないので、たしかに何かを騙っているわけではありません、医師免許取得というだけでも私のような凡人からすればスゴイことです。その後、医師としてではなくタレントや文筆で活躍されているので、そうした体験を通して得たものもたくさんあるでしょう。

 こうしたコンテンツを見るときに、「誰によって書かれたものか」「その人を自分は信頼できるか」の基準を持つことはたいへん重要です。医師だから信頼できるのか、医師でなくても信頼に足ると判断できる要素はあるか、ではどの肩書の人であれば自分は信頼できるのか……自分のなかで指針を持っておけば、「この記事は信頼できる」「私にとって役立つ情報なんだな」と判断しやすくなります。

 この方が監修しているというだけで、私が特集全体への信頼を失ったことはいうまでもないでしょう。しかし! 思ったほどトンデモな記述は見られませんでした。ただ、役立つ情報もまったくない……。この年齢の女性に「キスはコミュニケーション」「だから、その前に口腔ケア」をといったところで、「何をいまさら」でしょう。実体験の有無はともかく、そんなものいままで腐るほど読んできているはず。キスからオーガズムにいたるまで、すべて読者対象の年齢&成熟度に見合っていない、子どもっぽいアドバイスに終始していました。

◎精神論では、濡れない

 あとは精神論的なもの。たとえば、加齢によって濡れにくくなるのは事実です。が、そのための解決策として、ストレスレスな生活を心がけ、スキンケアやボディケアに磨きをかけるっていわれても……。後者は、若いころと比べて容姿の魅力が衰えて自信がなくなり、だから濡れにくくなるしオーガズムも得にくくなるから、という理屈のようです。たしかにそうした要因はなきにしもあらずかもしれませんが、自信を回復したって濡れないものは濡れないです。身体の機能が変化しているんだから。ローションを取り入れるなど、現実的な解決法は、いくらでもあります。

 マンネリを解消法も、「毎日のセルフケアを重ね、美しい肌やボディラインを維持して〈美の集大成〉をアピールすべし」といった提案がなされます。この山下氏のページにかぎらず、30代半ばを過ぎると容色は若いころより劣るので、ケアすべし! 知性でカバーすべし! という記述が本誌全体に散見され、私はかえってエイジズム(年齢差別主義)を感じます。〈若いころよりは劣るけれど〉〈でも、がんばっているので年のわりには美しい〉というのは、結局、年齢なりの美しさを肯定はしていませんから。んで、ひとりよがりに美を磨いても、カップル間のマンネリは解消しないと思いますよ。

 他誌でありがちなテクニックの紹介などは一切ないセックス特集。それはそれで潔いです。テクニックが重要だとは思いません。でも、ここまで希薄で幼稚な内容では、「セックスの奥深いところに踏み込めなかっただけでは?」という感想しか持てませんでした。読者対象の年齢をここまではっきりセグメントしているのに、その年齢なりのセックス観、その先に待っているだろう希望と問題、その具体的な解決法などなどがほとんど見られなかったのは残念です。

 ただひとつだけ、あっと驚いたことがありました。バイブバーの広告が掲載されていたんです! 一般的な女性誌で、こうまで堂々とアダルト色の強い店舗の広告が載るって、まずないですよ~。このアダルトど直球路線にしたほうが面白かったんじゃないかな。

■桃子/オトナのオモチャ約200種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。

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