話題の出会い系アプリは「抱ける女リスト」!? 男たちの“膜”を浮き彫りにする危険なツールの実態

【今回のPick upトピック】
出会い系アプリ「Tinder」

◎指一本で相手を仕分ける“ルッキズム”の権化

清田代表(以下、清田) 今回は、「いま一番出会える!」と評判のマッチングアプリ「Tinder(ティンダー)」を取り上げてみたいと思います。

佐藤広報(以下、佐藤) これは元々アメリカで大流行したアプリで、日本でも昨年あたりから広がりを見せてるみたいだね。

清田 Tinderの特徴は、何と言っても「超手軽」という点なんだよね。ネットを使ったマッチングサービスって昔からいろいろあるけど、「出会い系もここまで来たか……」って感じがした。

佐藤 例えば男性ユーザーなら、スマホの画面に女性(女性ユーザーなら男性)の写真が出てきて、「アリ(LIKE)」と思ったら右スワイプ、「ナシ(NOPE)」だったら左スワイプするだけ。指一本でサクサク仕分けしていく感じがおもしろくもあり、恐ろしくもある……。

清田 TinderはアカウントがFacebookと連動していて、扱う情報が名前(実名もしくはハンドルネーム)、年齢、位置、ログイン時間のみなので、登録の手間がほとんどかからないんだよね。

佐藤 で、アプリがそのときの位置情報を読み込み、数キロ圏内にいる女性の写真をランダムに表示してくれる仕組みになっている。自分の写真も同じ仕組みで女性側に表示されていて、お互い「LIKE」になって初めて個別にメッセージがやり取りできるようになる。

清田 出会い系のサービスってさ、以前は「精度」、つまり「相手に求める条件」を追求する方向で発展してきたと思うのよ。ルックスやスタイル、年齢や年収、仕事内容、趣味、好きな食べ物、家族構成、親との同居はアリかナシか……などなど、とにかくプロフィールを細かく設定し、自分が求める人物像にできるだけ近しい人を探せる方向に発展していた。

佐藤 例えばひと昔前に流行った「OkCupid(オーケーキューピッド)」というサイトなんかは、多い人で1000近くの質問に回答し、細かくデータを取った上で相性の度合いを割り出すという手法を採っていた。中にはセックスの好みや宗教観を問うような質問もあって、かなりディープな部分の相性まであらかじめ把握できる仕組みで。

清田 でも、現在の主流は「速度」、つまり「すぐに会える」ってポイントが重視されている。いま流行ってるFacebook連動型の「pairs(ペアーズ)」や「Omiai(オミアイ)」なんかも、この系統に属するスピード感重視のサービスだよね。

佐藤 Tinderは速度系の極北だよね。要するに、判断材料は「ルックス」のみで、あとはマッチングしてからユーザー同士で情報交換してくださいってサービスなわけで。

清田 このスピード感が流行ってる要因だと思うけど、いかにも現代的というか、何かもう“ルッキズム(外見至上主義)の権化”みたいなアプリだよね。そこはかとない恐ろしさを感じます……。

◎急増する出会い系サービスのネガティブエピソード

佐藤 「ならば私も……」と、ちょっと期待しつつTinderをやってみたんですが、正直、まったく出会えませんでした。結構やり込んだんだけど、相互LIKEにすらならない。これ、ホントに“いま一番出会えるアプリ”なんですか!?

清田 佐藤広報の場合は写真に問題があったのかもしれないけど(笑)、取材した限りでは、出会ってる人は結構いた。例えば知り合いの20代男子はこれで彼女ができたみたいだし、担当編集さんの知り合いにはTinderで見つけた彼女と交際三カ月のスピード婚をした男性もいるみたい。

佐藤 写真を盛り盛りのやつに変えようかな……。

清田 でもね、確かに出会いはあるらしいし、結婚してる人もいるんだけど、俺が観測した範囲では、アンハッピーな出会いになっているケースも多くて……。そう考えると、何が「出会い」なのかよくわからなくなってくる。

佐藤 なるほどね。もっとも、これはTinderに限った話じゃないけど、我々がやってる「失恋ホスト」にも、マッチングサービスで出会った彼氏との間に問題を抱えてやってくる人が最近マジで多いもんね。

清田 そうそう。今回取材させてもらった人の中には、Tinderだけでなく、pairsやOmiai、Yahoo!パートナーなんかを使ってる人もいたけど、ネガティブなエピソードがたくさんあったことが気になった。やはり一番多かったのは“ヤリ目”の男にまつわる話で、中にはデートレイプまがいの事例も……。

佐藤 マジで?

清田 うん。例えばある女性は、「国際弁護士」を名乗る男と出会ったんだって。それで食事後、「向こうにポルシェを止めてあるから行こう」と歩き始めたら、いつの間にラブホテル街に侵入してて、いきなり腕を引っぱられ、「いいから入ろう!」って強引に……。何とか逃げたみたいだけど、その男は大声を上げたりもしてきて、超怖かったみたい。

佐藤 それ、通報レベルでしょ。マッチングでデートしたからって、セックスまで合意なんてことないし。

清田 他にも、セックスした直後に連絡が途絶え、またしばらくしてLINEを寄越してくる王道のヤリ目男に会ったとか、デート中にたまたま相手のスマホでTwitter画面を見てしまい、後で検索してみたらナンパブログを書いてる男だったとか、そういう話が出てくる出てくる。

佐藤 うわっ、恋愛工学のニオイ……。そういえば失恋ホストでも、「僕は結婚相手にカラダの相性も求めたいから、一回ホテルに行こう」としつこく誘ってくる男とか、結婚願望をチラつかせてセックスに持ち込もうとする男の話とか、いろいろ聞きましたね。

清田 Tinderで結婚したというある女性からも話を聞いたんだけど、そこの夫婦は実はすでに離婚の危機にあるらしい。旦那がまだ出会い系アプリを使い、浮気を繰り返している疑惑が濃厚なことで、不信感が募っているとか。

佐藤 もちろん、「いい出会いがあればラッキー」くらいの適度な距離感でマッチングサービスを使ってる人も多いと思うけど、やっぱりちょっと怖いツールだよね。というのも、そういうしょーもないことをしてくる男って、別に全員がいかにもなクソ男ってわけじゃないでしょ。むしろ、ルックスもコミュ力もそれなりで、一見するとマトモな男の人が多い。

清田 実際、マッチングサイト経験者の女性たちから聞いたエピソードに出てきた男たちの中も、地方公務員、電鉄会社、大手広告代理店、外資系保険会社、小学校の教員など、身持ちの堅そうな職業の人が多かったね。

佐藤 まあ、国際弁護士は確かに怪しいけど、マッチングサービスの怖いところは、そういう“普通の男”が、わりと簡単にクソ男へ変貌しちゃう構造にあると思うのよ。Tinderなんかはその極北かもしれない。というのも私自身、これを使っているときに結構おぞましい気分になってしまいまして……。

◎“普通の男”をクソ男に変貌させてしまう構造とは?

清田 おぞましい気分ってどういうこと?

佐藤 Tinderを使っていて思ったのは、「街を歩いてる時みたいだな」ってこと。街で好みの女性がいると、ついつい見ちゃうじゃん。あれと似てるのよ。しかも、街だと怪しまれるからすぐ目を離すけど、スマホの画面ならガン見できる。何と言うか、値踏みをするような気分で隅々まで見てしまうわけです。

清田 カタログみたいな作りになってるもんね……。

佐藤 Tinderに出てくる女性の写真を見て最初に思うのは、正直「セックスしたいかどうか」ってことなんですよ。スタイルとかまで細かくチェックしてる自分がいて、アリなら指を右に、ナシなら左にスワイプして仕分けしていくわけです。NOPEにするときなんか、申し訳なさもありつつ、「キミはごめん、ナシだわ」って、ちょっと上から目線な気持ちも芽生える。

清田 風俗の客みたいなマインドだね。Tinderの使い方を教えてくれた知人男性は、「その仕分けが最高に楽しい」って言ってた。仕事の休憩時間にぶわーっと大量に仕分けしておいて、次の休憩時間にリアクションをチェックし、また大量に仕分けをする……というのを繰り返すのが毎日の習慣なんだって。彼はそれを「絨毯爆撃」って呼んでたけど、どことなく依存症感が漂ってて、少し心配になったわ。

佐藤 そのサイクルにハマる感じは何となくわかる。でも、最初こそ仕分けがエロくて刺激的だったけど、段々と切ない気分になってきて。というのも、Tinderって写真を複数枚アップできるんだけど、旅行、BBQ、ラテアート、砂浜、夕日、シャンパン、フレンチ、誕生日会、ハロウィン、クリスマスパーティ……みたいな写真がめっちゃあって。

清田 それが何で切ないの?

佐藤 そういうの見ちゃうと、「この人カワイイけど、海辺のソファーでグラサンかけてシャンパン飲んでる女子となんて友達になれねえよ……」みたいな気持ちになってきて、そっとNOPEにするわけです。

清田 出た、勝手に負ける男(笑)。

佐藤 女性の写真を見ていても、「山はいいけど、海は男の影がありそうで嫌だ」「カフェはいいけど、バー・クラブはナンパ慣れしていそうで嫌だ」「国内旅行はいいけど、海外旅行は自分と外国のイケメンを比べられそうで嫌だ」「メガネはいいけど、サングラスはなんかモデルみたいで怖い」……みたいな感じで、自分にとって脅威にならなさそうな人にしかLIKEをしない自分がいたわけですよ

清田 クソみたいなマインドですね(笑)。でも確かに、「Tinderにはギャルや外国人女性も多いけど、そういうのは避ける」って知人男性も言ってた。「行けそうな人(=拒絶しなそうな人)を嗅ぎ分ける」という点で、ナンパする男の心理にも似ているような気がする。

佐藤 そうなんだよ。例えば「このコとセックスしたいな~。でも自己主張が強そうだからナシかな~」なんて感覚に、できればなりたくないじゃないですか。それってダサすぎるし、しかも相手をまったく“人間扱い”していないわけで。でも、出会い系サービスの中には、男をそういう感覚にしてしまう構造が埋め込まれている。

清田 つまり、「安全なポジションからカタログを眺めるように女の人を値踏みする」という構造が、男を邪悪な気分に駆り立てると。

佐藤 そうそう。それが“普通の男”をクソ男に変貌させちゃう構造だと思うわけです。

◎出会い系サービスと男たちの“膜”。その密接な関係とは

清田 今回、Tinderについていろいろ調べる中で思ったのは、出会い系サービスって、どことなく「痴漢」の構造に通じるものがあるんじゃないか、ということで。というのも、漫画家の田房永子さんがウェブ連載「女印良品」(Love Piece Club)の中で「どぶろっくと痴漢の関係」というコラムを書いてたじゃない?

佐藤 すごく話題になった記事だよね。

清田 そうそう。その中で、田房さんは痴漢男の心理状態を“膜”という概念を用いて説明している。まず、それを端的に示している箇所を引用します。

“電車内痴漢加害をしている最中の者はやはり「自分の半径1メートルを覆う『膜』のようなもの」を持っていると感じた。自分の『膜』の中に入ってきたのは女のほうであり、なぜかその女のことを何をしてもいい「もの」のような感覚で捉えていて、そこから独自のストーリー(大抵は「女のほうが欲情している」というもの)を展開させ、それに沿って行動している。”

清田 この田房さんのコラムは本当に重要なことを言っているので、未読の人はぜひ読んでもらえたらと思うんだけど、“膜”って物理的な距離だけでなく、心理的な距離にも関わってくる話だと思うのよ。

佐藤 それが出会い系サービスとどう関係あるの?

清田 おそらく、ある種の男性にとって、出会い系に登録してる女性というのは「すでに“膜”の中に入ってる」という感覚なのではないか……。どぶろっく風に書けば、「Tinderやpairsをやってる女の子 もしかしてだけど 俺と出会って抱かれたいんじゃないの」って感じで。

佐藤 な、なるほど……。

清田 だってさ、初対面の女性に対し、腕を引っぱってホテルに連れ込もうとするなんて行為、普通するかね? これが合コンとか友達の紹介で知り合った相手だったら絶対にやらないでしょ。

佐藤 仮にホテルへ行きたかったとしても、最低限、コミュニケーションを重ねて合意形成のプロセスは踏むよね。

清田 だけど、出会い系で知り合った女性はそもそも“膜”の内側にいるから、サイト上でつながり、リアルで会うことさえできれば、100%セックスできるとどこかで思っている。「だってそういうつもりでしょ?」くらいの感覚で。だからデートレイプまがいのことができちゃうし、そこまでしないにしても、「つき合う前にカラダの相性を確かめたい」みたいなセリフを堂々と言えちゃったり、セックス後のコミュニケーションが雑になったりするんだと思う。

佐藤 Tinderのインターフェースに触れていると、何か物件サイトを見ているような感覚になったんですよ。それって完全に“選ぶ側”のマインドってことだよね。私の中にも“膜”の感覚があったのかもしれません……。

清田 もちろん、これはあくまで心理や感覚の話なので、実際の発言やアクションに移すかどうかはまったく別次元の問題だと思うけど、仮に出会い系サービスが男の中にこういった感覚を誘発するものだとするなら、やっぱり“取り扱い注意”のツールだよね。

佐藤 アプリやサービス自体に罪はないし、基本的には大人として自己責任で使用してくださいって話だとは思う。だけど、背景にこういう構造があるかもってことは、頭に入れておいて損はないかもね。「恋愛したい」という意思を持つ人同士をダイレクトにつなぐ出会い系サービスって、一見すると合理的なツールに感じるけど、相手のことを知るにはそれ相応の時間やコストがかかるでしょ? そういうプロセスも一緒にスキップしちゃうわけで、逆に効率悪いんじゃないかという気もしてきたわ。

清田 ネット恋愛にまつわる名著中の名著『ドット・コム・ラヴァーズ──ネットで出会うアメリカの女と男』(吉原真理/中公新書)にも、「人と人との関係を深めていくのに必要な、そうした当たり前の労力を、インターネットというメディアが減らしてくれるわけはない」とある。そう考えると、出会い系サービスって成熟した大人じゃないと使いこなせないものだと思う。

佐藤 出会いを求めて真剣に利用してる人には申し訳ない話になっちゃいましたが……ネガティブなエピソードが多いのも事実なので、引き続き自分たちの内なる“膜”について考えていきましょう。

■桃山商事/二軍男子で構成された恋バナ収集ユニット「桃山商事」。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆など、何でも手がける恋愛の総合商社。男女のすれ違いを考える恋バナポッドキャスト『二軍ラジオ』も更新中。コンセプトは“オトコ版 SEX AND THE CITY”。著書『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)が発売中。

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